「i-have-adhd」と「ponytail」とは何か GitHub急上昇の2大Agent Skillを徹底比較【20
26年9月版】
GitHub週間トレンドで急上昇したコーディングエージェント向けAgent Skill 2本を解説する。回答を埋もれさせず次の一手を先出しする「i-have-adhd」(週間+16,740★)と、最も怠惰なシニア開発者のように考えさせ不要なコードを書かせない「ponytail」(週間+8,444★)。SKILL.mdの中身、Claude Code/Codexへのインストール方法、grill-me・superpowers・humanizerとの違いを整理する。
i-have-adhdとponytailは何をするAgent Skillか
「i-have-adhd」(ayghri/i-have-adhd)と「ponytail」(DietrichGebert/ponytail)は、Claude Code・Codex・Cursorなどのコーディングエージェントに追加でインストールする「Agent Skill」で、いずれも2026年9月時点でGitHubの週間トレンドを賑わせている。i-have-adhdはエージェントの出力の構成を変えるスキールで、前置きや背景説明で回答を埋もれさせず、次の一手・番号付き手順・状態の再掲を最初に出す形式に矯正する。一方ponytailはエージェントのコーディング判断を変えるスキルで、「最も怠惰なシニア開発者のように考えろ」という指示のもと、本当に必要な機能かをまず疑い、標準ライブラリや既存パターンの再利用を優先させ、不要なコード追加を抑制する。どちらも既存のモデルを差し替えず、指示(プロンプト/エージェントへの振る舞いルール)だけで挙動を変える点が共通している。
なぜ話題になったのか
GitHub Trendingの週間スター増加数で見ると、i-have-adhdは週間+16,740★、ponytailは週間+8,444★を獲得しており、2026年9月14日時点の累計スター数はi-have-adhdが約44,300、ponytailが約137,300に達している(GitHub API実測値、いずれもMITライセンス)。i-have-adhdは2026年5月13日、ponytailは2026年6月12日に公開されたリポジトリで、いずれも半年に満たない期間でこの規模に伸びている。背景には、コーディングエージェントが自律的に長時間タスクをこなすようになったことで、「結局何をすればいいのか」が埋もれる問題と、「頼んでいないコードまで書かれてしまう」過剰実装の問題が同時に顕在化してきた事情がある。2つのスキルはそれぞれこの2つの不満に対する処方箋として支持を集めた形だ。
i-have-adhdとは何か
i-have-adhdは「エージェントに回答を埋もれさせない」ことに特化したAgent Skillである。README・SKILL.mdでは、ADHD(注意欠如・多動症)の特性を踏まえた5つの前提を掲げている。(1) ワーキングメモリは小さく、画面外の情報は忘れられる、(2) 「わかる」と「やる」の間には摩擦があり、その摩擦が着手を妨げる、(3) 着手には明確で小さい最初の一歩が要る、(4) 曖昧な所要時間の見積もりは体感的に区別がつかない、(5) ドーパミンが不足しがちなため、進捗の可視化が重要——という考え方である。
- 回答は先頭の1行に置く(結論・コマンド・パスを最初に)
- 複数手順は番号付きで提示し、1ステップに1操作だけ入れる
- 会話の各ターンで現在の状態を再掲する(「5手順中3完了」等)
- 所要時間は「少し」ではなく「15分」のように具体的な数値で示す
- 達成できたことを目に見える形で示す(ドーパミン枯渇対策)
- エラーは淡々と原因と対処だけを述べ、警告的な言い回しを避ける
- リストは5件までに要約し、残りはグループ化して要求時のみ展開
- 意図表明の前置き・「他に何かあれば」等の締めの挨拶を省く

ponytailとは何か
ponytailは「最も怠惰なシニア開発者のように考えさせる」ことを掲げるAgent Skillである。リポジトリの説明文は "The best code is the code you never wrote."(最良のコードは書かれなかったコードだ)。トリガーワードは「ponytail」「be lazy」「lazy mode」「simplest solution」「YAGNI」「do less」などで、コーディングタスク(実装・リファクタ・修正・レビュー・設計)に限定して適用される。コードを書く前に、下記7段階の「判断ラダー」を上から順にチェックし、上位の段で解決できるならそれ以上下に降りない、という設計になっている。
| 段 | チェック内容 | 狙い |
|---|---|---|
| 1 | 本当にその機能は必要か(YAGNI) | 推測ベースの先回り実装をしない |
| 2 | 既存パターンを再利用できないか | 同じコードベース内の実装を踏襲 |
| 3 | 標準ライブラリで足りないか | 自前実装より言語・FW標準を優先 |
| 4 | OS・プラットフォームのネイティブ機能で足りないか | CSSでできるならJSを書かない、HTML inputで足りるなら独自ピッカーを作らない |
| 5 | 既に入っている依存関係で足りないか | 新規パッケージ追加より既存導入済みを優先 |
| 6 | 一行で済ませられないか | 最小構成の解法を優先検討 |
| 7 | 動く最小限のコードを書く | ここまでで消せなかった分だけ実装 |

