本文へスキップ
株式会社オブライト
Web Development2026-10-12約15分で読めます

Dooryとは — オープンソースのCanva代替(機能・セルフホスト手順・Penpotとの違い)

Dooryは自前サーバーで動かせるオープンソースのCanva代替。テンプレート、動画書き出し、共同編集などの機能、Docker Composeでの導入手順、ライセンス(Attribution Assurance License)の注意点、PenpotやFigmaとの違いを、HNの評価も交えて解説します。


Doory(GitHub: shaongitbd/doory)は、ブラウザで動くデザインエディタをセルフホストできるオープンソースのCanva代替です。ポスター、SNS投稿、スライド、履歴書、名刺などを作れ、PNG・PDF・MP4など多様な形式で書き出せます。ライセンスは商用利用可ですが、MITやApache 2.0ではなくAttribution Assurance Licenseで、稼働中のアプリに作者クレジットを表示する義務がある点に注意が必要です。

本稿では、2026年10月12日時点の公式README、GitHubリポジトリの表示、Hacker Newsのスレッド(「Doory – Open-Source Canva」、117ポイント・44コメント)に基づき、機能、技術スタック、ライセンス、Docker Composeでの導入手順、使い方、Canva・Penpot・Figmaなどとの違い、初期段階のプロジェクトとして確認すべき点を整理します。GitHubスターは363、コミットは6件、リリースは未公開(いずれも2026年10月12日時点)で、まだ立ち上がったばかりのプロジェクトです。

Dooryとは — ブラウザで動く自前ホストのデザインエディタ

READMEの説明では、Dooryは「ブラウザベースのデザインエディタで、Canvaの無料の代替」です。ポスター、SNS投稿、ストーリー、スライド、招待状、履歴書、サムネイル、名刺といった、非デザイナーが日常的に作る制作物を想定しています。自分のサーバーで動かせるため、デザインデータと画像アップロードを自社管理下に置けます。

READMEは「すべての機能が無料で、有料プラン・透かし・広告はない」としています。ゲスト(アカウントなし)でもすぐ編集でき、作品はブラウザに保存されます。サインアップすると、ゲスト時代のデザインがクラウド(Dooryを動かしているサーバー)へ移行されます。

何ができるか(主な機能)

READMEに記載されている機能を分類すると次のとおりです。いずれも「READMEの記載」であり、筆者が全機能を実機で検証したものではありません。

- テキスト: 見出し、曲線テキスト、テキスト効果、フォントの組み合わせ、リスト、オープンライセンスのフォント一覧、カスタムフォントのアップロード
- 素材: 図形、線、矢印、約2万5,000点のアイコン、絵文字、イラスト、ステッカー、QRコード
- 写真: アップロード、トリミング、マスク、フィルター、ブラウザ内で動く背景除去。ストック写真検索にはUnsplashまたはPexelsのキーが必要
- レイアウト: レイヤー(ロック・非表示・並べ替え・グループ化)、整列ガイド、スナップ、ルーラー、ページサイズ混在の複数ページ、マジックリサイズ
- モーション: 入場・退場アニメーション27種、強調エフェクト12種、ページ遷移16種をタイムラインで設定
- サウンド: 音楽ループ24点と効果音88点(CC0)の内蔵ライブラリ、アップロード、ナレーション録音、トリミング、フェード
- プレゼン: 発表者ノート、タイミング設定、自動送り、レーザーポインター、別ウィンドウの発表者ビュー
- 共有・共同編集: 閲覧・コメント・編集の権限つき共有リンク(パスワード保護も可)、ピン留めコメント、バージョン履歴、ライブカーソル付きのリアルタイム共同編集
- ブランドキット: 色、フォント、ロゴの保存
- 書き出し: PNG(透過対応)、JPG、SVG、PDF、MP4、WebM、アニメーションGIF。READMEによればブラウザ内で生成され、印刷用PDFにはトンボ(クロップマーク)と裁ち落としが入る

同梱テンプレートは10種類で、ライブのポスター、結婚式の招待状、イベントのストーリー、セール告知、カフェのチラシ、引用カード、履歴書、YouTubeサムネイル、ピッチデッキ、名刺です。すべて編集でき、管理者は追加でき、カテゴリ・サイズ・向きで絞り込めます。Canvaのような数十万点規模のテンプレート資産はないため、「自分でテンプレートを育てる」前提の製品と考えるのが現実的です。

技術スタック

- フロントエンド: React 19、TypeScript、Vite、Fabric.js(キャンバス描画)、Yjs(共同編集)、Zustand(状態管理)
- バックエンド: Django 5、Django REST Framework、Channels(WebSocket)、PostgreSQL
- インフラ: Docker Composeとnginx、任意でRedis、任意でS3互換ストレージ

