Paperclipとは — OpenClawやClaude Codeなど複数AIエージェントを「組織」として管理するOS
Sアプリの使い方
Paperclipは、OpenClawやClaude Code、Codex、Cursorなど複数のAIエージェントを組織図・予算・承認ゲートつきで運用できる、MITライセンスの無料セルフホスト型アプリだ。GitHub週間トレンド2位(今週+7,364スター)を獲得した本ツールの主要機能・インストール・使い方・既存ツールとの違いを、公式README・リポジトリ情報のみで解説する。
Paperclipは、OpenClawやClaude Code、Codex、Cursorなど複数のAIエージェントを一つの「会社」のように組織化し、目標設定から予算管理、人間による承認ゲートまでを一括で扱える、MITライセンスの無料セルフホスト型アプリだ。Node.jsサーバーとReact製UIで構成され、外見はタスク管理ツールだが、内側には組織図・予算・ガバナンス・目標整合の仕組みを備えている。
開発元はpaperclipai(GitHub組織、2026年3月2日設立)。GitHub本稿執筆時点(2026年9月28日)でスター数は約91,765・フォーク15,816、週間トレンドでは2位(今週だけで+7,364スター、3位はメモリ層ツールのHindsight)に入っている急成長のプロジェクトだ。最新リリースはv2026.916.1(2026-09-21公開)。本稿では公式README・GitHubリポジトリの情報だけをもとに、主要機能・インストール方法・基本的な使い方、そして既存ツールとの違いを整理する。
Paperclipとは — 「OpenClawが社員なら、Paperclipは会社」
READMEはPaperclipの立ち位置を「If OpenClaw is an employee, Paperclip is the company(OpenClawが従業員なら、Paperclipは会社そのものだ)」と表現している。単一のエージェントを賢くするツールではなく、複数のエージェント(プロバイダやランタイムを問わない)を一つの組織として運用するための制御プレーンという位置づけだ。基本的な使い方は3ステップで説明されている。
| ステップ | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 01 目標を定義する | 事業目標をテキストで宣言する | 「AIノートアプリを月間売上1000万円にする」 |
| 02 チームを雇う | CEO・CTO・エンジニア・デザイナー・マーケターなど、任意のボット・プロバイダを役職として配置する | Claude Code、Codex、Cursor、OpenClaw、Bash/HTTP経由のボットなど |
| 03 承認して実行する | 戦略をレビューし、予算を設定し、ダッシュボードから監視する | Goを押すと組織が動き出す |

何ができるか — 4つの柱
READMEは「エージェント組織が実際に成果を出すには、タスク・組織・トレーニング・インフラの4つが機能する必要がある」とし、Paperclipはこの4本柱を軸に設計されていると説明する。
| 柱 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| Agentic Task Manager(意図を宣言し、エージェントが働き、人が検証する) | 全員・日常利用 | タスク/承認・レビューゲート/プロアクティブなエージェント同僚/監査可能なルーチン・ワークフロー/差分・スクリーンショット・テストからの検証 |
| Org Chart for Agents(人とエージェントの役割・権限・境界) | マネージャー | 人とエージェント混在の組織図/責任・委任・専門化/誰が何をできるかのガバナンス/スコープ付きシークレットと会社の境界 |
| Agent Employee Training(AI従業員の設計・訓練・評価) | イネーブラー | Skill Studioと組織横断スキル/評価と保存されたテスト実行/能動学習ループと品質指標/エージェントの人事評価 |
| Agentic OS(実際に動作を支えるインフラ) | IT・プラットフォーム | プロバイダ・エージェント横断のランタイム/サンドボックス・連携・MCPサーバー/SSO・GRC・RBAC・コスト管理/データプライバシーと内部トレース収集 |
主な機能
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| Bring Your Own Agent | どのエージェント・ランタイムでも1つの組織図に統合。ハートビートを受け取れれば「雇用」できる |
| Goal Alignment | すべてのタスクが会社のミッションまで遡って紐づき、エージェントは「何を」「なぜ」やるのかを把握する |
| Heartbeats | エージェントはスケジュールで起床し、作業を確認して行動する。委任は組織図の上下に流れる |
| Cost Control | エージェントごとの月次予算。上限に達すると停止し、暴走コストを防ぐ |
| Multi-Organization | 1つのデプロイで複数の組織を運用でき、データは完全に分離される |
| Ticket System | すべての会話がトレースされ、意思決定が記録される。全ツール呼び出しと不変の監査ログを保持 |
| Governance | 採用の承認、戦略の上書き、エージェントの一時停止・終了をいつでも人間が行える |
