Ox Alphaとは何か—OpenRouter無料公開の1Mコンテキスト・ステルスモデル
Ox Alphaは2026年8月、OpenRouterとOpenCodeへ無料公開された開発元非公開のステルスモデル。コンテキスト長は約100万トークンで、コーディング性能の高さが話題となり、GLM-5.3ではないかとの見方も浮上している。仕様・使い方・注意点を2026年8月時点の情報でまとめて解説する。
Ox Alphaとは
Ox Alphaは、開発元を明かさない「ステルスモデル」として2026年8月20日ごろOpenRouterとOpenCodeに無料枠で現れたAIモデルです。コンテキスト長は約104万トークンに達し、コーディング性能の高さがSNSやフォーラムで急速に話題になりました。OpenRouter上のモデルIDはstealth/ox-alphaで、運営者欄には「非公開の第三者」としか表示されません。
ステルスモデルとは、提供元がモデルの正体を明かさないまま一般ユーザーに使わせ、実運用に近い環境でのフィードバックや評価データを収集する配信形態です。OpenRouterやOpenCodeではこれまでも複数のステルスモデルが無料枠で試験的に公開されてきましたが、Ox Alphaはそのコンテキスト長とコーディング性能の高さから、公開直後から注目を集めています。
命名の由来やロゴ、開発チームの構成といった基本情報はいずれも公開されていません。分かっているのは、OpenRouterの管理画面と応答内のメタデータ、そして実際に使ったユーザーによる検証報告だけです。したがって本記事の内容も「観測された事実」と「独立研究者による推定」を分けて整理し、断定できない部分はその旨を明記します。
判明しているスペック
| 項目 | 値 |
|---|---|
| モデルID | stealth/ox-alpha |
| 開発元 | 非公開(第三者と表示) |
| コンテキスト長 | 1,048,576トークン(約1M) |
| 最大出力 | 131,072トークン |
| 入力モダリティ | テキスト・画像・動画(音声は非対応) |
| ツール/関数呼び出し | 対応 |
| 構造化JSON出力 | 対応 |
| 推論(reasoning) | 必須・effortレベルあり |
| 価格 | 無料(ステルス期間中の措置) |
音声入力を明示的に拒否する挙動は、後述する「正体推定」の材料としても取り上げられている特徴のひとつです。推論が必須になっている点や、reasoning effortを指定できる点は、GLM-5.3の仕様と重なる部分として指摘されています。
何ができるか
話題の中心はやはりコーディング性能です。長いコードベース全体をコンテキストに載せたまま修正やリファクタリングを指示できる点、ツール呼び出しに対応しているためコーディングエージェントの実行系として組み込みやすい点が評価されています。約1Mトークンのコンテキスト長は、複数ファイルにまたがる大規模なリポジトリの理解や、長い会話履歴を保持したままの継続的なペアプログラミングに向いています。
画像・動画入力に対応しているため、UIのスクリーンショットや操作を録画した動画を渡してデバッグや実装指示を行うようなマルチモーダルな使い方も検証されています。ただし音声入力には対応しておらず、この非対応挙動そのものが後述の正体推定の手がかりの一つになっています。
使い方 — 最短手順
現時点でOx Alphaを試す経路は主に2つです。いずれもモデルIDとしてstealth/ox-alphaを指定するだけで、追加のセットアップはほぼ不要です。
- OpenRouter経由: OpenRouterのアカウントでAPIキーを発行し、モデル一覧からstealth/ox-alphaを検索して選択する。既存のOpenAI互換クライアントやSDKからは、モデル名をstealth/ox-alphaに変更するだけで呼び出せる
- OpenCode経由: OpenCodeのモデル設定でプロバイダをOpenRouterに、モデルIDをstealth/ox-alphaに指定する。エージェント実行時のデフォルトモデルとして設定すれば、通常のコーディングタスクをそのままOx Alphaに任せられる
- どちらの経路でも無料枠として提供されているため課金設定は不要だが、レート制限が課される場合がある
- 推論(reasoning)が必須のモデルのため、effortレベルを指定できるクライアント・SDKを使うと挙動を調整しやすい
ベンチマークの読み方
| モデル | 非公式10タスク Pass@1 |
|---|---|
| Ox Alpha | 80% |
| Claude Fable 5 | 65% |
| GLM-5.3 | 62% |
| GPT-5.6-sol | 52% |
この数値は、あるユーザーがDeepSWE系のタスクから10問を選んで個人的に実施した非公式テストの結果であり、監査済みの公開リーダーボードではありません。タスク数が少なく、選定基準や実施環境も公開されていないため、この一件のみをもって「Ox Alphaが最強」と一般化するのは早計です。参考値として捉え、自分たちの業務に近いタスクでの再現確認をおすすめします。比較の目安としてGemini 3.7 FlashやQwen3.8-Maxのベンチマークも合わせて確認すると、位置づけをより立体的に把握できます。
「正体はGLMか」— 推定の根拠と限界
