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株式会社オブライト
Business DX2026-08-19約8分で読めます

電子帳簿保存法、中小企業がまず押さえる実務対応

電子帳簿保存法で中小企業が実際に対応すべき義務は、電子取引データを電子のまま保存することのみである。取引の具体例から、真実性・可視性の保存要件、費用目安つきの対応方法3類型、よくある失敗例、導入前に確認したいチェックリストまで、非IT担当者にも理解できるよう実務目線で丁寧に整理して解説する記事である。


電子帳簿保存法(電帳法)は、国税関係帳簿書類の保存方法を定めた法律である。2022年の改正以降、特に注目されているのが「電子取引データの電子保存義務化」であり、経理担当者だけでなく経営者にとっても対応の要否を正しく理解しておくことが欠かせない。本稿では、何が義務で何が任意なのかを整理したうえで、実務上の対応方法と費用目安、よくある失敗、導入前チェックリストまでを解説する。なお、制度の細部は年度によって変更される可能性があるため、最終的な判断は必ず国税庁の最新の一問一答・取扱要領を確認してほしい。

義務なのは「電子取引データの電子保存」のみ

電帳法が定める保存方法は大きく3つに分類される。第一に「電子取引データ保存」、第二に「スキャナ保存」、第三に「電子帳簿等保存」である。この中で、中小企業が必ず対応しなければならないのは電子取引データ保存のみとされている。スキャナ保存(紙の請求書や領収書をスキャンして電子化する制度)と、電子帳簿等保存(会計ソフトで作成した帳簿を電子データのまま保存する制度)は、いずれも任意の制度であり、紙のまま保存する運用を続けても差し支えない。つまり「電子取引で受け取ったデータは電子のまま保存する」という点だけが義務であり、それ以外を無理に電子化する必要はない、という整理がまず重要である。

「電子取引」に該当する具体例

電子取引とは、取引情報を電子データでやり取りする取引全般を指す。具体的には、メールに添付されたPDF請求書、Webサイトからダウンロードする形式の領収書やレシート、EDI(電子データ交換)システムを通じた発注・受注データ、クラウド請求書発行サービスやクラウド経費精算サービス上で発行・受領するデータなどが該当するとされている。逆に、紙で受け取った請求書をそのままファイリングする場合や、FAXで紙として出力されたものについては電子取引には該当しない。境界が分かりにくいケースもあるため、迷った場合は取引の相手方とのやり取りが最初から最後まで電子データで完結しているかどうかを基準に考えるとよい。

保存要件①真実性の確保

電子取引データを保存する際には、大きく2つの要件を満たす必要があるとされている。ひとつは「真実性の確保」であり、データが後から改ざんされていないことを担保する仕組みを指す。具体的な対応方法としては、タイムスタンプを付与する、訂正・削除の履歴が残るシステムを利用する、あるいはシステムを使わない場合は「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を自社で定めて運用する、といった方法が認められているとされている。中小企業においては、費用をかけずに事務処理規程の整備だけで対応するケースも多い。国税庁のサイトには規程のひな形が公開されているため、これを自社向けに調整して運用するのが現実的な出発点となる。

保存要件②可視性の確保(検索要件など)

もうひとつの要件が「可視性の確保」である。保存したデータを税務調査等の際に速やかに確認できる状態にしておくことを指し、主な内容は次の3点とされている。第一に、保存場所にパソコン・ディスプレイ・プリンタ等を備え付け、画面や書面に整然とした形式で出力できること。第二に、システムの概要書(自社開発の場合)を備え付けること。第三に、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できる状態にしておくことである。ただし、税務職員からのダウンロードの求めに応じられる場合や、判定期間の売上高が一定基準以下の事業者については、検索要件が緩和・不要となる措置もあるとされている。自社が該当するかどうかは要件が変わりやすいため、最新の要領で必ず確認してほしい。

対応方法の3類型と費用目安

中小企業の対応方法は、おおむね3つのパターンに分けられる。

- ①ファイル命名ルール+事務処理規程で運用する方法:PDFのファイル名を「日付_取引先_金額」のような形式に統一し、フォルダで整理して保存する。システム費用はほぼ0円で済むが、命名や整理を人手で行うため、取引件数が多い企業では担当者の作業負担が増えやすい。
- ②既存の会計・請求システムの電帳法対応オプションを利用する方法:すでに導入している会計ソフトやクラウド請求書サービスに電帳法対応機能(検索・タイムスタンプ等)が備わっている場合、それを有効化するだけで対応できることがある。費用目安は月額数千円〜2万円程度とされることが多い。
- ③文書管理・電子帳簿保存対応の専用サービスを新たに導入する方法:取引件数が多い、複数の担当者が関わる、将来的にスキャナ保存や電子帳簿保存にも対応したいといった場合に検討される。費用目安は初期費用10万円〜30万円程度、月額費用1万円〜5万円程度とされることが多い。

