DALIシステム完全入門ガイド — 初心者にもわかる照明制御プロトコルの仕組みと活用法【2026年版】
DALI(ダリ)は照明をデジタル制御するための国際規格です。1本のケーブルで最大64個の照明を個別にON/OFF・調光・色変更できる仕組みを、初心者向けにわかりやすく解説。DALI-2・DALI+の違い、導入費用、活用事例まで網羅した2026年版完全ガイドです。
DALIシステムとは?(初心者向け説明)
DALI(ダリ)は照明をデジタル制御するための国際規格。1本のケーブルで最大64個の照明を個別にON/OFF・調光・色変更できる仕組みです。 「DALI」とは Digital Addressable Lighting Interface の頭文字をとった名前で、IEC 62386という国際標準規格として定められています。管理団体はDIIA(Digital Illumination Interface Alliance)、日本語では「デジタルアドレサブル照明インターフェース」と呼ばれます。 わかりやすくたとえると、従来の照明スイッチが「部屋の電気を全部まとめてON/OFF」するだけだったのに対し、DALIは「照明ひとつひとつに住所(アドレス)をつけて、1台ずつリモコン操作できる」イメージです。さらに照明側から「今、故障しています」と報告が返ってくる双方向通信も大きな特徴です。
DALIが解決する身近な困りごと
「照明なんてON/OFFできれば十分では?」と思う方も多いかもしれません。しかし実際の職場や施設では、こんな困りごとが頻繁に起きています。 DALIはこれらをまるごと解決します。 - オフィスの照明を席ごとに明るさ調整したい(窓際は暗め、奥は明るめなど) - 会議室で「プレゼン用」「休憩用」「通常業務用」などシーンをワンタッチで切り替えたい - 故障した照明をすぐ特定して、どこか確認しに行かなくてもわかるようにしたい - 省エネのために時間帯・曜日で照明を自動制御したい - 複数フロアや建物全体の照明を一元管理したい DALIが普及しているのは、これらの「あるある困りごと」をひとつのシステムで解決できるからです。
従来の照明制御 vs DALI(図解)
従来の0-10Vアナログ方式では、スイッチひとつですべての照明が同じ動作をするだけでした。DALIでは「DALIマスター」と呼ばれる司令塔が各照明に個別の命令を送れるため、同じ回路につながっていても照明ごとに異なる制御が可能です。
DALIの名前の意味
「DALI」という名前は4つの英単語の頭文字です。それぞれの意味を理解すると、このシステムの特徴がよくわかります。 - Digital(デジタル): アナログ信号と違い、正確な数値データを送れます。「50%の明るさ」と指定すれば、全機器で完全に同じ50%になります - Addressable(アドレス付き): 照明ひとつひとつに「住所(アドレス)」を割り当て、個別に指定して命令を送れます。まるで「A棟3階の照明番号12番だけ消して」と宅配便のように指示できます - Lighting(照明): この規格は照明制御に特化して設計されています - Interface(インターフェース): 異なるメーカーの機器同士でも共通ルールで通信できる「接続の仕組み」を意味します 4つの特徴を組み合わせることで、メーカーを問わず、照明を精密にデジタル制御できる国際標準が生まれました。
基本スペック早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 規格 | IEC 62386(国際標準) |
| 配線 | 2線式(電源とデータ兼用、極性なし) |
| 最大デバイス数 | 64台 / マスター |
| グループ数 | 最大16グループ |
| シーン数 | 最大16シーン |
| 通信方式 | 双方向(故障検知・状態確認可能) |
| 調光分解能 | 高精度デジタル(全機器で同一値) |
| 配線距離 | 最大約300m |
DALIで何ができる?5つの便利機能
