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株式会社オブライト
Network & Infrastructure2026-11-06約17分で読めます

OpenSSH CVE-2026-123158(sshole)ほか2件 — 11月6日の脆弱性まとめ(悪用確認0件)

OpenSSH の CVE-2026-123158(sshole)は musl+PAMなしの Alpine 等が対象。今日は sshd の更新と再起動、またはパスワード認証の無効化を。Rails Active Storage(CVSS 9.8)と Barracuda ESG の更新、チェックリストも整理。


最優先は OpenSSH の CVE-2026-123158(通称 sshole)である。影響を受けるのは、musl libc を使い、PAM を使わない構成の Linux 上の sshd、つまり Alpine Linux、Alpine ベースのコンテナやクラウドイメージ、OpenWrt などである。 該当する環境では、今日のうちに OpenSSH を修正版へ更新して sshd を再起動するか、更新できない間はパスワード認証を無効にする。Debian、Ubuntu、RHEL など glibc を使う一般的なサーバーは対象外である。ほかに、Ruby on Rails の Active Storage(GHSA-f3w6-w445-fwh9、CVSS 9.8)と、Barracuda Email Security Gateway(CVE-2026-116606 / CVE-2026-111560)にも更新が出ている。

11月6日(JST)に確認した CVE レコード、OpenSSH のリリースノート、Alpine Linux の告知、sshhole.com、GitHub の Rails セキュリティアドバイザリ、Barracuda の公式アドバイザリ、各報道に基づく。明記のない点は「公表されていない」とする。本日の3件はいずれも、実環境での悪用は報告されていない。CISA の KEV(悪用が確認された脆弱性の一覧)にも、11月5日から6日にかけて新規の追加はなかった。ただし OpenSSH は実証コードが公開されているため、悪用が始まる前に対処しておく価値がある。

今日の脆弱性一覧

製品CVE深刻度(CVSS)悪用状況対処(修正版)
OpenSSH(musl libc・PAM なしの Linux。Alpine など)CVE-2026-123158(sshole)8.1 High(CVSS 3.1。CNA は MITRE)実環境での悪用報告なし。CISA KEV 未掲載。実証コードは GitHub で公開(CISA ADP の評価は Exploitation=PoC)OpenSSH 10.6p2。Alpine は apk upgrade のあと sshd を再起動
Ruby on Rails Active StorageGHSA-f3w6-w445-fwh9(CVE 未採番)9.8 Critical(CVSS 3.0)実環境での悪用は報告されていないRails 8.1.4.1 / 8.0.5.2
Barracuda Email Security GatewayCVE-2026-1166069.3(Barracuda の評価は High)公式・報道とも悪用の報告なしパッチ BNSF-40425(9.4.017 以降)/ BNSF-40430(9.4.017 未満)
Barracuda 各製品(ESG ほか)CVE-2026-1115608.6 High(管理者権限が必要)公式・報道とも悪用の報告なし製品別のパッチ ID(本文参照)

1. OpenSSH CVE-2026-123158(sshole)— 長いパスワードで、パスワードのないアカウントに入られ得る

CVE レコード(2026年11月5日公開)によると、musl libc を使い PAM を使わない Linux 上の OpenSSH 10.6p2 より前の版では、sshd にパスワード認証を回避される欠陥がある。アカウントの設定によっては、256 文字から 1024 文字の長さのパスワードなら何でも受け入れられてしまう。深刻度は CVSS 3.1 で 8.1(High、評価者は MITRE)。CISA の評価(SSVC)は、実証コードあり(Exploitation=PoC)、自動化はされていない(Automatable=No)である。報告者は Özgün Kültekin(Wakefield)。

平易に言うと、パスワードでログインできないはずのアカウントに、長い適当な文字列を入れるだけでログインできてしまう、ということである。仕組みはこうである。musl の crypt()(パスワードを計算してハッシュにする関数)は、失敗すると "*" という文字列を返す。SHA-256 や SHA-512 の crypt は、256 バイトを超えるパスワードで失敗し、"*" を返す。一方、パスワードでのログインを許していない鍵専用のアカウントは、パスワード欄に "*" が保存されている。計算結果の "*" と保存された "*" が一致し、認証を通ってしまう。OpenSSH チームは、根本原因は sshd の外(musl の crypt())にあるが、sshd 側でも回避できると説明している。

