フリーランスに発注する会社の義務 — フリーランス保護法の基本
フリーランス保護法(特定受託事業者取引適正化法)は発注側に何を求めるのか。取引条件明示や支払期日など基本の枠組みを中立的に解説します。
フリーランス保護法とは
フリーランス保護法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスとして働く個人事業者との取引を適正化することを目的とした法律です。発注側の企業には、取引条件の明示や報酬の支払期日など、一定の対応が求められる枠組みが定められています。本記事では、発注する立場の企業が押さえておくべき基本的な考え方を中立的に整理します。ただし、義務の詳細や罰則、対象範囲の細かな判断は個別の取引状況によって変わり得るため、断定的な説明は避け、公正取引委員会等の公式資料や専門家への確認を前提とした内容としています。
法律ができた背景
フリーランスとして働く人が増える中で、発注者との力関係の差から、取引条件が曖昧なまま業務が進んだり、報酬の支払いが遅れたりするトラブルが従来から指摘されてきました。従来の下請法は資本金要件などにより適用範囲が限定されており、フリーランスとの取引全般をカバーするものではありませんでした。こうした背景から、フリーランスとの取引に特化した法律が整備され、発注側企業に一定の対応を求める枠組みが設けられています。
発注側に求められることの全体像
フリーランス保護法では、発注側の企業(委託事業者)に対して、大きく分けていくつかの分野での対応が求められる枠組みが定められています。以下は一般的な整理であり、自社の取引が具体的にどの義務の対象になるかは、取引内容や継続性等によって異なるため、必ず公正取引委員会・厚生労働省等の公式資料で確認してください。
- 取引条件の明示: 業務内容、報酬額、支払期日等をあらかじめ書面や電磁的方法で明示すること
- 報酬の期日内支払: 成果物を受領した日から一定期間内に報酬を支払うこと
- 禁止行為への配慮: 受領拒否・報酬減額・返品等、一方的に不利益を与える行為を避けること
- 募集情報の的確表示: 業務委託の募集を行う際、虚偽・誤解を招く表示をしないこと
- ハラスメント対応: フリーランスに対するハラスメント防止のための相談体制等を整えること
- 中途解除等の事前予告: 契約を中途解除する場合等に、一定の余裕を持って予告すること
取引条件の明示について。業務の発注時に、何を、いつまでに、いくらで委託するのかを明確にすることは、後のトラブルを防ぐ基本的な出発点です。口頭でのやり取りだけで進めるのではなく、書面やメール、業務委託契約書などの形で記録を残すことが望ましいとされています。具体的にどの項目を明示する必要があるかは制度上の詳細に関わるため、公式資料での確認をおすすめします。
期日での報酬支払について。成果物の納品や役務の提供を受けた後、一定期間内に報酬を支払うことが求められる枠組みがあるとされています。支払いサイトを社内で決めっぱなしにするのではなく、フリーランスとの取引においては特有の配慮が必要になる場合がある点を認識しておくことが重要です。具体的な期間の考え方は取引の性質によって異なるため、専門家への確認が推奨されます。
ハラスメント対応・募集情報の適正化について。フリーランスは企業に所属する従業員ではないため、ハラスメント対応において見落とされがちな立場にありますが、法律上は発注企業に一定の体制整備が求められているとされています。また、業務委託の募集を行う際に実態と異なる好条件を示すような表示も問題視される可能性があります。発注業務に関わる担当者間で、こうした論点についての共通認識を持つことが望ましいといえます。
対象になる取引の考え方
フリーランス保護法における「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方であって、従業員を使用しない個人や、一定の要件を満たす法人などを指す考え方が採られています。自社が発注している相手がこの定義に該当するかどうかは、契約形態や実態によって判断が分かれる可能性があり、名称だけで一律に判断できるものではありません。フリーランスとの取引が自社にどの程度あるかをまず洗い出し、該当性の判断に迷う場合は専門家に相談することが望ましいとされています。
下請法との関係
下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者と下請事業者の資本金区分等に応じて適用される、以前から存在する法律です。フリーランス保護法は、この下請法ではカバーしきれなかった、資本金要件を満たさない発注者とフリーランスとの取引を含めて適正化を図るものと位置づけられています。両者は目的が重なる部分がありつつも、適用対象の考え方や具体的な義務の内容は異なるとされているため、自社の取引がどちらの法律の対象になり得るか、あるいは両方に関わり得るかは、個別に確認が必要です。
| 観点 | 下請法(一般的な枠組み) | フリーランス保護法(一般的な枠組み) |
|---|---|---|
| 主な適用の考え方 | 親事業者・下請事業者の資本金区分等に基づく | 発注者と特定受託事業者(個人等)の取引に基づく |
| 対象となる取引主体 | 資本金要件を満たす事業者間の取引 | 従業員を使用しない個人等を相手方とする取引 |
| 主な要求事項の例 | 書面交付、支払期日、禁止行為の規制等 | 取引条件明示、期日支払、ハラスメント対応等 |
| 制定の位置づけ | 既存の法律 | 下請法の対象外だった取引を含めて適正化 |
※上記は制度の一般的な枠組みの整理であり、資本金要件や適用範囲の詳細な判断は個別の取引状況により異なります。必ず公正取引委員会・中小企業庁等の公式資料でご確認ください。
発注実務チェックリスト
- フリーランスへの発注時に、業務内容・報酬額・支払期日等を書面またはメール等で明示しているか
- 支払期日についての社内ルールが、フリーランスとの取引を踏まえて設定されているか
- 成果物の受領拒否や報酬減額を行う際の判断基準・承認フローが整理されているか
- 業務委託の募集広告等の表示内容が実態と乖離していないか
- フリーランスからのハラスメント相談を受け付ける窓口や体制があるか
- 契約の中途解除等を行う場合の予告ルールが社内で共有されているか
- 自社の発注先がフリーランス保護法・下請法のどちらの対象になり得るか、判断に迷う場合に相談できる専門家がいるか
よくある質問
フリーランス保護法の対象になるかどうかはどう判断すればよいですか?
取引相手が従業員を使用しない個人か等、契約の実態に即して判断する必要があるとされています。名称や契約書の呼称だけで判断せず、公正取引委員会等の公式資料を確認するか、弁護士等の専門家にご相談ください。
支払期日は具体的に何日以内と決まっていますか?
支払期日の考え方は制度の詳細に関わるため、本記事では具体的な日数を断定していません。公正取引委員会・厚生労働省等の公式資料で最新の内容をご確認ください。
違反した場合の罰則はどの程度ですか?
罰則や行政指導の内容についても個別の判断が必要な事項であり、本記事では扱っていません。公式資料の確認、または弁護士等の専門家への相談をおすすめします。
まとめ
フリーランス保護法は、フリーランスとの取引を行う企業に対し、取引条件の明示や期日での報酬支払、ハラスメント対応など、一定の対応を求める枠組みを設けています。下請法との関係も踏まえ、自社の発注実務がどのように位置づけられるかを整理しておくことが重要です。発注先の選び方については発注先選びの基本、開発案件における契約の考え方については開発契約の基本、ITリスク対策全体の枠組みについては中小企業のITリスク対策ガイドもあわせてご参照ください。義務の詳細や罰則、自社の取引への当てはめについては、必ず公正取引委員会等の公式資料や弁護士等の専門家にご確認ください。
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