DALIが提供する主な機能は5つです。それぞれ「何が嬉しいか」の視点で解説します。 (1) 個別制御 — 照明ひとつひとつを独立して操作できます。64台あれば64通りの設定が可能です。 (2) グループ制御 — 「窓側の列だけ暗く」「通路だけ常時点灯」など、複数の照明をグループにまとめてまとめて制御できます。最大16グループを設定可能です。 (3) シーン切替 — 「会議モード(明るく均一)」「プレゼンモード(スクリーン前は暗め)」「退勤後モード(最小限点灯)」などをあらかじめ登録し、ワンタッチで切り替えられます。最大16シーンまで保存できます。 (4) 状態監視(双方向通信) — 照明側から「ランプが切れています」「エラーが発生しました」といった情報が返ってきます。従来は現地確認が必要だった故障対応を、管理画面から即座に把握できます。 (5) スケジュール制御 — 「平日9時〜18時は通常点灯、18時以降は半減、土日は消灯」のように時間帯・曜日で自動変化させられます。人感センサーとの組み合わせで、さらに細かい省エネ制御も可能です。
DALIの仕組み(初心者向け)
DALIシステムは大きく4つの部品で成り立っています。「司令塔 → ゲートウェイ → ドライバー → 照明器具」という流れで命令が伝わります。 - パソコン・タブレット(管理画面): 人間が操作する入り口。Webブラウザや専用アプリで設定します - ビル管理システム(BMS): ビル全体の空調・照明・セキュリティを統括する上位システム - DALIマスター(司令塔): DALIバス上の全デバイスを管理する中核機器。命令を送り、状態を受け取ります - DALIバス(2線式ケーブル): マスターと各照明をつなぐ「データ通路」。電源とデータを同時に送れる2本の線です - LEDドライバー(DALI対応): 照明器具を実際に点灯・調光させる装置。DALI命令を受けて電流を制御します - センサー(人感・照度): 人の存在や周囲の明るさを検知してDALIバスに信号を送ります ポイントは「DALIバスはデイジーチェーン(数珠つなぎ)または並列で最大64台まで接続できること」です。配線の自由度が高く、機器の追加・変更も比較的容易です。
DALIシステム構成図
DALI-1 → DALI-2 → DALI+の違い
DALIは1990年代後半に登場してから着実に進化してきました。現在は3世代が存在します。
| バージョン | 特徴 | 登場時期 |
|---|---|---|
| DALI-1 | 初代。基本的な調光・ON/OFF制御を確立 | 1990年代後半 |
| DALI-2 | 相互運用性を大幅強化。センサー統合、公式認証制度を導入 | 2016年〜 |
| DALI+ | 無線・IP対応を追加。Thread / Bluetooth Mesh / Zigbee に対応 | 2020年以降 |
DALI-2 では「DALI-2認証」という公式の相互運用性テストが導入され、異なるメーカーの機器を安心して混在させられるようになりました。現在の新規導入ではDALI-2対応製品を選ぶのが標準です。 DALI+ はDALIバスを無線やIPネットワーク上に拡張したもので、ビル全体を既存のLANインフラで制御したい場合や、配線工事が難しい改修案件で活躍します。
DALI+と無線対応の最新動向
DALI+では、IEC 62386の各パート規格として無線通信への対応が拡張されています。 - Part 104(無線トランスポート): UDP経由でIPネットワーク上にDALIを通す仕組み。既存のLAN配線を活用できます - Part 341(Bluetooth Mesh): BLEメッシュネットワークをDALIのトランスポートとして使用。スマートフォンからの直接操作にも対応します - Part 342(Zigbee): ZigbeeプロトコルでDALI命令を伝達。既存のZigbeeインフラに組み込めます - Thread対応(IPベース): IPv6ベースのThreadメッシュネットワーク対応で、Matter規格との親和性も高まっています 「有線DALIバスを無線で延長するゲートウェイ機器」が各社から登場しており、有線と無線のハイブリッド構成が2026年現在のトレンドです。既存ビルへの後付けでも、電源ケーブル1本から無線制御ノードを追加できるケースが増えています。
DALIの主な用途