構成は一般的なWebアプリのもので、保守する側から見て馴染みやすい技術が中心です。キャンバス描画にFabric.js、共同編集にYjs(CRDT)という既存の実績あるライブラリを使っており、リアルタイム共同編集の同期ロジックをゼロから書いているわけではありません。READMEによれば、Webコンテナがアプリを配信し、/apiと/wsをバックエンドへ転送するため、ブラウザからは単一のアドレスに見えます。

Dooryのセルフホスト構成図。ブラウザ(React 19・Fabric.js・Yjs)がnginx経由でDjango/DRF(/api)とChannels(/ws)につながり、データはPostgreSQLに保存され、RedisとS3互換ストレージは任意。

ライセンス — Attribution Assurance Licenseの注意点

READMEはライセンスをAttribution Assurance Licenseと明記しています。リポジトリにはLICENSEとNOTICEのファイルがあります。READMEの説明では、使用・改変・再配布は商用を含めて可能ですが、次の2点が条件です。

- LICENSEとNOTICEのファイルをソフトウェアと一緒に保持すること
- 稼働中のアプリ上で、作者クレジットを目立つ形で表示すること(READMEが示す文面は「Doory by Siam, creator and maintainer of Doory」とGitHubのURL)

ここがMITやApache 2.0との実務上の大きな違いです。MITやApache 2.0は、ソースコードや配布物に著作権表示を残せばよく、画面上の表示までは通常求めません。一方、Attribution Assurance Licenseは、実行中のアプリにクレジットを出すことを求める帰属表示型のライセンスです。社内ツールとして使うだけなら影響は限定的でも、自社ブランドで顧客に提供するSaaSに組み込む、ホワイトラベル製品として再販する、といった用途では、クレジット表示が仕様上の制約になります。

また、サードパーティのソフトウェア・フォント・コンテンツはそれぞれ別のライセンスで、READMEはTHIRD_PARTY.mdに一覧があると述べています。社内利用であっても、組織のOSS利用ポリシーが「OSI承認ライセンスのみ」といった条件を定めている場合は、法務・情報システム部門へ事前に確認してください。本稿は法的助言ではなく、READMEの記載の要約です。

導入手順 — Docker Composeでセルフホスト

READMEのセルフホスト手順は次の3コマンドです。前提としてDockerとDocker Composeが使えるマシンが必要です。リポジトリをクローンしたディレクトリで実行します。

git clone https://github.com/shaongitbd/doory.git
cd doory
cp .env.example .env     # DJANGO_SECRET_KEY(openssl rand -base64 48 で生成)とPOSTGRES_PASSWORDを設定
docker compose up -d --build
docker compose exec api python manage.py createsuperuser

起動後、ブラウザでhttp://localhost:8080を開くとエディタが表示されます。最初の2行(git cloneとcd)は筆者が補った一般的な手順で、READMEが示す核心はそれ以降の3コマンドです。

インストール直後の環境は空っぽです。テンプレート、フォント、素材などは、READMEが紹介する次の任意コマンドで投入します。

docker compose exec api python manage.py seed_gallery          # テンプレートのカテゴリ
docker compose exec api python manage.py sync_fonts --popular 100
docker compose exec api python manage.py seed_templates        # --update で更新
docker compose exec api python manage.py seed_elements         # 図形とグラフィック
docker compose exec api python manage.py sync_element_packs    # アイコン、絵文字、イラスト
docker compose exec api python manage.py sync_models           # 背景除去モデル
docker compose exec api python manage.py sync_audio            # 音楽と効果音

.envの主な設定項目は次のとおりです(READMEの記載)。

- SITE_URL: サイトの公開アドレス(末尾スラッシュなし)
- DJANGO_ALLOWED_HOSTS: 受け付けるホスト名(カンマ区切り)
- SECURE_SSL_REDIRECT、SECURE_COOKIES: HTTPSの背後ではtrue、素のHTTPではfalse
- EMAIL_URL、DEFAULT_FROM_EMAIL: SMTP設定。未設定の場合、メールはAPIのログに出力される
- WEB_PORT、WEB_BIND: 公開アドレス(既定は0.0.0.0:8080)
- INSTALL_CHROMIUM: サーバー側PDF書き出しに使うヘッドレスブラウザを省くならfalse
- GOOGLE_CLIENT_ID: Googleログインを有効化
- UNSPLASH_ACCESS_KEY、PEXELS_API_KEY: ストック写真検索を有効化
- USE_S3とAWS_*: アップロードをS3互換ストレージに保存

開発用途ではmake setup、make dev-api(localhost:8000)、make dev-web(localhost:5173)でローカル開発環境を立ち上げられると説明されています。

