ホームページ制作会社の乗り換え手順と費用
ドメイン・サーバー・WordPress・各種アカウントの引き継ぎチェックリスト【中小企業向け】
ホームページ制作会社を乗り換える手順と費用を、中小企業の経営者向けに解説。ドメイン・サーバー・WordPress・Googleアカウントの名義確認、引き継ぎチェック表、解約の順番、移転費用の相場、メール停止や301リダイレクトなどのトラブル対策まで中立的に整理する。費用は市場相場の幅で示し、FAQも掲載。
ホームページ制作会社の乗り換えで最初に確認すべきことは、「ドメイン・サーバー・WordPress・各種アカウントが誰の名義か」である。 名義が自社であれば、乗り換えは比較的スムーズに進む。制作会社名義になっている場合は、まず名義の移し替えから始める必要がある。手順の基本は「データ取得→新環境の構築→DNS切り替え→旧契約の解約」の順であり、解約を先に通知してしまうと、サイトやメールが止まるリスクがある。本記事では、乗り換えを考える典型的な状況、名義の確認、引き継ぎチェック表、手順、費用の目安、よくあるトラブルを中立的な立場で整理する。
乗り換えを考える典型的な状況
ホームページの制作会社や管理会社を変えたいと考えるきっかけは、おおむね次のようなものである。いずれも珍しい話ではなく、事業の変化や担当者の入れ替わりに伴って自然に起こる。
- 連絡がつきにくい: 問い合わせへの返信が遅い、担当者が辞めた、連絡先が不明になった
- 保守費が高い、または内容が見えない: 毎月支払っているが、何をしてもらっているのか説明されない
- 更新が遅い: 文言や写真の差し替えに数週間かかる、小さな修正でも都度見積もりになる
- サイトが古い: スマートフォン表示に対応していない、WordPressやプラグインが長期間更新されていない
- 事業の変化: 採用、予約、EC、多言語など、現在の制作会社が得意としない機能が必要になった
乗り換えは、現在の関係を一方的に断つことと同義ではない。まず現状の課題を伝えて改善の余地を探る選択肢もあるが、それでも移る場合に備えて、早めに「何が自社の手元にあるか」を確認しておくことが重要である。
最初に確認する「誰の名義か」
ホームページは、見た目のデザインだけで成り立っているわけではない。ドメイン、サーバー、CMS(WordPressなど)、解析ツール、メールといった複数の要素が組み合わさっており、それぞれに契約者や管理者が存在する。乗り換えの難易度は、これらが誰の名義かでほぼ決まる。
ドメインの登録者
ドメインは「example.co.jp」のようなサイトの住所にあたる。重要なのは、請求先ではなく「登録者(レジストラントとも呼ぶ)」が誰になっているかである。制作会社が代行取得した場合、登録者が制作会社や担当者個人になっていることがある。この状態だと、ドメインの移管や更新の可否は制作会社の判断に左右される。確認方法として、トップレベルドメインの種類に応じたWHOIS検索や、レジストラの管理画面でのログインがある。なお、費用面を含めたドメイン・サーバーの契約の見方は、ドメイン・サーバーの費用と契約名義の見方でも整理している。
サーバーの契約者
サーバーはサイトのデータを置く場所である。契約者が制作会社で、制作会社が自社の管理するサーバーに複数の顧客のサイトを同居させている場合もある。この場合、自社のサイトだけを切り出して渡してもらう形になり、データの受け渡し方法を事前に相談する必要がある。自社名義でレンタルサーバーを契約している場合は、管理画面のIDとパスワードを自社で管理できているかが確認点になる。
WordPressなどCMSの管理者アカウント
WordPressで作られている場合、管理画面に自社の管理者権限のアカウントがあるかを確認する。制作会社が管理者アカウントを1つだけ持ち、自社は「編集者」権限でしか入れないというケースは珍しくない。管理者権限がないと、データのエクスポートやプラグインの確認ができず、引き継ぎの調査に支障が出る。WordPress特有のリスクについては、WordPress保守の放置リスクも参考になる。
解析・集客系アカウントとメール
Googleアナリティクス、Googleサーチコンソール、Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)、広告アカウントは、制作会社のGoogleアカウントで作成されていることがある。これらは過去の訪問データや検索実績が蓄積された資産であり、新しい制作会社に移る際は「閲覧のみ」ではなく、自社が所有者として管理できる状態にしておくのが望ましい。また、独自ドメインのメール(info@example.co.jp など)が、制作会社のサーバーで動いているかどうかも確認が必要である。メールが旧サーバーに依存している場合、DNSの切り替え時にメールが届かなくなる恐れがある。