| 用途 | 活用シーン |
|---|---|
| オフィス | 席ごとの明るさ調整、会議室のシーン設定、退勤後の自動消灯 |
| 商業施設 | 時間帯で雰囲気変更、セール時の演出照明、省エネ管理 |
| ホテル | 客室のシーン切替(就寝・起床・鑑賞)、エネルギー管理 |
| 工場 | 作業エリア別制御、危険エリアの警告照明、安全確保 |
| 病院 | 患者ごとの環境調整、手術室の無影灯制御、夜間照明 |
| 倉庫 | 人感センサー連動で必要時のみ点灯、大幅省エネ |
| 屋外照明 | 街路灯の個別管理、深夜の自動減光 |
他の照明制御方式との比較
| 方式 | 制御方式 | 個別制御 | 双方向通信 | 配線 | 適用規模 |
|---|---|---|---|---|---|
| スイッチ直結 | 手動 | ✗ | ✗ | 既存可 | 家庭 |
| 0-10V | アナログ | ✗ | ✗ | 追加必要 | 小規模 |
| DALI | デジタル | ◎ | ◎ | 2線追加 | 中〜大規模 |
| KNX | デジタル | ◎ | ◎ | 専用線 | 大規模ビル |
| Zigbee / Bluetooth | 無線 | ◎ | ◎ | 不要 | 柔軟 |
DALIはデジタル制御の精度・双方向通信・有線の安定性を兼ね備えた、中〜大規模施設に最適な選択肢です。KNXと比べると照明特化のぶんシンプルで導入しやすく、無線方式と比べると安定性と既存ビルへの親和性が高いのが特徴です。
DALI導入のメリット
- 省エネ: センサー・スケジュール制御の組み合わせで30〜50%の電力削減事例が報告されています - 運用コスト削減: 故障を自動検知し管理画面でアラート表示。ビル全棟を数人で管理できます - 快適性向上: シーン設定で会議・休憩・集中作業など場面に最適な照明環境を実現 - 柔軟性: 配線変更なしにグループやシーンの設定変更が可能。テナント入れ替えにも対応しやすい - 将来性: IEC国際規格で長期サポートが保証。DALI-2認証製品であればメーカーを問わず組み合わせ可能
DALI導入のデメリット・注意点
- 初期投資はアナログ方式(0-10V)より高くなります。小規模施設では費用対効果の検討が必要です - DALI対応のLEDドライバーと照明器具が必要です。非対応品との混在はできません - アドレス設定・グループ・シーンのプログラミングに専門的な知識とツールが必要です - 既存建物への後付けは、DALIバス用の配線工事が必要になります(無線対応のDALI+を使えば軽減可能)
導入費用の目安(小規模オフィス例)
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| DALIマスター | 10〜30万円 |
| LEDドライバー(DALI対応) | 1万円〜 / 台 |
| 配線工事 | 規模・既存状況による |
| 設定・プログラミング費 | 20〜100万円 |
| 小規模オフィス合計目安 | 100〜300万円 |
費用は施設規模・既存配線状況・管理機能の複雑さによって大きく変わります。まずは現状調査と要件整理を行い、概算見積を取ることをお勧めします。
DALI導入のステップ
- Step 1: 現状調査・要件定義 — 照明台数・配線状況・制御要件(どの部屋をどう制御したいか)を整理します - Step 2: DALIマスター・機器選定 — 規模に合ったマスター機器とDALI-2認証済みのLEDドライバーを選定します - Step 3: 配線設計・施工 — DALIバス配線図を設計し、電気工事士による施工を行います - Step 4: アドレス設定・グループ化 — 各照明にアドレスを割り当て、用途に合わせてグループを設定します - Step 5: シーンプログラミング — 「会議モード」「退勤後モード」などのシーンを設定・登録します - Step 6: 動作確認・引き渡し — 全照明の動作確認・故障検知テストを行い、管理者へ操作説明を実施します
IoT・BMS連携でさらに便利に