影響を受けるのは、次の条件がすべて重なったときである(Alpine の告知による)。

- openssh-server(PAM なしのビルド)を使っている、または openssh-server-pam を使い UsePAM no にしている
- PasswordAuthentication が有効(OpenSSH の既定は有効)
- パスワード欄が "*" のアカウントが1つ以上ある(Alpine のベースイメージの root、鍵専用のユーザー、ディレクトリ連携のユーザー、tiny-cloud イメージの alpine ユーザーなど)
- $5$ か $6$ のパスワードハッシュを持つローカルアカウントが1つ以上ある

影響しないのは、glibc を使う Debian、Ubuntu、RHEL など、PAM を使う構成(UsePAM yes)、PasswordAuthentication no にしている環境、ロック済みのアカウント("!")、Dropbear、OpenBSD、そして sshd を動かしていないコンテナである。musl を使う他の環境として、sshhole.com は OpenWrt、Buildroot、Yocto、Alpine ベースの Docker イメージを挙げている。

root は安全かというと、OpenSSH の既定では root のパスワードログインは禁止(PermitRootLogin prohibit-password)されている。ただし、Alpine の AWS や Azure などのクラウドイメージ(tiny-cloud。3.18.11 から 3.24.3 の qcow2、VHD、AMI)の alpine ユーザーは、パスワードなしで doas(管理者権限の実行)が使える。実質、管理者である。また、ほかのユーザーに $6$ のハッシュができた時点で、そのユーザーが攻撃の対象になる。

修正版と回避策

修正版は OpenSSH 10.6p2(11月5日リリース)である。Alpine の修正版パッケージ(openssh)は次のとおりである。ポイントリリースの 3.21.10、3.22.8、3.23.8、3.24.4 にも修正が含まれている。

Alpine のブランチ修正版の openssh パッケージ
edge10.6_p2-r0
3.2410.3_p1-r2
3.2310.2_p1-r1
3.2210.0_p1-r11
3.219.9_p2-r1
3.209.7_p1-r6
3.199.6_p1-r3
3.189.3_p2-r4
3.179.1_p1-r7
3.169.0_p1-r6
# 修正版へ更新し、sshd を再起動する(更新だけでは動作中の sshd は置き換わらない)
apk upgrade -U -a
rc-service sshd restart

更新だけでは、すでに動いている sshd は置き換わらない。必ず sshd を再起動する。すぐに更新できない場合の回避策は、パスワード認証を無効にすることである。変更の前に、鍵でログインできることを別のセッションで確認し、今つながっているセッションは閉じないでおく。

# 回避策: パスワード認証を無効にする(事前に鍵ログインが通ることを確認し、今のセッションは閉じない)
mkdir -p /etc/ssh/sshd_config.d
echo 'PasswordAuthentication no' > /etc/ssh/sshd_config.d/00-no-passwords.conf
sshd -t && rc-service sshd restart
sshd -T | grep -i passwordauthentication

確認方法と、侵害の確認

自分の環境が対象かは、次のコマンドで確認できる(権限が必要なものは root で実行する)。musl と表示され、passwordauthentication が yes、usepam が no で、"*" のアカウントと $5$ / $6$ のアカウントの両方がある場合は、条件に当てはまる。

# 版とビルドの確認(Alpine)
ssh -V
apk info -v openssh

# musl libc を使っているか(musl と出れば対象環境)
ldd $(which sshd) | grep -i musl

# 有効な設定の確認(root で実行。passwordauthentication yes かつ usepam no が危険な組み合わせ)
sshd -T | grep -iE 'passwordauthentication|usepam'