引き継ぎ項目チェック表
以下は、乗り換え時に確認したい項目の一覧である。「名義・管理者が自社か」「引き継ぎのために何を依頼するか」を埋めていくと、全体像が把握しやすい。
| 項目 | 確認すること | 制作会社名義だった場合の対応 |
|---|---|---|
| ドメイン | 登録者・管理者連絡先・更新期限・どのレジストラか | 登録者変更または移管(認証コード取得)を依頼する |
| ネームサーバー・DNS | DNS設定を管理している場所、メールのMX設定の内容 | 設定内容を一覧(ゾーン情報)でもらう |
| サーバー | 契約者・プラン・契約期間・管理画面のログイン情報 | データ一式の受け渡しを依頼し、自社名義で新契約する |
| WordPress等CMS | 管理者アカウントの有無、バージョン、プラグイン一覧、テーマ | 管理者権限の付与、またはバックアップデータの提供を依頼する |
| サイトデータ | ファイル一式、データベース、画像等の元データ | バックアップを取得してもらう(可能なら複数世代) |
| Googleアナリティクス | プロパティの所有者が誰か | 自社アカウントを管理者に追加してもらう |
| サーチコンソール | 所有権の確認方法、確認済みユーザー | 自社アカウントを所有者として追加する |
| Googleビジネスプロフィール | オーナーが誰か | オーナー権限の移譲を申請する |
| 独自ドメインメール | どのサーバーで動いているか、メールアカウント一覧 | 新環境に作り直し、過去メールの移行方法を決める |
| SSL証明書 | 発行元と更新方法 | 新環境で再発行する |
| 外部サービス | 予約システム、フォーム、決済、地図、チャット等 | アカウントの契約者を確認し、自社へ変更する |
| 契約書・見積書 | 解約条項、最低契約期間、著作権の帰属 | 契約書の写しを確認し、不明点は書面で確認する |
乗り換えの手順
乗り換えの基本的な流れは、次のとおりである。要点は、旧環境を止める前に新環境を完成させ、切り替え後もしばらく旧環境を残しておく点にある。

ステップ1: 契約書を確認する
最初に、制作会社との契約書、保守契約書、見積書を確認する。見るべきは主に3点である。1つ目は解約条項で、解約の申し出が何か月前までに必要か、書面か口頭でよいか。2つ目は最低契約期間で、期間内の解約に違約金や残期間分の支払いが発生するか。3つ目は著作権の帰属で、納品物の著作権が自社にあるのか、制作会社に残るのかである。契約書が見当たらない場合は、メールのやり取りや請求書から契約内容を推測せず、制作会社に写しを依頼する。なお、契約内容の解釈や違約金の有効性は個別事情によって変わるため、判断が難しい場合は弁護士など専門家に確認することが望ましい。
ステップ2: 新しい制作会社を選び、現状を共有する
新しい制作会社に依頼する前に、チェック表で整理した現状を共有し、引き継ぎに関わる作業の見積もりを取る。複数社で比較すると、作業範囲や費用の違いがわかりやすい。システム開発側の乗り換えについては開発会社の乗り換え・引き継ぎガイドでも整理しており、ホームページ以外に業務システムを持つ場合は併せて参考になる。
ステップ3: 解約通知はデータ取得の見通しが立ってから
解約通知を出すタイミングには注意が必要である。通知後に関係がぎくしゃくし、データの提供が遅れるといったトラブルは避けたい。目安としては、契約書で定められた通知期限を逆算しつつ、データ取得の依頼と日程調整が済んでから正式に通知する形が安全である。一方で、通知期限が迫っている場合は、期限を過ぎて自動更新されることのないよう、先に解約の意思だけを書面で伝え、引き継ぎの協力は別途依頼する方法もある。
ステップ4: データを取得する
サイトのファイル一式とデータベース、画像などの元データ、WordPressの場合はテーマやプラグインの情報を取得する。制作会社に依頼するほか、管理者権限があればプラグインを使って自社でバックアップを取る方法もある。あわせて、現行サイトのURL一覧(ページ構成)を控えておく。後の301リダイレクト設定で必要になるためである。
