クラウドPBXの費用と手順|ビジネスフォンからの切り替えガイド
会社の電話をクラウドPBXに切り替える費用相場と手順を解説。従来のビジネスフォン(主装置+固定電話機)との違い、初期費用・月額の内訳、5年総額の比較、電話番号の引き継ぎ方法、移行時の落とし穴、導入前チェックリストまで、経営者・非IT担当者向けに実務目線でわかりやすくまとめました。判断基準も紹介します。
クラウドPBXとは何か
クラウドPBX(クラウド構内交換機)とは、会社の電話交換機能をインターネット上のサービスとして提供する仕組みです。従来のビジネスフォンが、事務所内に設置した「主装置」という機械と、そこに配線でつながる固定電話機で構成されるのに対し、クラウドPBXは主装置を持たず、スマートフォンやパソコン、専用のIP電話機がインターネット経由で交換機能につながります。結果として、内線・外線・転送・保留といった従来の機能を、事務所以外の場所からでも使えるようになります。
従来のビジネスフォンの何が問題になるのか
主装置は精密機械であり、寿命は一般的に10年前後とされています。老朽化した主装置は交換部品の入手が難しくなり、故障すると電話が全く使えなくなるリスクがあります。また、拠点を増やしたり、席の配置を変えたりするたびに配線工事が必要で、そのつど数万円〜数十万円の工事費用が発生します。さらに、主装置は事務所内のハードウェアに依存するため、在宅勤務やテレワークの担当者が会社の代表番号で発着信することが基本的にできません。取次のために誰かが必ず事務所にいる必要がある、という運用上の制約も生まれます。
費用の全体像
クラウドPBXの費用は、主装置を購入・リースする必要がない分、初期費用が小さく抑えられる傾向があります。ただし、電話機を新調する場合や、既存のIP電話機を流用できない場合は、その分の費用が加算されます。下表はおおまかな目安です(回線数・機能・ベンダーにより変動します)。
| 項目 | 内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 初期費用(アカウント設定) | 番号発行・システム初期設定 | 0円〜5万円程度 |
| 電話機・端末費用 | 専用IP電話機を新調する場合(1台あたり) | 1万円〜3万円程度 |
| 月額基本料 | 内線・システム利用料(ID数に応じて課金) | 1ID あたり500円〜1,500円程度 |
| 通話料 | 発信先により従量課金 | 固定電話宛て3円/分前後、携帯電話宛て16円/分前後が目安 |
| オプション機能 | 通話録音・IVR(自動音声応答)・CRM連携など | 1機能あたり月額数千円〜 |
従来型ビジネスフォンとクラウドPBXでは、初期費用と月額費用のバランスが大きく異なります。5年間のトータルコストで比較すると、下表のような傾向になります(社員20名・4回線程度の中小企業を想定した概算です)。
| 方式 | 初期費用の目安 | 月額費用の目安 | 5年総額の目安 |
|---|---|---|---|
| ビジネスフォン(主装置購入) | 50万円〜150万円 | 通話料+保守費 1万円〜3万円 | 110万円〜330万円 |
| ビジネスフォン(主装置リース) | 数万円(設置工事のみ) | リース料+通話料 3万円〜6万円 | 180万円〜360万円 |
| クラウドPBX | 0円〜10万円 | ID利用料+通話料 2万円〜5万円 | 120万円〜300万円 |
リース契約は途中解約すると残債の一括請求が発生するため、既存のビジネスフォンがリース中の場合は、契約満了時期に合わせて切り替えを検討するのが現実的です。月額費用は導入するツール全体で見直す価値があり、SaaS・サブスクの契約棚卸しと合わせて点検すると、重複契約や使っていないオプションが見つかることもあります。
電話番号はどうなるか
会社の代表番号が「03」「06」などで始まる固定電話番号(0AB-J番号と呼ばれます)の場合、クラウドPBXでもこの番号をそのまま引き継げるサービスが多くあります。ただし、0AB-J番号を維持するには、加入電話やひかり電話の契約を残したまま、その回線をクラウドPBXに接続する形になるケースが一般的で、完全にインターネット回線のみに一本化できるとは限りません。番号ポータビリティ(番号そのままでの事業者変更)の手続きには、申込みから開通まで2週間〜1か月程度かかることが多く、繁忙期や年度末は延びる場合もあるため、余裕を持った申請が必要です。一方、「050」から始まる番号は最初からインターネット電話用の番号で、開通が数日程度と早く、初期費用も抑えやすい反面、企業の代表番号としての信頼感では0AB-J番号に劣るとされ、取引先によっては050番号への抵抗感が残ることもあります。
移行の落とし穴
