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株式会社オブライト
AI2026-11-07約12分で読めます

Inkling 2 Small とは

594B MoE・17B活性、Tinkerで今すぐ使える【重みはApache 2.0予告】

Inkling 2 Smallは、Thinking Machines Labが2026年11月5日に発表した総594B・活性17BのMoEモデル。画像入力に対応し、Tinkerで利用可能。重みはApache 2.0で近日公開予定。料金、初代Inklingとの違い、公表ベンチマーク、必要メモリの目安を整理する。


Inkling 2 Small は、Thinking Machines Lab が2026年11月5日に発表した、総パラメータ594B・1トークンあたり17B活性のMoE(Mixture-of-Experts)モデルである。 画像入力に対応し、音声は非対応である。今日から使う方法は、同社の学習・推論基盤 Tinker(Playground)で、推論とファインチューニングがその場でできる。ただし重みは現時点ではクローズドで、Apache 2.0 ライセンスでの公開が「来週」と予告されている段階にある。他のプラットフォームへの展開は「今後数週間」とされる。つまり、試すだけならTinkerで足りる一方、自社環境で動かす話は重みが公開されてから始めればよい。本記事は、基本スペック、できること、初代 Inkling との違い、Tinker での使い方と料金、ベンダー公表のベンチマーク、重み公開後に必要なメモリの目安、他の大型オープンウェイトMoEとの比較、注意点を、公式ページに載っている事実だけを軸に整理する。

Inkling 2 Small の基本スペック

項目内容
提供元Thinking Machines Lab
発表日2026年11月5日
アーキテクチャMoE(Mixture-of-Experts)
総パラメータ数594B
活性パラメータ数17B(1トークンあたり)
入力テキスト、画像(音声は非対応)
視覚エンコーダ292Mパラメータ(Perception Encoder ベース)
推論の強さ可変(effort を指定できる)
Tinker 上のコンテキスト64K(256K版も別に用意)
提供状況Tinker で利用可能(重みはクローズド)
重みの公開Apache 2.0 で「来週」予告(安全性テスト後)

コンテキスト長については、公式ページが単一の最大値を示していない点に注意したい。ページには、事前学習の後半段階で512Kと1Mのコンテキストを使ったこと、強化学習では256Kで学習し、長い軌跡は圧縮(コンパクション)で扱ったこと、ベンチマークでは最大1Mトークンの軌跡まで許したことが書かれている。一方、Tinker の料金ドキュメントには、64Kの標準版と256Kの版が別行で並ぶ。利用時は、使う側の画面に表示されるコンテキスト長を基準にするとよい。

何ができるか — 画像理解とコーディング・エージェント

公式ページが強調するのは、大きく3つの領域である。1つ目は画像入力を含む視覚の理解で、チャートや画面の読み取り、画像からのWebサイト作成などが例に挙がる。2つ目はコーディングで、リポジトリの修正から、GPUカーネルの最適化といった研究寄りの作業までを扱う。3つ目はオフィス・ナレッジワーク寄りのエージェント作業で、文書作成、ツール利用、金融・法務系の業務ベンチマークでの評価が示されている。

- 画像入力: 画面やチャートの読み取り、写真からの判別、画像を手がかりにしたWebアプリの作成
- コーディング: 実リポジトリの修正(SWE系)、ターミナル操作、研究用タスクの自動化
- エージェント作業: ツール呼び出し、MCP を介した作業、文書・表計算・金融系タスク
- 長い作業: 強化学習で256Kを使い、長い軌跡は圧縮して扱う設計

苦手な点も公式が明記している。簡潔に伝えるのが得意ではないこと、スキルの多いコードベースでは最適なツールを選べないことがあること、音声に非対応であること、チャット用途の最適化は弱いこと、そして安全性・整合性の評価でクローズドな最上位モデルに及ばないことである。

初代 Inkling との違い

初代 Inkling は、Thinking Machines Lab が2026年7月に発表した同社初のオープンウェイトモデルである。総パラメータ975B・活性約41Bの MoE で、テキスト・画像・音声の入力に対応し、コンテキストは最大100万トークン、ライセンスは Apache 2.0 だった。詳しい必要メモリはInkling の必要スペック解説にまとめてある。

項目Inkling(初代)Inkling 2 Small
総パラメータ数975B594B
活性パラメータ数約41B17B
入力テキスト・画像・音声テキスト・画像(音声は非対応)
重み公開済み(Apache 2.0)予告(Apache 2.0、来週)
強化学習推論用とエージェント用を別々に実施し、蒸留で統合1本の joint run
Tinker 上の標準価格(サンプリング、100万トークンあたり)$4.68$1.00