ステップ5: 新環境を構築し、公開前に確認する
新しいサーバー上でサイトを再現し、本番と同じURLで公開する前にテスト用の環境で確認する。表示崩れ、フォームの送信、電話リンク、計測タグ、画像の表示などを確認する。このとき、メールを新環境で使う場合は、メールアカウントも新環境で作成しておく。
ステップ6: DNSを切り替える
DNSの切り替えは、サイトの表示先とメールの届き先を変える作業である。切り替えの前に、DNSのTTL(情報が更新されるまでの目安時間)を短めにしておくと、切り替えの反映が早く済む。切り替えるのは、サイトの表示先(Aレコード等)とメールの受信先(MXレコード)などであり、どれを変え、どれを残すかを事前に一覧にしておく。時間帯は、問い合わせが少ない夜間や休日を選ぶ会社も多い。
ステップ7: 動作確認し、旧環境は一定期間残してから解約する
切り替え後は、サイトの表示、フォーム、メールの送受信、Googleアナリティクスの計測、サーチコンソールの状況を確認する。問題がなければ、旧サーバーと保守契約を解約する。ただし、切り替え直後に解約すると、見落としていた問題が発生したときに元へ戻せない。1か月程度は旧環境を残しておくと安心である。サーバー契約の更新日が近い場合は、更新日と重ならないよう逆算して計画する。
費用の目安
乗り換えの費用は、サイトの規模や現状の整理状況、依頼する範囲によって大きく変わる。以下は一般的な市場相場に基づく目安であり、実際の金額は見積もりで確認する必要がある。
| 作業内容 | 一般的な費用目安 | 補足 |
|---|---|---|
| ドメイン移管(レジストラ変更) | 数千円〜1万円程度 | 移管手数料や更新料が別途かかる場合がある |
| ドメイン登録者の名義変更 | 無料〜数千円程度 | レジストラにより手続きと手数料が異なる |
| WordPressサイトの移転作業 | 3万円〜15万円程度 | ページ数、カスタマイズ量、メール移行の有無で変わる |
| 301リダイレクト設定・SEO確認 | 1万円〜10万円程度 | URLが変わるページ数による |
| メール環境の再構築 | 1万円〜5万円程度 | アカウント数と過去メールの移行有無による |
| 新サーバー・保守の月額 | 数千円〜3万円程度 | 保守の範囲によって差が大きい |
| 制作会社への引き継ぎ協力費 | 無料〜数万円程度 | 契約書に定めがない場合は有償になることもある |
移転作業は、サイトをそのまま引っ越す場合には、一般的に作り直すより費用が抑えられる。 ただし、作り直しとの比較は一概にはいえない。小規模なコーポレートサイトの新規制作は、一般的に数十万円から百数十万円程度の幅がある。現行サイトの構造が古く、移転後も修正のたびに手間がかかる状態であれば、移転と同時にデザインやCMSを刷新したほうが、長期的には合理的な場合がある。保守費の目安は、ホームページ保守の費用相場も参考になる。
| 観点 | そのまま移転する | 作り直す |
|---|---|---|
| 初期費用 | 比較的抑えやすい | 規模により大きくなる |
| 期間 | 数日〜数週間が目安 | 1〜3か月程度が目安 |
| SEOへの影響 | URLを維持すれば小さい | URLや構成が変わる場合は注意が必要 |
| 向いているケース | デザインや機能に大きな不満がない | 古い構成で改修が困難、事業内容が変わった |
| 注意点 | 古いプラグインや技術をそのまま引き継ぐ | 新規制作費に加え、移行計画が必要 |
よくあるトラブルと対処
ドメインが制作会社名義になっている
もっとも多いトラブルのひとつである。登録者が制作会社であれば、まず制作会社に名義の変更または移管への協力を依頼する。ドメインの種類によって、移管に必要な手続き(認証コードの取得、登録者情報の変更承認)や、登録から一定期間は移管できない制限などの条件が異なる。早めにレジストラへ確認するのが確実である。話し合いで解決しない場合や、連絡がつかない場合は、弁護士や、ドメインの種類に応じた紛争処理機関の利用など専門家への相談が選択肢になる。
サブスク型で、著作権やデータが制作会社に残っている
月額制で初期費用を抑えたサブスク型のホームページ制作では、契約により、サイトのデザインやデータの権利が制作会社に残り、解約するとサイトを引き継げない場合がある。この場合、新しい制作会社に移る際は、サイトを一から作り直す前提になる。写真やテキストなど、自社が用意した素材の権利は別途整理できる場合もある。契約書の記載を確認し、どの範囲まで持ち出せるかを事前に把握しておくことが重要である。詳しくはサブスク型ホームページの契約トラップで扱っている。