使い方 — 最初の1枚を作って共有するまで

READMEの説明では、エディタを開けばアカウントなしですぐ編集できます。要素をクリックして編集し、ツールバーで装飾し、レイヤーパネルで重なりを管理し、書き出しメニューから出力します。クラウド保存、共有、ブランドキットの利用にはサインインが必要です。

- 1. テンプレートを選ぶ: 10種類の同梱テンプレートから近いものを開く。管理者は追加も可能
- 2. 編集する: テキスト、写真、図形を差し替える。背景除去はブラウザ内で動く
- 3. 動きや音を付ける: 必要ならアニメーション、ページ遷移、音楽・ナレーションを設定する
- 4. 共有する: 共有リンクを発行して閲覧・コメント・編集の権限を指定。共同編集ではライブカーソルが見える
- 5. 書き出す: 画像はPNG/JPG/SVG、印刷はトンボ付きPDF、動画はMP4/WebM/GIF

なお、動画やGIFなどの書き出しがどの程度の長さ・解像度まで実用的かは、READMEに記載がありません。ブラウザ内での生成であるため、端末の性能に左右される可能性があります。

既存ツールとの違い

次の表は、各ツールの公開情報として一般に知られる位置づけと、Dooryの記載を並べたものです。Canva以外の各ツールの料金・機能は変更されることがあるため、最新の公式情報も確認してください。

ツール主な用途ホスティングライセンス・提供形態Dooryとの違い
Doory非デザイナー向けのテンプレート型デザイン(ポスター、SNS、スライド、動画)セルフホスト(Docker Compose)オープンソース(Attribution Assurance License)本稿の対象。初期段階
Canva同上(テンプレート・素材・ストック写真が豊富)SaaSのみ商用SaaS(無料プランと有料プラン)完成度・素材量で大差。Dooryは自前運用でデータを手元に置ける
PenpotUI/UXデザイン、デザインとコードの協業セルフホスト可、クラウドもありオープンソース(MPL 2.0)Penpotはプロダクト設計寄り。Dooryは販促物・SNS・スライド寄り
Polotno StudioCanva風のWebデザインエディタWeb版を利用Polotno SDKは商用の開発キット組み込み用SDKが中心。Dooryは完結したアプリとして自前運用できる
PhotopeaPhotoshop風の画像編集ブラウザ(クラウド)広告つきの無料版あり(非OSS)ラスター画像の高度な編集向け。Dooryは多ページ・テンプレート・共同編集向け
Excalidraw手描き風のホワイトボード、図解セルフホスト可オープンソース(MIT)図解・ブレスト向け。Dooryは仕上げた見た目の制作物向け
FigmaUI設計・プロトタイピング・FigJamSaaSのみ商用SaaSプロ向けの設計ツール。DooryはCanva的な簡易制作向け

使い分けの目安は次のとおりです。ポスターやSNS画像を非デザイナーがテンプレートから作る用途ならCanvaとDoory、UIの設計や開発者との協業ならPenpotやFigma、写真のレタッチならPhotopea、図やラフならExcalidrawが近い位置にあります。Dooryの独自性は「Canva型のUIを、動画・音声・共同編集まで含めて自分のサーバーに置ける」点にあります。

動画を扱う観点では、HTMLからMP4を生成するHyperFramesのような別アプローチもあります。詳しくはHyperFramesとは — HTMLからエージェントが動画を作るフレームワークを参照してください。コードで動画を作る方法と、GUIで作る方法という違いがあります。

向いている人・注意点

Dooryが向いているのは、次のような人です。

- データを外部SaaSに預けたくない組織で、簡易的な販促物をセルフホストで作りたい
- Docker、Django、Reactに慣れていて、機能を足したり不具合を直したりできる
- Canva型のエディタの実装を学びたい、あるいはベースにして自社用に作り込みたい
- 個人・小規模で検証し、うまくいけば段階的に広げたい

一方、現時点では次の点に注意が必要です。GitHubの表示は2026年10月12日時点で、コミット6件、リリースなし、スター363、フォーク14です。ロードマップや制限事項のセクションはREADMEにありません。

- 本番運用の前に確認すること: バックアップ(PostgreSQLとアップロード用ボリュームまたはS3)、HTTPS化(SECURE_SSL_REDIRECTとSECURE_COOKIESの設定)、DJANGO_SECRET_KEYとPOSTGRES_PASSWORDの管理、メール送信(SMTP)の設定
- セキュリティ: 脆弱性は、リポジトリのSecurityタブで非公開に報告する運用がREADMEに書かれている。更新を追える体制があるか確認する
- サードパーティの資産: フォント、アイコン、イラスト、音声は別ライセンス。商用物に使う前にTHIRD_PARTY.mdを確認する
- クレジット表示: 自社名義で外部提供する場合の扱いを、ライセンス条項に照らして決めておく
- 共同編集と動画書き出しの負荷: 複数人の同時編集や長尺の動画で、サーバーとブラウザの負荷を試す
- 継続性: 開発が止まった場合に自分たちで保守できるかを見積もる