- 仕様の一致: コンテキスト長1M・最大出力131K・reasoning effort・サンプリングのデフォルト値がGLM-5.3の公開仕様と重なる
- tokenizerの一致: 独立した検証でトークナイザーの挙動がGLM系と一致すると報告されている
- 動画エンコーダの挙動: 動画入力時のトークン消費パターンがGLM-5V-Turboの既知の傾向と近いとされる
- 音声入力拒否: GLM系モデルに見られる音声非対応の挙動と一致する
- 出力スタイル: 絵文字の使用率など文体的な特徴が近いとの指摘がある
- システムプロンプト抽出報告: 「ox-alphaと名乗り、組織名は明かさない」という指示が入っており、この指示を外すと「自分はZ.aiのGLMである」と応答したという報告がある
- gzip-NCD分析: 出力を圧縮距離で既知5モデルと比較したところ、14サンプル中7サンプルがGLM-5.3に最も近く分類された(Claude Opus 5は3サンプル)
- 限界: 上記はいずれも独立研究者による非公式な検証であり、Zhipu / Z.aiからの公式コメントはない。過去にもステルス配信で試験運用された前例はあるが、今回について公式に認めた発表は出ていない
独立研究者のBen Davis氏は「99%確信している」とコメントしていますが、これはあくまで一個人の見解であり、Zhipu / Z.ai側の公式な確認ではない点には注意が必要です。

ステルスモデルを業務で使う際の注意
ステルスモデルは、提供元がプロンプトとレスポンスを評価目的で収集している可能性が一般的に指摘されています。Ox Alphaについても開発元や運用ポリシーが非公開である以上、入力したコードや文書がどのように扱われるかは確認しようがありません。社外秘のソースコードや顧客情報を含むプロンプトを投げることは避け、公開情報や検証用のサンプルコードでの試用にとどめるのが無難です。
また、無料提供・モデルの可用性・出力の再現性はいずれも保証されていません。評価期間の終了とともに提供が打ち切られたり、モデルの挙動が予告なく変わったりする可能性があるため、CI/CDパイプラインや本番のコーディングエージェントの主力モデルとして依存するのは避け、あくまで検証・比較用の選択肢の一つとして位置づけるのが現実的です。
既存モデルとの違い
| 項目 | Ox Alpha | GLM-5.3 | Gemini 3.7 Flash | Qwen3.8-Max |
|---|---|---|---|---|
| コンテキスト長 | 約1M | 約1M(公開仕様) | 約1M(1,048,576) | 約1M |
| 公開形態 | ステルス(非公開・ホスト型のみ) | オープンウェイト | クローズド・API提供 | オープンウェイト |
| 価格 | 無料(期間限定の可能性) | 無料〜有料(利用形態による) | 有料(従量課金) | オープンウェイト+API(入力$2.00/出力$6.00〜) |
コンテキスト長やreasoning周りの仕様がGLM-5.3と近いことが正体推定の根拠になっている一方、公開形態は対照的です。GLM-5.3はオープンウェイトとして重みが公開されているのに対し、Ox Alphaは現時点でホスト型のステルス提供のみで、ローカル実行や重みの検証はできません。詳細な料金やベンチマークについては、それぞれGLM-5.3の解説記事、Gemini 3.7 Flashの料金・ベンチマーク記事、Qwen3.8-Maxの解説記事を参照してください。
よくある質問
Ox Alphaの無料提供はいつまで続きますか?
公式なアナウンスはなく、正確な終了時期は不明です。OpenRouterのステルス枠は一般に「評価期間中」の無料提供という性質が強く、恒久的な無料保証ではありません。突然の提供終了や有料化・レート制限の追加もあり得るため、無料であることを前提にしたワークフローの本番組み込みは避けるのが無難です。
Ox Alphaは商用利用できますか?
開発元・利用規約が非公開のため、商用利用の可否は明言できません。OpenRouterの利用規約に沿った範囲での利用が前提になりますが、モデル自体のライセンス条件が不明である以上、業務の中核に据える判断は情報が明確になってから行うのが安全です。
Ox AlphaはGLM-5.3であると確定したのですか?
確定はしていません。独立研究者によるgzip-NCD分析やシステムプロンプト抽出、tokenizer・サンプリング設定の一致など複数の状況証拠がGLM-5.3を指していますが、いずれも非公式な検証であり、Zhipu / Z.aiからの公式コメントは出ていません。「有力な推測」として扱うのが妥当です。
Ox Alphaはローカル環境で動かせますか?
現時点ではOpenRouterおよびOpenCode経由のホスト型提供のみが確認されており、重みが公開されているわけではないためローカル実行はできません。GLM-5.3をベースにしているという見方が正しければ、GLM-5.3自体はオープンウェイトとして別途公開されているため、そちらをローカルで試す選択肢はあります。
Ox Alphaのベンチマーク結果はどこまで信頼できますか?
紹介した数値は個人の非公式テスト(DeepSWE系10タスク)によるもので、監査済みの公開リーダーボードではありません。タスク数が少なく再現性の検証もされていないため、参考値として捉え、重要な意思決定には自分の業務に近いタスクでの追試を挟むことをおすすめします。
お気軽にご相談ください
お問い合わせ