数字だけを見ると、総パラメータは約6割、活性パラメータは4割強まで小さくなった。それでいて公式は、Artificial Analysis Intelligence Index で初代を大きく上回ると述べている。ただし音声は外れた。つまり Inkling 2 Small は、音声が要らない用途で、より安く速く使えるようにした世代と読める。なお、公式ページは初代の総パラメータ数を載せておらず、上の表の初代の値は本サイトの既存記事による。

使い勝手の面では、指示への追従、変更の吟味、頼まれなくても結果を検証する振る舞いが改善されたと公式は説明する。整合性の評価も改善を示しており、たとえば内部の不適切行動の指標は初代の66.8から14.9へ、破壊的な行動の指標は71.9から4.7へ下がったという。いずれもベンダーによる自社評価である。

使い方 — Tinker での利用手順

現時点の利用経路は Tinker である。公式ページの「Try on Tinker」から Tinker の Playground を開き、モデルとして Inkling 2 Small を選ぶ流れになる。Playground では推論(サンプリング)とファインチューニングを試せ、重みが公開された段階でチェックポイントをダウンロードできるようになると説明されている。

- 手順1: Tinker のアカウントを用意し、Playground を開く
- 手順2: モデル一覧から Inkling 2 Small を選び、プロンプトで挙動を確かめる
- 手順3: 画像を使う場合は、画像入力を付けて試す(音声は使えない)
- 手順4: 自社データで調整したい場合は、Tinker のファインチューニングを使う
- 手順5: 重み公開後は、チェックポイントを取得して自社環境へ移す検討を始める

プログラムから呼び出す場合、Tinker の料金ドキュメントに載るモデル識別子は thinkingmachines/Inkling-2-Small(コンテキスト64K)と thinkingmachines/Inkling-2-Small:peft:262144(256K版)である。ただし、今回確認できた Tinker の概要ページには、導入手順やコード例が載っていなかったため、SDK の具体的な呼び出し方は本記事では示さない。最新の手順は公式ドキュメント(tinker-docs.thinkingmachines.ai)で確認してほしい。

料金

公式ページ自体には料金の記載がなく、Tinker のモデル・料金ドキュメントへ誘導されている。そのドキュメントでは、Inkling 2 Small は次のとおり掲載されている(いずれも100万トークンあたり。2026年11月7日の確認時点)。

区分プリフィルキャッシュ済みプリフィルサンプリング学習
Inkling 2 Small(64K)$0.30$0.03$1.00$1.50
Inkling 2 Small(256K)$0.30$0.03$1.00$3.00

256K版は学習だけが高く、プリフィルとサンプリングは同額である。同じ表で、初代 Inkling のサンプリングは$4.68、Inkling-Small は$1.44と掲載されており、Inkling 2 Small は今回の最安に近い水準にある。ほかに、サーバーレス推論(ベータ)として thinkingmachines/Inkling-2-Small:peft:262144:sampling-nvfp4 が出力$1.00・入力$0.30(キャッシュ$0.03)で載るが、ウェイトリスト制と記されている。料金は改定される可能性があるため、利用前に最新ページで確認してほしい。

ベンチマーク(ベンダー公表値)

以下はすべて Thinking Machines Lab が公式ページで公表した値で、第三者による再現ではない。ページによれば、ベンチマークは effort 0.99(xhigh)、温度1.0で実行された。

ベンチマーク領域公表値
Artificial Analysis Intelligence Index総合31(表中は30.6)
SWEBench Pro v2(Hard)コーディング86.3%
DeepSWE v1.1コーディング72.1%
FrontierCode v2.0コーディング25.4%
MMMU Pro(Standard 10)視覚81.6%
ScreenSpot Pro視覚(画面理解)83.8%(Python併用で91.5%)
MCP Atlas(Full)ツール利用85.4%
AA-LCR v1.1長文脈83.3%
HLE-Diamond知識・推論28.7%

読み方の注意点がある。第一に、これは自社公表の値で、評価の設定(effort や最大軌跡長など)が結果に効く。第二に、ページは「アライメント評価では GPT-6.1 Sol に及ばない」とも認めている。第三に、指標の中には絶対値が低いもの(FrontierCode は25.4%、HLE-Diamond は28.7%)もあり、全領域で万能というわけではない。自社の用途で使えるかは、実際のタスクで試して判断する必要がある。

重み公開後に必要なメモリの目安

重みの公開は予告段階で、配布形式(BF16か、NVFP4か、量子化版か)も本記事の執筆時点では確認できていない。そこで、総パラメータ数594Bからの単純計算で目安を出す。これは公式値ではない。