強度レベル(lite / full / ultra)と、崩してはいけない線引き
ponytailは適用の強さを3段階で切り替えられる。「lite」は依頼された通りに実装しつつ、より怠惰な代替案を提案するだけに留める。デフォルトの「full」は判断ラダーを厳格に適用し、diffが最小になる実装を選ぶ。「ultra」はYAGNIを徹底し、機能要件そのものの必要性まで疑う。環境変数 PONYTAIL_DEFAULT_MODE や設定ファイル ~/.config/ponytail/config.json の defaultMode でデフォルト強度を指定できる。一方で、入力検証・エラーハンドリング・セキュリティ・アクセシビリティ・明示的に依頼された機能・ハードウェア固有のチューニングといった項目は、どの強度でも簡略化しない「譲れない一線」として明記されている。意図的に妥協した箇所には ponytail: から始まるコメントでその理由と限界を明示するルールもある。
SKILL.mdの中身の要点
両スキルとも「Agent Skills」という仕組み上で配布されている。Agent Skillsは、エージェントに追加のシステムプロンプト的な振る舞いルール(Markdown形式のSKILL.md)を読み込ませ、明示的なコマンド(i-have-adhdなら/i-have-adhd)やトリガーワード(ponytailなら「be lazy」等)で有効化する仕組みで、モデル自体のファインチューニングを伴わない。i-have-adhdのSKILL.mdは「10のルール」と「送信前チェックリスト」で構成され、送信前チェックリストでは意図表明の前置き・「他に質問はありますか」的な締め・ヘッジする副詞・比喩表現を削除するよう指示している。ponytailのSKILL.mdは前述の7段ラダーに加え、単一実装しか使わないインターフェースや不要な設定項目といった「依頼されていない抽象化」を作らないこと、削除は追加より優先されること、対症療法ではなく根本原因を直すことを明記している。
インストール方法(Claude Code / Codex ほか)
両スキルともClaude Codeのプラグイン機構、Codexのプラグイン機構、汎用の npx skills コマンドに対応している。代表的なコマンドは以下のとおり(2026年9月時点、各リポジトリのINSTALL.md/README.mdに基づく)。
# --- i-have-adhd ---
# Claude Code
claude plugin marketplace add ayghri/i-have-adhd
claude plugin install i-have-adhd@i-have-adhd
# 有効化: セッション内で /i-have-adhd と入力
# Codex
codex plugin marketplace add ayghri/i-have-adhd --ref main
codex plugin add i-have-adhd@i-have-adhd
# 有効化: $i-have-adhd
# 汎用(Cursor / GitHub Copilot 等)
npx skills add ayghri/i-have-adhd -a <your-agent>
# --- ponytail ---
# Claude Code
/plugin marketplace add DietrichGebert/ponytail
/plugin install ponytail@ponytail
# Codex
codex plugin marketplace add DietrichGebert/ponytail
codex plugin add ponytail@ponytail
# プラグイン非対応エディタ(Cursor/Windsurf/Cline等)はルールファイルを配置
# 例: .cursor/rules/、.windsurf/rules/、.clinerules/ にponytailのルールをコピーponytailは20以上のエージェント/ハーネス(OpenCode、Gemini CLI、Grok Build、Devin CLIなど)向けの個別インストール手順をREADMEにまとめており、プラグイン機構を持たないエディタ向けにはルールファイルをコピーする方式も用意している。i-have-adhdはZed向けに「URLからスキルを作成」する手順、Qwen Code向けのqwen extensions installなど、対応クライアントごとに個別の導線を持つ。どちらもインストール後は明示コマンドまたはトリガーワードで有効化する必要があり、インストールしただけでは自動的には適用されない。
使いどころ
- i-have-adhd: 長時間の対話型ペアプログラミングで、エージェントの出力から必要な情報だけを素早く拾いたいとき。マルチステップの移行作業やデバッグセッションで、今どこまで進んだかを見失いたくないとき
- i-have-adhd: レビュー依頼やエラー調査で、結論を最初に知りたいが背景説明も後から参照したいとき(チェックリストが「まず結論、次に詳細」の順を強制する)
- ponytail: 新規機能の実装で、エージェントが要求を超えて設定オプションや抽象化レイヤーを追加しがちなとき
- ponytail: 依存関係を増やしたくない小規模〜中規模プロジェクトで、標準ライブラリや既存コードの再利用を優先させたいとき
