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株式会社オブライト
Business DX2026-07-17

FAXと二重入力から抜け出す卸売業のデジタル化パターン — 受発注業務の見直しに学ぶ

FAX受注と手書き転記、基幹システムへの再入力という三重作業に悩む卸売業が、受発注のデジタル化を段階的に進めるまでの典型的な流れと費用感を解説します。


この課題パターンとは

「FAXと二重入力」課題パターンとは、取引先からの注文をFAXで受け、それを一度手書きの伝票やメモに書き起こし、さらに基幹システムやExcel台帳へ手入力するという、同じ注文情報を人の手で三度扱う業務構造を指す。特に食品卸・雑貨卸・資材卸など、取引先が多く紙文化が根強い業界で頻繁に見られる。

なお本記事は特定の企業の事例ではなく、中小企業に共通してよく見られる課題と解決の流れを一般化した解説である。登場する会社・数値はいずれも典型例であり、実在の特定企業を示すものではない。

こんな会社によくある話

従業員20名程度、年商10億円前後の食品卸を例に考えてみる。取引先は飲食店や小売店など150社ほどで、注文の受付方法は各社バラバラ。電話、FAX、メール、担当者への直接連絡が入り混じっている。中でもFAXでの注文が全体の6割を占め、朝の受付ピークには受注担当者2名がFAX用紙の山と格闘する光景が日常だった。受け取ったFAXは一旦手書きの受注伝票に転記し、その後基幹システムに手入力して出荷指示を出す。この「FAX→手書き→システム入力」という三段階の作業が、毎日の締め時間前になると残業の主因になっていた。

こうした会社では、出荷トラックの発車時刻という動かせない制約が背中合わせにあることが多い。締め時間までに出荷指示を確定させなければトラックが待つことになり、結果として受注担当者は手が空く時間がほとんどない。さらに繁忙期には新人アルバイトを臨時で受注業務に投入することもあるが、FAXの筆跡や商品略称の癖を読み解けず、ベテラン社員への確認が頻発するため、教育コストが高止まりしやすいという事情も重なる。

課題の構造

この種の課題は、単に「紙が多くて大変」という表面的な話にとどまらない。三重作業には次のような構造的な問題が積み重なっている。

- 転記段階で数量や商品コードの読み間違いが発生し、欠品や誤出荷につながる
- 繁忙期(月末・季節商戦)にFAX処理が集中し、担当者の残業と疲弊が慢性化する
- 受注担当者しか対応できない属人的な作業になり、休みが取りにくい
- 取引先ごとに注文書式がバラバラで、入力ルールの統一が難しい
- 紙の伝票は検索性が低く、過去の注文履歴を追うのに時間がかかる

検討した選択肢

選択肢概要初期費用の目安向いている状況
FAX-OCRシステム受信したFAXを自動で文字認識し、システムに取り込む数十万円〜取引先にデジタル移行を強制できない・FAX文化を維持したい場合
Web受発注SaaS取引先が専用サイトやアプリから直接発注する仕組み月額数万円〜、初期費用は低め発注量の多い取引先から段階的に切り替えたい場合
EDI(電子データ交換)取引先の基幹システムと自社システムを直接連携させる数百万円規模になることも大口取引先との取引が定型化・大量で、双方にシステム投資体力がある場合
カスタム開発自社の受注フローに合わせて専用システムを新規開発数百万円〜既存パッケージでは業務に合わず、独自の商流や在庫連携が必須な場合

実際の進め方(時系列)

- 1〜2か月目: 現状の受注ルート・件数を取引先ごとに棚卸しし、FAX比率と発注量の相関を可視化
- 3か月目: 発注量上位20社(全受注の約7割を占める取引先)に絞ってWeb受発注SaaSの説明会を実施
- 4〜5か月目: 上位取引先から順にID発行・操作説明を行い、FAXと並行運用する移行期間を設定
- 6〜8か月目: 移行状況を月次で確認しながら、対応が難しい取引先向けにFAX-OCRを補助的に導入
- 9か月目以降: 残るFAX注文の割合を見ながら、次の投資判断(EDI検討など)を継続的に見直す

費用感

この種の取り組みでは、一般に初期費用30万円〜300万円程度、月額利用料は数万円〜十数万円程度の幅で語られることが多い。ただし取引先数・発注量・既存基幹システムとの連携有無によって金額差が大きいため、あくまで目安として捉えるべきである。実際の投資判断にあたっては、システム開発の費用相場見積書の読み方を参考にしながら、必ず複数社から見積もりを取得して比較することが望ましい。また条件によってはIT補助金の活用で初期負担を抑えられる場合もある。

見積もりを比較する際は、月額利用料だけでなく、取引先1社を追加登録するごとの費用、基幹システムとのデータ連携(API連携やCSV連携)にかかる追加費用、サポート体制の範囲まで確認しておくと、後になって想定外の費用が発生する事態を避けやすい。特にEDIやカスタム開発は要件次第で金額が大きく変動するため、初期見積もりの前提条件を書面で明確にしておくことが望ましい。

つまずきやすいポイント

- 全取引先への一斉切り替えを目指して計画が頓挫するケースが多い。発注量や対応力に差がある取引先を同列に扱うと、抵抗の強い層への説明に時間を取られ、プロジェクト全体が停滞しやすい
- FAXとWeb発注を並行運用する期間の終了時期を決めずに始めると、いつまでもFAXが残り続ける
- 取引先側の担当者が高齢・IT不慣れな場合、操作説明だけでなく「電話でのフォロー体制」まで用意しないと定着しない
- 社内側も、入力担当者の業務が急に減ることへの不安から、非公式に旧来のやり方を続けてしまうことがある

よくある質問

取引先全員をWeb受発注に切り替える必要がありますか?

必須ではない。発注量の多い上位取引先から段階的に移行し、対応が難しい取引先にはFAXやOCRを補助的に残す運用が一般的である。

導入までどれくらいの期間がかかりますか?

取引先への説明や移行期間を含めると、着手から定着まで半年〜1年程度を見込むケースが多い。取引先数が多いほど期間は延びる傾向がある。

既存の基幹システムはそのまま使えますか?

多くの場合、Web受発注SaaSやFAX-OCRは既存の基幹システムへのデータ連携機能を持つため、大規模な入れ替えなしで併用できることが多い。ただし連携可否は個別に確認が必要である。

まとめ

FAXと二重入力の課題は、担当者の努力や工夫だけでは根本的に解消しにくい構造的な問題である。全社一斉の切り替えを狙うのではなく、発注量の多い取引先から段階的にデジタル化を進め、紙とデジタルが共存する移行期間を計画的に設計することが、定着への近道になりやすい。選択肢ごとの特性を比較しながら、自社の取引先構成に合った進め方を検討することが重要である。焦って一足飛びに完成形を目指すよりも、小さく始めて効果を確認しながら対象を広げていく方が、結果的に投資を無駄にしにくい。

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