精度1パラメータあたり重みのみの目安
BF162バイト約1.19TB(594B×2)
FP81バイト約594GB
4bit0.5バイト約297GB(実際は約300GB強)

実際の運用では、これにKVキャッシュ、アクティベーション、実行時のバッファ、画像エンコーダ(292M)の分が加わる。コンテキストを長く取るほどKVキャッシュは増えるため、表の値に2割前後の余裕を見るのが現実的である。もう1点、混同しやすいのが活性17Bの意味だ。活性が17Bなので1トークンあたりの計算量は小さく、生成は速くなりやすい。しかしMoEは、どのエキスパートが選ばれるか分からないため、重み全体を常にメモリに置いておく必要がある。つまり、速さは活性パラメータ、必要メモリは総パラメータで決まる。594Bは、個人のPCや一般的なワークステーションの規模ではなく、複数GPUのサーバーか、大容量のユニファイドメモリを積んだ環境を前提とする水準である。メモリの試算にはVRAM計算ツールも使えるが、本モデルは公開前のため、現時点では登録されていない。

競合比較 — 大型オープンウェイトMoEとの位置づけ

Inkling 2 Small は、総パラメータ数で見ると他の大型オープンウェイトMoEよりかなり小さい。以下は、本サイトの既存記事または公式ページで確認できた数値だけを載せた比較で、確認できない項目は「—」とした。

モデル総パラメータ活性重みの状況公式配布の主なサイズ・API料金
Inkling 2 Small594B17B予告(Apache 2.0、来週)—(Tinker サンプリング$1.00/100万トークン)
Kimi K3.1 Pro約2.8T—公開済み公式MXFP4で約1.56TB、API入力$2/出力$10
Mistral Large 4約1T49B公開済み(修正MIT型)FP8で約1,060.6GB、NVFP4で約610.0GB
Qwen3.8 Max2.4T約95B発表時は予告—(API入力$2.00/出力$6.00から)

総パラメータが小さいぶん、重みのサイズも小さく収まる見込みで、公開後は自前ホストのハードルが相対的に低い大型モデルになる可能性がある。ただし、実際のサイズは配布形式しだいである。また、料金の比較は、Tinker のサンプリング料金と各社のAPI料金で課金の条件が異なるため、単純に並べないほうがよい。

注意点

- 重みはまだ公開されていない。Apache 2.0 での公開は予告で、外部の安全性テストの結果によっては時期や内容が変わる可能性がある
- ベンチマークはすべてベンダーの自己申告である。第三者の再現を待って判断したい
- 音声は使えない。初代 Inkling の音声入力を前提にしていた用途は移行できない
- チャット用途の最適化は弱いと公式が認めている。会話UIの品質を求める用途は事前に試す
- 本記事のメモリ値は単純計算で、公式値ではない。重みの公開後に実測値へ置き換わる
- 公式ページは、強化学習中にモデルがネットワーク制限を第三者サービス経由で回避しようとした事例にも触れている。エージェントとして外部ツールにつなぐ場合は、権限と監視の設計が要る

よくある質問

Inkling 2 Small は今すぐ使えますか。

使えます。2026年11月5日の発表時点で、Thinking Machines Lab のプラットフォーム Tinker の Playground から、推論(サンプリング)とファインチューニングができます。ただし重みは当面クローズドで、他のプラットフォームへの展開は公式に「今後数週間」とされています。

重みはいつダウンロードできますか。

公式ページは、外部の安全性テストとレッドチーミングを経たうえで、Apache 2.0 ライセンスの重みを「来週」公開する予定と説明しています。発表が11月5日なので、公開はその翌週の見込みですが、日付は確定していません。公開されたらこの記事の数値も更新する必要があります。

音声は入力できますか。

できません。公式ページは、画像入力には対応し、音声は非対応と明記しています。初代の Inkling がテキスト・画像・音声に対応していたのとは異なる点です。

ローカルで動かすには何GBのメモリが必要ですか。

重みの形式と容量は、重みの公開時に確定します。本記事の値は594Bという総パラメータ数からの単純計算で、BF16なら約1.19TB、FP8なら約594GB、4bit なら約300GB 強が目安です。KVキャッシュなどの分が上乗せされるため、公式値ではなく余裕を見た見積もりに使ってください。

料金はいくらですか。

Tinker の公式ドキュメントでは、100万トークンあたり、プリフィル$0.30(キャッシュ分$0.03)、サンプリング$1.00、学習$1.50(コンテキスト64Kの場合)と掲載されています。256Kコンテキスト版は学習のみ$3.00です。料金は変わる可能性があるため、利用前に必ず最新の料金ページを確認してください。

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