| Org Chart | 階層・役職・報告ラインを持つ。エージェントにも上司・肩書き・職務記述書がある |
| Mobile Ready | どこからでも自律事業を監視・管理できる |
READMEが特に強調しているのが「Atomic execution(タスクのチェックアウトと予算執行はアトミックで、二重作業や暴走支出が起きない)」「Persistent agent state(ハートビートをまたいでタスクの文脈を保持し、毎回ゼロから再開しない)」「Governance with rollback(承認ゲートが強制され、設定変更は履歴化され、問題のある変更は安全に巻き戻せる)」の3点だ。
インストールと料金
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発元 | paperclipai(GitHub組織、2026-03-02設立) |
| ライセンス・料金 | MITライセンスのオープンソース・無料。Paperclipアカウント不要でセルフホスト可能 |
| 実装 | Node.jsサーバー+React製UI |
| 動作要件 | Node.js 24.11以上、pnpm 9.15以上(手動セットアップ時) |
| データベース | 埋め込みPostgreSQLを自動作成(別途セットアップ不要)。外部プロバイダのオブジェクトストレージにも対応 |
| 最新版 | v2026.916.1(2026-09-21)※チャット送信ボタンの不具合修正を含むパッチ |
| ホームページ | paperclip.ing(ドキュメントはdocs.paperclip.ing) |
インストールは公式インストーラーが用意されている。チェックサム検証つきのシェルスクリプトを取得して実行する方法が推奨されている。
curl -fsSLO https://paperclip.ing/install.sh
curl -fsSLO https://paperclip.ing/install.sh.sha256
sha256sum -c install.sh.sha256 # macOSはshasum -a 256 -c install.sh.sha256
bash install.shインストーラーはNode.js 24.11以上を確認し、~/.paperclip/cli配下に管理版のPaperclip CLIを導入して対話式オンボーディングを開始する。対応するLinux/macOSではバックグラウンドサービスとしても導入できる。何も永続インストールせずに試したい場合はnpx経由のオンボードコマンドが使える。
npx --registry https://registry.npmjs.org paperclipai onboard --yesCEOエージェントが最初から初期化された隔離環境をその場で試したい場合はtest-driveコマンドが用意されている。フォアグラウンドで動作し、サービスの導入や最初のタスク作成は行わず、セットアップが成功して初めてブラウザが開く。
ANTHROPIC_API_KEY=... npx paperclipai test-drive
OPENAI_API_KEY=... npx paperclipai test-drive --harness codex
OPENROUTER_API_KEY=... npx paperclipai test-drive \
--harness opencode \
--model openrouter/anthropic/claude-sonnet-4.5手動でセットアップする場合はリポジトリをクローンしてpnpm install && pnpm devを実行する。これでhttp://localhost:3100にAPIサーバーが立ち上がり、埋め込みPostgreSQLデータベースが自動生成される。
git clone https://github.com/paperclipai/paperclip.git
cd paperclip
pnpm install
pnpm dev使い方 — 最短手順
- 目標を宣言する: 「何を達成したいか」をテキストで書く
- エージェントを雇う: CEO・CTO・エンジニアなどの役職にClaude Code・Codex・Cursor・OpenClawなど好きなエージェントを割り当てる(Bring Your Own Agent)
- 戦略を承認する: CEOエージェントが立てた戦略をレビューし、予算上限を設定する
- Goを押す: ハートビートに従ってエージェントが起床し、チケット化されたタスクを実行する
- ダッシュボード・モバイルで監視する: 差分・スクリーンショット・テスト結果を確認し、必要なら一時停止や承認を行う
定期的な業務(カスタマーサポート・SNS投稿・レポート作成など)は「Routines」でcron・Webhook・APIトリガーによる自動起票が可能で、毎回手動でキックオフする必要がない。エージェントを拡張したい場合は「Plugins」でツール公開やUI拡張ができ、フォークせずにPaperclipを拡張できる。関連するエージェント基盤の考え方はClaude Code完全ガイド2026やMCP公式ロードマップ解説も参照してほしい。
既存ツールとの違い
| Paperclip | Orca | CrewAI | OpenClaw | |
|---|---|---|---|---|
| 位置づけ | 複数エージェントの「会社」を運営する制御プレーン | 1リポジトリ内でエージェントをworktreeごとに並列実行するADE | Pythonのマルチエージェント・オーケストレーションのフレームワーク | 自律型AIエージェント本体(従業員に相当) |