# パスワード欄が "*" のアカウント(root で実行)
awk -F: '$2=="*"{print $1}' /etc/shadow

# $5$ か $6$ のハッシュを持つアカウント(root で実行)
grep -E '^[^:]+:\$[56]\$' /etc/shadow | cut -d: -f1

すでに侵入されていないかは、ログで確認する。パスワードのないアカウント(alpine、root、鍵専用のユーザー)への "Accepted password for" の記録があれば不審である。あわせて、doas の利用、見覚えのない新規ユーザー、authorized_keys の変更も見る。否定できない場合は、侵害されたものとして対応する。

# 侵害の確認: パスワードのないアカウントへのパスワードログイン成功を探す
grep 'Accepted password for' /var/log/messages

補足として、この件は11月5日に Hacker News で首位になり、2,700 ポイントを超えた。話題性は高いが、公式の深刻度は 8.1 であり、条件が重なった環境に限られる点は冷静に押さえておく。公式: CVE レコード、OpenSSH 10.6p2 リリースノート、Alpine Linux の告知、sshhole.com

2. Ruby on Rails Active Storage GHSA-f3w6-w445-fwh9 — 画像の解析で、任意のファイルを書き込み・読み出され得る

Rails のファイル添付機能である Active Storage の、画像解析の処理に関する欠陥である。GitHub のセキュリティアドバイザリ(rails/rails、11月4日公開)の題名は「Possible arbitrary file write and read in Active Storage image analysis」で、CVE は採番されていない。深刻度は CVSS 3.0 で 9.8(Critical)である。

仕組みは次のとおりである。画像処理の ImageMagick は、ファイル名ではなく中身を見て、どのコーダー(変換処理)で扱うかを決める。Active Storage は、アップロードされたファイルがどのコーダーに届くかを制限しておらず、ファイルを添付した時点で解析(analyzer)が走る。その結果、任意のファイルの書き込みが可能になり、Disk サービスを使っている場合は読み出しも可能になる。読み出された場合は、secret_key_base や認証情報が漏れるおそれがある。

- 影響を受けるバージョン: activestorage 8.1 以上 8.1.4.1 未満、および 8.0.5.2 未満
- 修正版: 8.1.4.1 / 8.0.5.2
- 悪用: 実環境での悪用は報告されていない。アドバイザリによると、非公開で報告された攻撃の連鎖が1つあり、他の連鎖もあり得る。報道(Xalgorix)によれば、報告者は GMO Flatt Security の RyotaK である
- 影響条件(報道ベースの整理): variant_processor が :mini_magick である(load_defaults 6.1 以前の既定)、ImageMagick のポリシーが該当コーダーを禁止していない(Debian と Ubuntu の既定は禁止していない)、信頼できない利用者からのアップロードを受け付けている。報道によれば、mini_magick を使うアプリでは mini_magick 5.1 以上も条件になる
- Rails 8.0 のセキュリティ修正は11月7日までと、報道は伝えている

公式の回避策は、Rails に同梱の activestorage/lib/active_storage/image_magick/policy.xml のルールを、システムの ImageMagick のポリシーへコピーすることである。最低でも、MSL コーダー、Ghostscript コーダー、gs デリゲートを拒否する。Disk サービスで添付ファイルを保存していた場合は、secret_key_base など、プロセスが読める秘密情報を入れ替える。確認は次のとおり。

# activestorage の版を確認
bundle exec gem list activestorage
grep -n 'activestorage ' Gemfile.lock

# 読み込まれている ImageMagick のポリシーを確認(報道ベースの確認方法)
bin/rails runner 'puts MiniMagick.identify { |i| i.list "policy" }'

平易に言うと、利用者がアップロードした画像を「ただ受け取る」だけの処理が、サーバー上のファイルを読み書きされる入口になり得る、という話である。Rails の利用が分からない場合は、開発を委託した会社に「Ruby on Rails で作っているか、ファイルのアップロードを受け付けているか」を尋ねるのが近道である。公式: GitHub アドバイザリ GHSA-f3w6-w445-fwh9、補足(報道): Xalgorix の週次まとめ