DALIシステムはビル管理システム(BMS)やBACnet(ビルオートメーション向け通信規格)と連携することで、照明だけでなく空調・セキュリティ・入退室管理とも統合した制御が可能になります。 たとえば「セキュリティカードで退室を検知したら、自動的に照明を消灯・空調を停止」といった連携が実現します。また、IoTセンサーと組み合わせれば「在席検知センサーが反応した席の照明だけ点灯」「外光が十分明るいときは室内照明を自動減光(昼光利用制御)」なども実装できます。
最新トレンド:AI連動とクラウド管理
2026年現在、DALIシステムはさらに進化しています。 - AI自動最適化: 人感センサー・照度センサー・在席センサーのデータをAIが学習し、「この会議室は火曜の午後2時は満員になりやすい」などのパターンを把握して自動調整します - スマートフォンアプリ管理: 専用アプリでどこからでも照明を確認・操作できます。出張先から「今日は全館消灯のままでいい」と指示することも可能です - クラウド経由の遠隔監視: 複数拠点の照明状態・電力使用量・故障履歴をクラウドダッシュボードで一元管理できます。エネルギーマネジメントシステム(BEMS)との連携も一般的になっています - Matter / Thread対応: スマートホーム標準規格Matterとの連携が進み、一般的なスマートスピーカーやホームアプリからDALI照明を操作できる環境も整いつつあります
よくある質問(FAQ)
Q1. DALIは家庭でも使えますか? 技術的には家庭でも使用可能です。ただし、DALIマスターやDALI対応ドライバーの費用、設定・プログラミングの手間を考えると、費用対効果はビル・オフィス・商業施設向きです。家庭向けにはZigbee・Bluetooth Mesh・Matterベースのスマート照明が現実的です。 Q2. 既存の照明を後からDALI対応にできますか? はい、可能です。照明器具はそのままに、内蔵の非対応ドライバーをDALI対応のLEDドライバーに交換することで対応できます。ただし、DALIバス用の配線工事は別途必要になります。DALI+の無線対応を活用すれば配線工事を最小化できます。 Q3. 停電が発生した場合はどうなりますか? 停電時はすべての照明が消灯します。電源が復帰した後は、停電前の最後の状態(調光値・ON/OFF)に自動的に戻ります。非常灯については別系統の制御が必要です。 Q4. 照明が故障したときはどうやってわかりますか? DALIは双方向通信のため、各照明(LEDドライバー)がマスターに「ランプ切れ」「エラー発生」などのステータスを自動送信します。管理画面にアラートが表示されるため、現地を確認しなくてもどの照明が故障しているかすぐわかります。 Q5. メーカーが異なる機器を混在させても大丈夫ですか? DALI-2認証を取得した製品同士であれば、メーカーが異なっていても相互運用が保証されています。導入時は「DALI-2認証取得済み」の表示を確認することが重要です。DALI-1のみ対応製品との混在は一部機能制限が生じる場合があります。 Q6. 1マスターに何台まで接続できますか? 1つのDALIマスターには最大64台のデバイスを接続できます。64台を超える規模の施設では、複数のDALIマスターを設置し、それぞれを上位のBMSで統合管理する構成にします。 Q7. DALIバスの配線は極性(プラス・マイナス)がありますか? DALIバスは極性なしの2線式です。プラスとマイナスを逆に配線しても正常に動作します。これは現場での配線工事のミスを減らす大きなメリットで、工事の手間やトラブルを軽減します。
Oflightの照明・IoT制御支援
Oflightでは、DALIをはじめとするスマート照明・IoT制御システムの設計・導入支援を行っています。 - DALI対応ネットワーク設計と機器選定サポート - ビル管理システム(BMS)・BACnet連携の設計・構築 - スマート照明システムの導入支援と操作研修 - 既存建物へのリトロフィット(後付け対応)の調査・提案 「何から始めればいいかわからない」という段階からご相談いただけます。まずはお気軽にお問い合わせください。 ネットワーク・インフラサービスの詳細はこちら
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