まずは本番とは別の検証環境でDocker Composeを動かし、実際に使う想定の制作物(自社のテンプレート、日本語フォントでの表示、PDFの印刷設定など)を試すのが安全です。特に日本語フォントの扱いは、READMEには明記がないため、sync_fontsで取得できるフォントの範囲を含めて実機で確認してください。

Hacker Newsでの評価

Hacker Newsの投稿「Doory – Open-Source Canva」は、2026年10月12日時点で117ポイント・44コメントでした。コメントの趣旨を筆者が要約すると、評価は割れています。

- 肯定的な声: 重要度の低い用途のオープンソースとしては妥当、AIツールのおかげで放置されたプロジェクトの不具合も直しやすい、実用的だとして詳細なUXフィードバックを寄せる人もいた
- 批判的な声: UIが「バイブコーディング」(AIに書かせた雰囲気)に見える、図形メニューのテキスト崩れ、ヘッダーの雑然さ、書き出しと保存状態の重複表示、テスト中のクラッシュの報告、サインアップ誘導が目立つ、といった指摘
- コミット履歴への疑問: 履歴が単一のコミットから始まっている点や、READMEの「選ばれる理由」の根拠が薄い点が指摘された。作者側とみられるコメントは、エディタ部分は小さな内部プロジェクト由来で、OSSでClaudeやCodexを使うのは一般的だと答えた。別のコメントは、コミットの作者欄にClaudeが記載されていると指摘
- 本質的な論点: Canvaの価値はテンプレート・素材・ストック写真にあり、OSSでは再現しにくい。同梱テンプレートは汎用的に見える、という意見
- 要望: API/MCPファーストにして、リポジトリの文脈からデザインを生成できないか、という質問があった

ライセンスについての議論はスレッドにはありませんでした。また、評価は特定時点の個人の意見であり、品質の客観的な結論ではありません。UIの粗さやクラッシュの報告は初期段階のプロジェクトによくある課題ですが、導入を検討する場合は自分の環境で確かめる必要があります。

未確認の点

- READMEの機能一覧はすべて筆者による実機検証を行っていない
- 動画書き出しの最大長・解像度、日本語フォントの表示品質、同時編集の上限人数はREADMEに記載がない
- 他社ツール(Penpot、Polotno、Photopea、Excalidraw、Figma)の最新の料金・ライセンスは公式サイトで確認が必要
- 公式サイト(doory.art)の内容は本稿では確認していない

よくある質問

Dooryは無料で使えますか?

READMEには、すべての機能が無料で、有料プラン・透かし・広告はないと書かれています。ただしセルフホストする場合のサーバー費用や運用の手間は自分で負担します。ストック写真検索にはUnsplashまたはPexelsのAPIキーが別途必要です。

商用利用や社内利用はできますか?

READMEでは、商用を含む使用・改変・再配布が可能とされています。条件は、LICENSEとNOTICEの保持、および稼働中のアプリでの作者クレジットの目立つ表示です。MITやApache 2.0とは条件が異なるため、組織のOSSポリシーとの整合を確認してください。

自分のサーバーで動かすのに何が必要ですか?

DockerとDocker Composeが使えるマシンです。.env.exampleを.envにコピーしてDJANGO_SECRET_KEYとPOSTGRES_PASSWORDを設定し、docker compose up -d --build、続けてcreatesuperuserを実行すると、http://localhost:8080で開けます。テンプレートや素材は別途seed系・sync系コマンドで投入します。

CanvaやPenpotの代わりになりますか?

Canvaのテンプレート・素材・ストック写真の量には及びません。Penpotは主にUI/UXの設計向けで用途が異なります。Dooryは、Canva型の簡易制作を自前の環境で運用したい場合の選択肢で、現時点では検証用途から始めるのが現実的です。

共同編集や動画の書き出しは本当に使えますか?

READMEにはYjsによるリアルタイム共同編集と、MP4・WebM・GIFの書き出しが記載されています。ただし筆者は実機で検証しておらず、Hacker Newsではテスト中のクラッシュを報告するコメントもありました。導入前に自分の環境と用途で試してください。

データはどこに保存されますか?

READMEの説明では、ゲストの作品はブラウザに保存され、サインインした作品はDooryを動かしているサーバー(PostgreSQL)に保存されます。アップロード画像などはローカルボリュームまたはS3互換ストレージです。バックアップは自分で用意する必要があります。

お気軽にご相談ください

お問い合わせ