DeepSeek V4 Pro 0813がGA到達 — ベンチマーク改善とAPI値上げ、Harness公開
DeepSeek V4 Proの正式版「V4-Pro-0813」が2026年8月12日にGA到達し、主要ベンチマークが大幅改善した。だが8月16日からAPI料金が値上げされ、出力単価は約2.3倍に。MIT公開のエージェント基盤DeepSeek Harness v0.1も含めて実務判断のポイントを解説する。
DeepSeek V4 Pro 0813とは — 結論を先に
DeepSeek V4 Proの正式版(GA)ビルド「V4-Pro-0813」が、2026年8月12日に公開された。2026年4月24日公開のプレビュー版から、Terminal Bench 2.1やDeepSWEなどのベンチマークで大幅な改善が報告されている一方、2026年8月16日からAPI料金が改定され、特に出力トークンの単価が約2.3倍に引き上げられる。さらに同時期に、エージェント実行基盤「DeepSeek Harness v0.1」がMITライセンスで公開された。本稿では、スペック・ベンチマークの変化・料金改定の中身・エージェント基盤・自己ホストの現実性を順に整理する。なお、本稿で扱うベンチマーク数値はベンダー公表値またはアナリスト集計値であり、独立した第三者による再現検証は本稿執筆時点では確認できていない点をあらかじめ断っておく。
主要スペック
| 項目 | 値 |
|---|---|
| GAビルド公開日 | 2026年8月12日(V4-Pro-0813) |
| プレビュー公開日 | 2026年4月24日 |
| アーキテクチャ | MoE(混合専門家) |
| 総パラメータ数 | 1.6T |
| 1トークンあたりの活性化パラメータ | 約49B |
| 事前学習トークン数 | 32T超 |
| コンテキスト長 | 1,048,576トークン(約1M) |
| 最大出力 | 384,000トークン |
| 対応機能 | tool calling、structured outputs |
| 入出力モダリティ | テキスト(マルチモーダル対応は本稿執筆時点で未確認) |
| 0813ビルドの重み公開 | 未公開(Hugging Face上はプレビュー版のみ) |
プレビュー版から何が変わったか — ベンチマーク比較
V4-Pro-0813はプレビュー版と比べて、複数のエージェント系・コーディング系ベンチマークで大幅なスコア改善が報告されている。
| ベンチマーク | プレビュー版 | V4-Pro-0813 |
|---|---|---|
| Terminal Bench 2.1 | 72.1 | 87.9 |
| DeepSWE | 12.8 | 62.7 |
| CyberGym | 52.7 | 83.3 |
| Artificial Analysis Intelligence Index | 45 | 53 |
Artificial Analysis Intelligence Indexでは、首位のClaude Opus 5が63であるのに対し、V4-Pro-0813は53にとどまっており、プレビュー版からの改善幅は大きいものの、依然として首位モデルとの差は残る。また繰り返しになるが、上記の数値はベンダー公表値またはアナリスト集計値であり、独立した第三者による再現検証は本稿執筆時点で確認できていない。実運用への採否判断は、自社のユースケースに即した個別の検証を経てから行うことが望ましい。
API料金改定 — 8月16日から何がどう上がるか
2026年8月16日に発効する料金改定では、入力・出力・キャッシュヒット入力のいずれも値上げされる。数値は100万トークンあたり、オフピーク時間帯のものである。
| 項目 | 改定前 | 改定後(8/16〜) | 倍率(概算) |
|---|---|---|---|
| 入力 | $0.435 | $0.66 | 約1.5倍 |
| 出力 | $0.87 | $1.98 | 約2.3倍 |
| キャッシュヒット入力 | $0.003625 | $0.022 | 約6.1倍 |
さらに、ピーク時間帯(UTC 1:00〜4:00および6:00〜10:00、日本時間ではおおむね10:00〜13:00および15:00〜19:00に相当)は、上表のオフピーク料金の2倍が適用される。加えて、キャッシュヒット時の割引率も縮小される。従来はキャッシュヒット入力が通常入力のおよそ1/100の単価に抑えられていたが、改定後はおよそ1/30まで割引幅が縮小する。プロンプトキャッシュを前提にコスト設計をしてきたエージェント用途や長文コンテキストの反復利用では、この割引率の縮小が実質的なコスト増に直結しやすい点に注意が必要である。
値上げが効いてくる使い方・効いてこない使い方
- 効いてくる: 同一の長いコンテキスト(システムプロンプトや大量のツール定義など)を繰り返し使い回すエージェント用途。キャッシュ割引率が1/100から1/30に縮小するため、これまでキャッシュヒットで抑えていたコストの伸びが大きい
- 効いてくる: 出力トークン量が多い用途(長文生成、詳細なコード生成、思考過程を長く出力する用途など)。出力単価が約2.3倍になるため、出力量に比例してコスト増が効いてくる
- 効いてくる: ピーク時間帯(UTC 1:00〜4:00、6:00〜10:00)にリクエストが集中する運用。同じ処理でもオフピーク比で2倍のコストがかかる
- 効いてきにくい: 単発・短文の問い合わせや、キャッシュをほとんど使わない軽量な用途。入力単価の上げ幅(約1.5倍)は出力やキャッシュ割引の縮小に比べると相対的に小さい
- 効いてきにくい: リクエストをピーク時間帯を避けて分散できる、または実行時刻をコントロールしやすいバッチ処理
DeepSeek Harness v0.1とは