- 通話品質はネット回線に依存する: 光回線の帯域が不足していたり、社内Wi-Fiが不安定だったりすると、通話が途切れる・音が遅れるといった問題が起きやすくなります
- 停電・回線断時に電話が使えなくなる: 主装置の固定電話は停電時でも発信できる場合がありますが、クラウドPBXはインターネットと電源が両方生きていないと機能しません。台風・地震などの災害時の代替手段(スマホの携帯回線経由での着信転送など)を事前に決めておく必要があります
- リースの残債: 既存の主装置がリース契約中の場合、途中解約で残債の一括請求が発生することがあります。契約書のリース満了日を必ず確認してください
- FAXが使えなくなる場合がある: クラウドPBXの多くはFAX送受信に対応していないか、別途アダプタが必要です。取引先とのFAXでのやり取りが残っている場合は事前に代替策を検討し、受発注のFAX対応をシステム化することも選択肢になります
- 警備システム・エレベーターの回線: セキュリティ会社の通報回線やエレベーターの非常用電話は、既存のアナログ回線をそのまま使うことが多く、安易に固定電話を全廃すると別の契約が必要になる場合があります
- 既存電話機の廃棄・処分費用: リース満了済みの主装置や電話機は自社所有物のため、廃棄には産業廃棄物処理費用がかかることがあります
- 社内への周知不足: 内線番号の変更、転送設定の操作方法、スマホアプリでの発着信手順など、従業員が戸惑わないよう事前の説明会や手順書の準備が欠かせません
導入前チェックリスト
- 現在契約している電話回線数(固定電話・ひかり電話・携帯回線)を洗い出したか
- 同時に何本の通話が発生するか(同時通話数)を把握しているか
- 拠点数と、拠点ごとに必要な内線数を整理したか
- 主装置・電話機のリース契約の満了日を確認したか
- 電話回線・インターネット回線の契約名義は誰(会社/個人)になっているか。ドメイン・サーバーと同様、契約名義の管理漏れがないか確認したか
- 会社の代表番号を0AB-J番号のまま維持したいか、050番号への移行も許容できるか
- FAX・警備・エレベーターなど、電話回線を使う周辺設備の有無を確認したか
- 社内Wi-Fi・光回線の帯域に、通話品質を支える余裕があるか
- 在宅勤務者に代表番号での発着信をどこまで許可するか方針を決めたか
- 導入するID数・電話機・オプション機能を、PC・アカウントと合わせてIT資産として一覧管理できる体制にするか
切り替えないほうがよいケース
すべての会社にクラウドPBXが最適とは限りません。主装置を導入したばかりでリースの残債が大きい場合は、満了を待ってからの切り替えが費用面で有利です。また、事務所のインターネット回線が不安定な地域にあり、光回線の増強や複数回線化にコストがかかりすぎる場合は、通話品質のリスクが導入メリットを上回ることがあります。FAXや警備回線など、アナログ回線への依存度が高い業種(一部の製造業・医療機関など)では、周辺設備の対応状況を先に確認しないと、思わぬ追加費用が発生します。従業員数が少なく、そもそも内線・転送機能をほとんど使っていない場合は、費用対効果が小さいケースもあるため、現状の通話量を把握したうえで判断することが重要です。
クラウドPBXへの切り替えにかかる期間はどれくらいですか
番号ポータビリティを伴う場合、申込みから開通まで2週間〜1か月程度が目安です。050番号のみで開始する場合は数日〜1週間程度で利用開始できることもあります。繁忙期は延びる可能性があるため余裕を持った計画が必要です。
既存の固定電話番号(03など)は変わってしまいますか
多くのクラウドPBXサービスは0AB-J番号(03・06などで始まる番号)の引き継ぎに対応しています。ただし加入電話やひかり電話の契約を維持したまま接続する形が一般的で、完全にネット回線のみへ一本化できるとは限らない点に注意が必要です。
停電やインターネット障害のときは電話が使えなくなりますか
クラウドPBXはインターネットと電源が両方稼働していないと機能しません。災害・停電時の代替手段として、スマホの携帯回線側への着信転送設定などを事前に用意しておくことをおすすめします。
社員が少ない会社でも導入するメリットはありますか
社員数名でも、在宅勤務や外出先での対応が多い会社では、会社の代表番号をスマホで発着信できる利便性は大きなメリットになります。一方で内線・転送をほとんど使わない場合は費用対効果が小さいこともあるため、現状の通話量を踏まえて判断するとよいでしょう。
FAXは引き続き使えますか
クラウドPBXの多くはFAXの送受信に標準対応していないか、別途アダプタや専用回線の維持が必要です。取引先とのFAXでのやり取りが残っている場合は、事前に対応方法を確認し、必要であれば既存のアナログ回線を一部残す設計を検討してください。
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