どの類型を選ぶべきかは、取引件数、担当者の人数、既存システムとの相性によって変わる。まずは①で運用しながら取引量の変化を見て、負担が大きくなった段階で②③への切り替えを検討する、という段階的なアプローチも現実的である。

猶予措置・宥恕措置と罰則について

電帳法をめぐっては、これまでも宥恕措置や猶予措置が設けられ、対応が難しい事業者への配慮がなされてきた経緯がある。また、要件を満たさない保存が続いた場合の罰則や、青色申告の取消しリスクなどが議論されることもある。ただし、これらの取扱いは年度の税制改正によって内容が変わる可能性が高く、本稿の時点での情報をそのまま前提にするのは避けるべきである。自社の状況に猶予措置が適用されるかどうか、また要件を満たさない場合の実際の取扱いがどうなるかについては、必ず国税庁の最新の一問一答・取扱要領、または顧問税理士に確認してほしい。

よくある失敗

- 紙に印刷して保存すれば要件を満たすと誤解している:電子取引データは印刷して紙で保存するだけでは要件を満たさないとされている。データそのものを電子的に保存する必要がある。
- 検索要件を満たさないフォルダ運用になっている:ファイル名や保存場所がバラバラで、「取引年月日・取引金額・取引先」で検索できる状態になっていない。
- 対応が特定の担当者しか分からない属人化:事務処理規程や運用ルールが文書化されておらず、担当者の異動・退職で運用が止まってしまう。
- バックアップが整備されていない:保存先のPCやクラウドサービスが破損・解約された場合に、データごと失われるリスクを想定していない。

導入前チェックリスト

確認項目確認内容
電子取引の洗い出しメール添付・Web発行・EDI・クラウドサービス経由の取引をすべて把握しているか
保存方法の選定①運用ルールのみ/②既存システム活用/③専用サービス導入のどれで対応するか決めたか
真実性の確保タイムスタンプ、訂正削除履歴、事務処理規程のいずれかを準備したか
検索要件取引年月日・取引金額・取引先で検索できる状態を用意したか
備品の準備保存場所にディスプレイ・プリンタ等を備え付けているか
運用ルールの文書化特定の担当者だけでなく誰でも運用を引き継げる状態か
バックアップ体制保存先データの消失に備えたバックアップを取っているか
最新情報の確認国税庁の最新の一問一答・取扱要領を確認したか

まとめ

電帳法対応の出発点は、まず自社の電子取引を洗い出し、義務の範囲(電子取引データの電子保存)を正しく把握することにある。そのうえで、真実性・可視性の要件を満たす方法を、規模や取引件数に応じて①〜③から選べばよい。制度の細部は変わりやすいため、対応を検討する際は必ず国税庁の最新情報を確認し、不明点は顧問税理士に相談することをお勧めする。関連して、インボイス制度、対応した『つもり』の落とし穴では制度対応の思わぬ抜け漏れについて、経理業務のAI活用では日々の経理業務の効率化について、クラウドバックアップ・DRではデータの消失リスクへの備えについてそれぞれ解説しているので、あわせて参考にしてほしい。

電子帳簿保存法にはいつから対応する必要がありますか?

電子取引データの電子保存義務については、制度上の宥恕措置等の期限が年度によって定められてきた経緯がある。自社が対象となる期限や条件は変わる可能性があるため、必ず国税庁の最新情報を確認してほしい。

紙の請求書をスキャンして保存すれば電帳法対応になりますか?

紙で受け取った請求書をスキャンして保存する「スキャナ保存」は任意の制度であり、対応しなくても紙のまま保存する運用で問題ないとされている。ただし、メール添付やWeb発行など、最初から電子データで受け取った取引については、電子のまま保存する義務がある点に注意が必要である。

小規模な会社でも対応が必要ですか?

取引件数が一定基準以下の事業者については検索要件が緩和される措置があるとされているが、電子取引データを電子のまま保存すること自体の義務は事業規模にかかわらず適用されるとされている。詳細は最新の要領で確認してほしい。

会計ソフトを使っていれば自動的に要件を満たしますか?

会計ソフトやクラウドサービスを使っていても、電帳法対応の機能が有効化されていなければ要件を満たさない場合がある。導入しているサービスが検索要件やタイムスタンプ等にどこまで対応しているか、提供事業者に確認することをお勧めする。

対応にどのくらいの費用がかかりますか?

費用は対応方法によって幅があり、ファイル命名ルールと事務処理規程だけで運用する場合はシステム費用がほぼかからない一方、専用サービスを導入する場合は初期費用10万円〜30万円程度、月額1万円〜5万円程度が目安とされることが多い。詳細は導入前に複数のサービスを比較検討することをお勧めする。

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