| 単位 | 組織(複数プロジェクト・複数エージェントの束) | 1つのコードリポジトリ内のタスク | エージェント間のクルー(役割ベースのワークフロー) | 1体のエージェント |
| 主眼 | 組織図・予算・承認ゲート・ガバナンス | worktree分離・差分レビュー・ブラウザ確認 | エージェント同士の協調ロジックをコードで定義 | 個々のタスク実行・会話 |
| ライセンス・料金 | MIT・無料(セルフホスト) | MIT・無料(デスクトップアプリ) | MIT・無料(Pythonライブラリ、有料のEnterprise版あり) | MIT(Copyright OpenClaw Foundation)・本体は無料。ローカル実行で、コストは接続したLLMプロバイダのAPI利用料次第 |
| 向く使い方 | 多数のエージェントを人が束ねて事業運営する | 1つのコーディングタスクを複数エージェントで並列に試す | コードでエージェントの役割・フローを定義したい開発者 | 1体のエージェントに業務を任せたい個人・小規模チーム |
OrcaはClaude CodeやCodexなど複数のコーディングエージェントをgit worktreeで並列実行する開発環境(ADE)であり、Paperclipのようなハートビート・予算・承認ゲートは持たない。ソフトウェアタスクの並列レビューに特化したOrcaについてはOrca徹底解説を参照してほしい。CrewAIはコードでエージェント同士の役割分担・協調フローを定義するPythonフレームワークで、Paperclipのように人間の承認ゲートや組織図UIを標準搭載しているわけではない。OpenClawは自律型AIエージェントそのものであり、READMEの比喩を借りれば「Paperclipに雇われる従業員」に近い存在だ。OpenClawの基本仕様はOpenClawとは?で解説している。
導入時の注意点・向いている人
- Paperclip自体はエージェントを実行しない。Claude Code・Codex・OpenClawなど各エージェントの契約・APIキー・認証は別途自分で用意する必要がある(Bring your own agent)
- READMEは「単一エージェントしか使わないなら不要。20体使っているなら間違いなく必要」と位置づけており、少数のエージェントで足りる個人利用にはオーバースペックになり得る
- ワークフロービルダーやプロンプトマネージャー、コードレビューツールではないと明言されており、ドラッグ&ドロップのパイプライン構築やレビュープロセスそのものは範囲外
- 組織・エージェント・スキル・ルーティン・チケットをまとめてエクスポート/インポートできる「Company Portability」があるが、シークレットのスクラビングと衝突処理の挙動は導入前に確認しておきたい
- 予算超過時の自動停止やアトミックなチェックアウトなど暴走コスト対策は備わっているが、最終的な請求額は各エージェントプロバイダのコンソールで必ず確認する
複数のAIエージェントを既に併用していて「どれが何をしているか把握できない」「コストが読めない」「承認プロセスを整えたい」という段階にある個人・チームに向いたツールだ。逆に、単一のコーディングエージェントを使うだけであれば、前述のOrcaのような軽量なツールの方が適している場合もある。
よくある質問
Paperclipは無料で使えますか。
本体はMITライセンスのオープンソースで、Paperclipアカウントも不要でセルフホストできる。ただしClaude CodeやCodexなど、実際に雇うエージェント側の利用契約・APIキーは別途自分で用意する必要がある。
どんなエージェントと組み合わせられますか。
公式READMEはOpenClaw・Claude Code・Codex・Cursorに加え、Bash経由やHTTP/Webhookで動くボットまで挙げており、「ハートビートを受け取れるものなら何でも雇える」としている。
データベースは別途用意する必要がありますか。
不要だ。pnpm devで起動すると埋め込みPostgreSQLデータベースが自動的に作成される。
個人利用でも導入する価値はありますか。
READMEは「単一エージェントしか使わないなら、おそらく不要」としている一方、「20個のClaude Codeターミナルを開いて何が起きているか分からなくなっている」ような状況には向くと説明している。エージェントの数と管理の煩雑さで判断するとよい。
暴走コストは防げますか。
エージェントごとに月次予算を設定でき、上限に達すると自動的に停止する仕組みがある。タスクのチェックアウトと予算執行はアトミックに扱われ、二重実行による過剰請求を防ぐ設計だとREADMEは説明している。
まとめ
Paperclipは、個々のエージェントを賢くするのではなく、複数のエージェントを組織として運用するための制御プレーンだ。目標設定から委任、実行、予算管理、人間の承認ゲートまでを1つのダッシュボードで完結させ、20個以上のエージェントセッションを手作業で管理する煩雑さを解消しようとしている。
一方で、エージェント自体の契約・認証はユーザー側の責任であり、単一エージェントの利用であればオーバースペックになりうる。まずはtest-driveコマンドで小さな組織を試作し、必要に応じて予算・承認ゲートのルールを整えながら本格導入を検討するのが無理のない進め方になりそうだ。
参考リンク(一次ソース)
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