DeepSeekは、エージェント実行基盤「DeepSeek Harness」のDeveloper Preview版(v0.1)をMITライセンスで公開した。Harnessは、DeepSeekが独自に開発した「Cordis」というプラグインシステムの上に構築されており、ツール・サンドボックス・セッション管理・UIといった構成要素が、それぞれ差し替え可能なプラグインとして提供される点が特徴である。特定のツール実装やサンドボックス環境に固定されない設計のため、自社の実行環境やセキュリティ要件に合わせてコンポーネント単位で置き換えることを想定していると考えられる。例えば、既存のツール呼び出し実装をそのまま流用したい、あるいは自社のサンドボックス環境や認証基盤に統合したいといった要望に対して、Harness全体を作り直すのではなくプラグイン単位で差し替える設計思想は、エージェント基盤をゼロから内製するコストを下げる方向に働く可能性がある。Developer Previewという位置づけである以上、API仕様やプラグインインターフェースが今後変更される可能性がある点は留意しておきたい。
自己ホストは現実的か
V4シリーズ(Pro・Flash)の重みは、MITライセンスのオープンウェイトとしてHugging Face上で公開されている。ただし、今回GAに到達したV4-Pro-0813ビルド自体の重みは、本稿執筆時点ではまだ公開されておらず、Hugging Face上で入手できるのは2026年4月公開のプレビュー版のみである。したがって、今すぐ0813ビルドをそのまま自己ホストすることはできない。
重みが公開された場合のハードウェア規模感についても触れておく。以下はコミュニティ報告ベースの目安であり、DeepSeekによる公式な確定値ではない。
- V4-Flash: コミュニティ報告では合計VRAM 170〜175GB程度が目安とされる
- V4-Pro: コミュニティ報告では合計862GB程度が目安とされる
- 上記はいずれも量子化手法や構成によって変動するコミュニティベースの目安であり、確定値ではない
V4-Proが必要とする862GB程度というVRAM規模感は、個人〜小規模組織が単独で自己ホストできる範囲を明確に超えている。フル精度での自己ホストは、専用インフラを持つ組織を除けば現実的な選択肢とは言いにくく、多くの利用者にとってはAPI経由での利用が現実的な選択になる。相対的に軽量なV4-Flash(合計VRAM 170〜175GB程度)であれば複数枚のGPUを組み合わせた構成で検討の余地が出てくるが、これも一般的な個人利用の範囲を超える規模であり、あくまで小規模組織向けの選択肢として捉えるのが妥当だろう。
実務でどう判断するか
ベンチマークの改善幅と料金改定は、いずれも単独では「良い」「悪い」と即断できる材料ではない。既存のワークフローがどれだけキャッシュに依存しているか、出力トークン量がどの程度かによって、実際のコストへの跳ね返り方は大きく異なる。以下の観点で、自社の利用実態に照らして確認することを勧める。
- 現行のプロンプトキャッシュ依存度を確認する: キャッシュヒット率の高いエージェント運用ほど、割引率縮小(1/100→1/30)の影響を強く受ける。改定前に自社の月間トークン消費内訳(入力・出力・キャッシュヒット別)を確認しておく
- 出力トークン量が多いワークフローのコスト再試算を行う: 出力単価は約2.3倍になるため、長文生成やコード生成中心の用途ではコストインパクトが相対的に大きい
- ピーク時間帯への集中を避けられるか検討する: バッチ処理やリトライ処理など、実行タイミングを制御できる処理はオフピークへの移行でコストを抑えられる余地がある
- ベンチマーク数値を鵜呑みにしない: 本稿で挙げた数値は第三者による再現検証が確認できていないベンダー公表・アナリスト集計の値である。導入判断は自社ユースケースでの実測を経て行う
- 自己ホストは現時点では選択肢に入らないと割り切る: 0813ビルドの重みは未公開であり、公開後もV4-Proは862GB程度のVRAM目安が示されている。当面はAPI利用を前提に検討する
- 他モデルとの単純な優劣比較は避ける: 用途・レイテンシ要件・既存の運用体制によって最適な選択は変わるため、料金改定と性能改善の両方を自社の使用パターンに当てはめて判断する
FAQ
DeepSeek V4 Pro 0813はいつ公開されましたか?
GA(正式版)ビルド「V4-Pro-0813」は2026年8月12日に公開された。プレビュー版は2026年4月24日に公開されていた。
API料金はいつから、どのくらい上がりますか?
2026年8月16日から改定される。オフピーク時の100万トークンあたりの料金は、入力が$0.435から$0.66(約1.5倍)、出力が$0.87から$1.98(約2.3倍)、キャッシュヒット入力が$0.003625から$0.022(約6.1倍)になる。ピーク時間帯(UTC 1:00-4:00、6:00-10:00)はオフピークの2倍が適用される。
ベンチマークの改善数値は信頼できますか?
Terminal Bench 2.1やDeepSWEなどで大幅な改善が報告されているが、これらはベンダー公表値またはアナリスト集計値であり、独立した第三者による再現検証は本稿執筆時点では確認できていない。導入判断は自社ユースケースでの検証を経て行うことが望ましい。
V4-Pro-0813は自己ホストできますか?
0813ビルド自体の重みは本稿執筆時点で未公開であり、Hugging Face上にあるのは2026年4月公開のプレビュー版のみである。将来重みが公開された場合でも、V4-Proはコミュニティ報告ベースで862GB程度のVRAMが必要とされ、個人〜小規模組織での自己ホストは現実的ではない。
DeepSeek Harness v0.1とは何ですか?
DeepSeekが公開したエージェント実行基盤のDeveloper Preview版で、MITライセンスで提供される。Cordisというプラグインシステム上に構築されており、ツール・サンドボックス・セッション管理・UIを差し替え可能なプラグインとして提供する点が特徴である。
お気軽にご相談ください
お問い合わせ