3. Barracuda Email Security Gateway CVE-2026-116606 / CVE-2026-111560 — 2つの欠陥の連鎖に注意

Barracuda の公式アドバイザリ(11月2日公開。11月5日に CVE-2026-116606 の認証要否の欄を更新)に載った2件である。CVE-2026-116606 は認証前の認可バイパスで、Barracuda の評価は High、CVSS は 9.3、対象は Email Security Gateway(ESG)のみである。認証は不要だが、管理画面に到達できることが前提になる。報道によれば、9.4.0.030 より前の ESG 全モデルが対象で、設定のインポート機能に細工したバックアップを復元させられる(CWE-288)。

CVE-2026-111560 はコマンドインジェクションで、Barracuda の評価は High、CVSS は 8.6、管理者権限が必要である。対象は ESG、Load Balancer ADC、Message Archiver、WAF Control Center、Web Application Firewall、Web Security Gateway である。BleepingComputer の報道によれば、この2つを連鎖させると、認証なしで root として任意のコマンドを実行され得る。

- パッチ ID: ESG は BNSF-40425(9.4.017 以降)/ BNSF-40430(9.4.017 未満)、Load Balancer ADC は BNADC-16586、Message Archiver は BNMA-32468、WAF Control Center は BNWF-60060、Web Application Firewall は BNADC-16586、Web Security Gateway は BNYF-24789
- 悪用: 公式・報道とも、実環境での悪用は報告していない。背景として、2023年には ESG の CVE-2023-2868 が悪用された経緯がある
- 対処: 最新のファームウェアへ更新して版を確認する。各パッチ ID が自動で適用されていなければ手動で適用する。管理画面を信頼できる内部ネットワークに限る。自動パッチを有効にする

平易に言うと、メールの入口に置く専用機器が、管理画面に届く人なら乗っ取れる状態になり得る、ということである。管理画面をインターネットに出していなければリスクは下がるが、パッチは適用しておく。公式: Barracuda アドバイザリ、BleepingComputer

非IT担当者向け: 今日やることチェックリスト

- 社内のサーバーやクラウドで Alpine Linux、Alpine ベースのコンテナ、OpenWrt のルーターを使っているか、担当者や導入業者に聞く。Debian、Ubuntu、RHEL などだけなら、OpenSSH の件は対象外
- 該当すれば、OpenSSH を修正版へ更新して sshd を再起動する。更新できない間は、鍵ログインを確認したうえでパスワード認証を無効にする
- 対象だった場合は、ログに "Accepted password for" の不審な記録、見覚えのないユーザーや authorized_keys の変更がないかを確認する
- 自社のウェブサービスやシステムが Ruby on Rails で作られていて、ファイルのアップロードを受け付けているかを、開発会社に聞く。該当すれば Rails 8.1.4.1 / 8.0.5.2 以降への更新を依頼する
- Barracuda の Email Security Gateway などを使っていれば、最新のファームウェアとパッチが適用されているか、管理画面が社内の限られた端末からしか開けないかを確認する
- 確認と更新の結果(日付、版、実施者)を一枚のメモに残し、次の棚卸しに使う

関連記事

出典

よくある質問

うちの Ubuntu サーバーは OpenSSH の件の対象ですか。

通常は対象外です。Ubuntu、Debian、RHEL などは glibc を使い、PAM を使う構成(UsePAM yes)が一般的で、今回の欠陥は musl libc を使い PAM を使わない sshd で起きます。念のため ldd $(which sshd) | grep -i musl で musl と出ないことを確認すると確実です。

Docker コンテナは対象ですか。

Alpine ベースのイメージで sshd を動かしている場合は対象になり得ます。sshd を動かしていないコンテナは影響しません。Alpine のベースイメージでは root のパスワード欄が "*" のため、条件が重なる可能性があります。コンテナ内で sshd を動かしているか、まず確認してください。

Rails を使っているか分からない場合はどうすればよいですか。

システムを作った会社や担当者に、Ruby on Rails で作られているか、利用者からのファイルアップロードを受け付けているかを尋ねるのが近道です。Gemfile.lock があれば activestorage の版を見られます。Rails を使っていなければ、この件は対象外です。

悪用は確認されていますか。

本日の3件とも、実環境での悪用は報告されていません。OpenSSH は実証コードが公開されており、CISA の評価は Exploitation=PoC です。悪用が始まる前に更新するのが安全です。

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