- ponytail: コードレビューの前段階として、diffを最小化した実装を先に生成させたいとき(/ponytail-review等のサブコマンドも提供)
既存ツールとの違い(比較表)
コーディングエージェント向けAgent Skillは2026年に入って急増しており、本サイトでもgrill-me(実装前に徹底的に質問して認識を合わせるMatt Pocock考案のスキル)やarchify(JSON中間表現から図解を生成するスキル)を解説してきた。i-have-adhdとponytailは、それぞれ「出力の見やすさ」と「実装の最小化」という別の軸を狙っている点で、これらとは役割が異なる。
| スキル | 変えるもの | 中心的な仕組み | 主な効果 | ponytail/i-have-adhdとの違い |
|---|---|---|---|---|
| i-have-adhd | 出力の構成 | 送信前チェックリストで前置き・埋もれた回答を除去 | 回答が最初の1行に来る、進捗が見える | (本記事の対象) |
| ponytail | コーディング判断 | 7段の判断ラダーでYAGNI・再利用を優先 | 不要な実装・抽象化を抑制 | (本記事の対象) |
| grill-me | 実装前の質問量 | 実装前に18〜24問の逐次質問で前提を同期 | plan→実装→再計画のループを削減 | i-have-adhdと逆方向:出力を圧縮せずむしろ対話を増やして精度を上げる |
| obra/superpowers | 開発プロセス全体 | brainstorming・TDD・git worktree等の複合スキル群 | RED-GREEN-REFACTOR等の手法を自動適用 | ponytailの「何を書くか」の判断ではなく「どう進めるか」の手順を規定 |
| blader/humanizer | 文章のトーン | AI文章特有のパターンを検出し人間の文体サンプルに寄せる | 生成文章のAIらしさを低減 | コーディングではなく文章生成が対象。i-have-adhdの構造変更とは目的が異なる |
| archify | 図解生成 | JSON IRを決定論的にHTML/SVGへコンパイル | 崩れないアーキテクチャ図を出力 | 出力形式(図)を変えるスキルで、テキスト構成やコード判断は対象外 |
導入する際の注意点
i-have-adhdは出力を簡潔にする分、詳細な背景説明が必要な学習目的のやり取りには不向きな場面がある。チェックリストが比喩表現やヘッジする言い回しを削除する設計のため、ニュアンスを伝えたい説明では情報量が落ちる可能性がある。ponytailは「ultra」強度にすると機能要件そのものを疑うため、要求仕様を厳密に守ってほしい場面では「lite」や「full」に留めるか、明示的に依頼した機能は簡略化しない旨をプロンプトで補強するとよい。いずれも2026年5〜6月公開の比較的新しいプロジェクトであり、SKILL.mdの内容は今後のアップデートで変わる可能性がある点は踏まえておきたい。
まとめ
i-have-adhdは「回答が埋もれる」問題に、ponytailは「頼んでいないコードまで書かれる」問題に、それぞれ指示ベースで対処するAgent Skillである。どちらもモデルを変えずインストールするだけで挙動が変わり、Claude Code・Codexをはじめ複数のエージェント基盤に対応している。grill-meのような「対話を増やして精度を上げる」系統のスキルとは逆方向のアプローチであり、目的に応じて組み合わせて使うことも可能だ。
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i-have-adhdとponytailは同時にインストールしても問題ないか
両者は役割が異なる(出力構成 vs コーディング判断)ため、原理的には併用可能である。ただしi-have-adhdの「簡潔な出力」とponytailの「意図的な妥協箇所へのコメント記載」が競合し、コメントが省略される可能性はある。実際に併用する場合は出力を確認しながら調整するとよい。
Claude Code以外でも使えるか
使える。i-have-adhdはCodex・Cursor・GitHub Copilot・Qwen Code・Zed・Grokなどに対応し、ponytailはOpenCode・Gemini CLI・Devin CLIなど20以上のエージェント/ハーネスに対応する。プラグイン機構がないエディタ向けにはルールファイルをコピーする方式も用意されている。
導入すると自動的に挙動が変わるのか
いいえ。どちらもインストール後に明示的なコマンド(i-have-adhdは/i-have-adhd、ponytailはトリガーワードやプラグイン起動)で有効化する必要があり、インストールしただけでは適用されない。
grill-meとどちらを使うべきか
目的が異なる。実装に着手する前に要件のすり合わせを厚くしたい場合はgrill-me、実装後の出力を読みやすくしたい場合はi-have-adhd、実装そのものを最小限に抑えたい場合はponytailが適している。併用も可能。
料金はかかるか
どちらもMITライセンスのオープンソースで、2026年9月時点で無料公開されている。利用するコーディングエージェント本体(Claude Code、Codex等)側の利用料は別途発生する。
この記事に関連する無料ツール(登録不要・その場で結果)
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