メールが止まる
DNSを切り替える際、メールの受信先(MXレコード)の設定を引き継ぎ忘れると、問い合わせメールが届かなくなる。しかも気づくまで時間がかかり、取引機会を逃すこともある。切り替え前にメール環境を新しく作り、切り替え後にテスト送信と受信を必ず行う。既存のメールソフトの設定変更が必要になる点も、事前に社内へ周知しておく。
SEO順位が下がる
サイトを作り直す際にURLの構成が変わると、これまで検索結果に表示されていたページが見つからなくなり、検索順位や流入が下がることがある。対策として、旧URLから新URLへ恒久的に転送する301リダイレクトを設定する。あわせて、サーチコンソールで新サイトのサイトマップを送信し、切り替え後の検索状況を継続的に確認する。URLを変えない移転であれば、この影響は小さくなる。ただし、検索順位の変動にはさまざまな要因があり、リダイレクトを設定すれば必ず順位が維持できるわけではない。
非IT担当向けのチェックリスト
専門知識がなくても、次の項目を順に確認すれば、乗り換えの準備状況を把握できる。
- ドメインの登録者が自社(または自社の代表者)になっているか確認した
- 契約書の解約条項と最低契約期間の内容を確認した
- サイトの著作権の帰属が自社にあるか契約書で確認した
- サーバーの契約者と更新日を確認した
- WordPressなどCMSの管理者アカウントを自社でも持っている
- Googleアナリティクス、サーチコンソール、ビジネスプロフィールの所有者を確認した
- 独自ドメインのメールがどこで動いているかを確認した
- 新しい制作会社に現状と希望を書面で共有した
- データのバックアップを取得してもらう日程を決めた
- 解約通知の期限と、通知する日付を決めた
- 旧環境を切り替え後も1か月ほど残す計画にした
- 社内の担当者と、問い合わせメールの受信確認をする人を決めた
よくある質問
制作会社に乗り換えを伝えたら、嫌がらせでデータを渡してもらえないことはありますか。
実務上、データ提供が遅れたり、有償と言われたりするケースはある。契約書に引き渡しの定めがあるかを確認し、依頼は書面やメールで残しておくと後の確認に役立つ。協力を得られない場合は、弁護士など専門家への相談が選択肢になる。感情的な対立を避け、依頼内容と期限を具体的に伝えることが現実的な対処である。
制作会社名義のドメインを自社名義に変えることはできますか。
多くの場合、登録者の変更手続きまたは別のレジストラへの移管で対応できる。ただし、手続きにはレジストラごとの条件があり、現在の登録者や管理者の協力が必要になることが多い。ドメインの種類によって仕組みや制限が異なるため、まずレジストラの案内を確認し、制作会社に依頼するのが一般的な流れである。
乗り換えにかかる期間はどのくらいですか。
サイトの規模や状況によるが、そのまま移転する場合は準備を含めて数週間程度が一般的な目安である。作り直す場合は1〜3か月程度かかることが多い。契約書の通知期限や、サーバーの更新日、ドメインの移管に要する日数も含めて逆算して計画する必要がある。
保守契約の途中で解約すると違約金はかかりますか。
契約書の内容による。最低契約期間が設けられている場合、期間内の解約で残期間分の請求や違約金が定められていることがある。契約書にどう書かれているかを確認し、不明な点は制作会社に書面で問い合わせる。違約金の有効性など法的な判断が必要な場合は、専門家に確認することが望ましい。
乗り換えるとSEOの順位は必ず下がりますか。
必ず下がるわけではない。URLを変えずに移転する場合は、影響は小さく抑えられる。URLが変わる場合は、301リダイレクトの設定と、切り替え後の検索状況の確認が重要である。一時的な変動が出ることもあるため、切り替え後の数週間は、サーチコンソールで状況を確認するとよい。
まとめ
制作会社の乗り換えは、「名義の確認」「契約書の確認」「新環境の完成後に切り替え、旧環境は一定期間残す」の3点を押さえれば、大きな混乱を避けやすい。ドメインやアカウントが自社名義でない場合でも、早めに確認しておけば、対処の選択肢は残る。まずはチェック表を使って、現状の名義と契約内容を棚卸しするところから始めるとよい。
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