JetBrains ThinkRail とは
pi を包むオープンソースのエージェント型IDE。worktree・SPEC.md・Cursor/Zed/Junie との違い【2026年版】
ThinkRail は JetBrains が公開した、コーディングエージェント pi を GUI で包むオープンソース(Apache-2.0)のエージェント型IDE。worktree分離・SPEC.md・MCP対応、早期段階。Cursor・Zed・Junieとの違いも整理。2026年10月更新。
ThinkRail は、JetBrains が GitHub で公開しているオープンソース(Apache-2.0)のエージェント型IDEである。コーディングエージェント pi にデスクトップ/ブラウザのGUIを被せ、作業を git worktree ごとの独立ワークスペースに分け、プロジェクトの意図を SPEC.md として残していく。結論として、pi をすでに使っていて「複数タスクを並列に回す画面」と「レビューしやすい差分表示」が欲しい人向けで、2026年10月時点ではまだ初期段階(インキュベータープロジェクト、0.x 系)と見ておくのが妥当である。
リポジトリは2026年7月に作成され、2026年10月26日時点でスター約1.8k、GitHub の日次トレンドに入っている。ナイトリーが数日おきに出ており開発は活発だが、README 上は未成熟な機能も多いことが読み取れるため、本番運用の主力に据えるより、手元の検証用として試す段階である。
ThinkRailとは
README の説明では、ThinkRail は pi の周りに「リッチなインターフェース」を作り、作業をワークスペースに分け、生きた仕様書(living specs)と再利用できるスキルでエージェントに持続的なプロジェクト知識を与えるものである。今後は拡張機能のフルサポートを追加し、使い方に応じて ThinkRail 自身が必要なツールを作れるようにする方針が書かれている。JetBrains の既存IDE(IntelliJ IDEA など)のプラグインではなく、独立したアプリである点に注意したい。
| 項目 | 内容(README・GitHub 確認分) |
|---|---|
| 提供元 | JetBrains(JetBrains incubator project のバッジ付き) |
| ライセンス | Apache-2.0 |
| 実装言語 | TypeScript(Bunベースのホスト、React 19 のUI) |
| 対応エージェント | pi(@earendil-works/pi-coding-agent)のみ |
| 提供形態 | デスクトップアプリ/thinkrail CLI(ブラウザで同じアプリを開く) |
| 対応OS | macOS Apple Silicon(Intel版デスクトップなし)、Windows x64、Linux x64/ARM64 |
| モデル・認証 | JetBrains AI でサインイン、または pi の認証で任意のプロバイダを接続。ThinkRail 独自のアカウントはない |
| 料金 | ソフトウェア自体は無料のOSS。モデル利用料は接続先次第(JetBrains AI の料金プランは本稿では未確認) |
| 公式サイト | thinkrail.ai、GitHub |
なお pi は Earendil が公開しているコーディングエージェントのハーネスで、モデル・スキル・コンパクション・コスト・セッション状態は pi 側が持つ。pi 自体の考え方は Pi コーディングエージェント の記事で整理している。
何ができるか
| 機能 | README の記述 |
|---|---|
| 分離ワークスペース | リポジトリから git worktree を切り、ブランチと作業ディレクトリを独立させる。既存worktreeの取り込みや、プロジェクトフォルダ直接作業も可能 |
| PR連携 | ブランチの状態、PR作成、CIチェック・レビュー結果の表示、マージまで画面から操作(GitHub、手元の gh を使用) |
| IDE機能 | Monaco エディタのタブ、変更マーク付きファイルツリー、ターミナル、ファイル/差分へのレビューコメント |
| チャット | ワークスペースごとに複数の pi セッションを並行。セッション別のモデル選択、トークン・コスト表示、実行中の操作介入(steer)、サブエージェント、共有プラン |
| Specs | コードの隣に SPEC.md のグラフを置き、エージェントが spec_* ツールで読み書き。画面ではツリー表示 |
| スキル・ワークフロー | 他のエージェント用に持っている Agent Skills をそのまま読み込み。セットアップ・設計ブレスト・PR作成の同梱ワークフロー |
| MCP | pi の mcp.json のサーバーを利用。読み取り専用でない呼び出しはチャットで承認を求める |
| 多言語 | 英語と簡体字中国語を同梱。ロケールファイルの追加も可能(日本語は標準では未同梱) |

構造は README の「Under the hood」に沿うと、ThinkRail は薄いホストとして pi をプロセス内で動かし、Web UIに橋渡しする。モデル・スキル・コスト・セッション状態は pi が持ち、ThinkRail は作業場所・エディタ・通信を担当し、プロンプトを裏で組み立てることはしない、と明記されている。
インストール・料金
配布形態はデスクトップインストーラと CLI の2種類で、どちらもリリースページに SHA256SUMS 付きで公開されている。CLI は次のコマンドでインストールする(git が PATH にあることが前提)。
# macOS / Linux(Windows の Git Bash でも可)
curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/JetBrains/thinkrail/main/install.sh | bash
# Windows(cmd / PowerShell 共通)
powershell -c "irm https://raw.githubusercontent.com/JetBrains/thinkrail/main/install.ps1 | iex"ナイトリー版や特定バージョンは --channel nightly や --version 0.1.2 で指定できる。アップデートは thinkrail update、削除は thinkrail uninstall で行う。デスクトップ版は macOS(Apple Silicon)が DMG、Windows が署名付きセットアップ、Linux はセットアップ tarball(Ubuntu 24.04 以上相当、GTK や WebKitGTK が必要)である。macOS の CLI は署名済みだが公証は未対応、Linux の成果物は未署名と README に書かれている。料金は ThinkRail 本体が無料で、LLM の費用は接続するプロバイダ(JetBrains AI を含む)に依存する。
使い方(最短手順)
- 上記のコマンドで CLI を入れる(またはデスクトップ版をダウンロードする)
- アプリ内で JetBrains AI にサインインするか、pi の認証で自分のプロバイダを接続する
- 対象リポジトリを指定して起動し、プロジェクトとして開く
- ワークスペースを切って(worktree 化)チャットを始め、pi に作業を依頼する
- 差分をレビューし、コメントやプランの編集で方向を修正する
- 良いブランチだけをPR化してマージし、不要なワークスペースは削除する
thinkrail ~/code/my-repo
thinkrail --help # フラグ一覧
thinkrail --version # ビルド確認既存ツールとの違い
| ツール | 位置づけ | エージェント | 費用の考え方 | ThinkRail との違い |
|---|---|---|---|---|
| ThinkRail | pi 専用のエージェント型IDE(OSS) | pi のみ | 本体無料・モデル費は別 | worktree 分離とSPEC.md管理が中心。エージェントは固定 |
| Cursor | VS Code ベースのAIエディタ(商用) | 独自の内蔵エージェント | 有料プランあり(最新は公式で確認) | 完成度とモデル統合は高い。ThinkRail は pi を軸にしたOSS |
| Zed | 高速な Rust 製エディタ(OSS)。マルチプレイヤー志向 | エージェントパネル/外部エージェント接続 | エディタは無料(AI利用は構成次第) | エディタ体験が主軸。詳細は Zed Delta |
| JetBrains IDE+AI Assistant/Junie | IntelliJ 系IDEにAIとJetBrains製エージェント Junie を統合 | AI Assistant、Junie | JetBrains AI のサブスクリプション | 言語別の深いコード解析が強み。ThinkRail は別アプリでワークスペース管理が主軸 |
| VS Code+Claude Code(または pi CLI 単体) | 既存エディタ+CLIエージェント | Claude Code/pi | エディタは無料、モデル費は別 | 自由度は高いが、worktree・PR・レビューの画面は自分で組む。ThinkRail はそれをGUIにまとめる |
選び分けの目安は次のとおりである。すでに pi を使い、複数タスクを worktree で並列化してGUIで差分レビューしたいなら ThinkRail を試す価値がある。エージェントを Claude Code や Codex など複数切り替えたいなら、エージェント非依存の環境が合い、似た発想のツールとして Orca がある。既存の JetBrains IDE のコード解析をそのまま使いたいなら AI Assistant/Junie、編集の軽さとコラボレーションを重視するなら Zed、完成度の高い商用体験なら Cursor が候補になる。各社の機能・料金は変わりやすいため、導入前に公式情報を確認したい。
注意点・向いていない用途
- 早期段階である。インキュベータープロジェクトで、README のバージョン例は 0.1.2、ナイトリーは 0.3.0 系(2026年10月時点)。仕様や安全性は今後変わりうる
- 対応エージェントは pi のみ。Claude Code や Codex をそのまま差し込む用途には向かない
- macOS は Apple Silicon のみ。Intel Mac のデスクトップ版はなく、ソースからのビルドになる
- Linux 版は未署名で、macOS の CLI は公証未対応。署名・公証済みのDMGには JetBrains 側のパイプラインが必要で、古いDMGやローカルビルドは Gatekeeper にブロックされることがある
- 利用状況の送信がある。起動・チャット作成・メッセージ送信などの基本イベントとエラー報告が、ランダムなインストールIDで送られる(プロンプトやコードは含まれない)。追加共有は任意で、thinkrail --no-analytics で無効にできる
- 日本語UIは標準では未同梱。英語と簡体字中国語のみ
- 外部サーバー(MCP)や curl | bash のインストールは、通常のセキュリティ確認(チェックサム、権限、承認設定)を行ってから使う
エージェントを並列に動かす土台の考え方は、前述の Orca と Zed Delta の記事も参考になる。pi の位置づけは Pi コーディングエージェント にまとめている。
よくある質問
ThinkRail は無料で使えますか。
ソフトウェア自体は Apache-2.0 のオープンソースで無料である。ただし LLM の利用料は別で、JetBrains AI でサインインする場合はそのプランに、自前のプロバイダを使う場合はその料金に従う。JetBrains AI の具体的な料金は本稿では確認していない。
ThinkRail は IntelliJ IDEA のプラグインですか。
いいえ。README によれば、独立したデスクトップアプリ、または thinkrail CLI がブラウザで開くアプリである。ワークスペースを既存IDEで開くこともできる。
Claude Code や Codex も使えますか。
README が説明しているのは pi を包む構成のみで、他のエージェントへの対応は記載されていない。複数エージェントを使いたい場合は別のツールを検討したい。
どのモデルが使えますか。
README は個別のモデル名を列挙していない。JetBrains AI でサインインするか、pi の認証で任意のプロバイダを接続する方式で、モデルはチャット(セッション)ごとに選べる。
Cursor や Junie の代わりになりますか。
用途次第である。ThinkRail は pi 専用で初期段階のため、完成度や安定性を求める業務では Cursor や JetBrains の AI Assistant/Junie のほうが無難な場合が多い。pi を軸に worktree 並列を試したい人向けの選択肢である。
プロンプトやコードは JetBrains に送られますか。
README によると、利用状況イベントにプロンプト、コード、ファイル、認証情報は含まれない。エラー報告も種類とコード、ThinkRail 内の発生位置のみで、エラーメッセージやファイルパスは含まれない。ただしモデルへのリクエスト自体は、接続したプロバイダに送られる。
この記事に関連する無料ツール(登録不要・その場で結果)
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