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ERNIE 5.5 Flash Base 必要スペック

FP8 約290GB / H100×4〜【280B MoE・2026年版】

ERNIE 5.5 Flash Baseの必要スペックを整理。280B MoEは重みだけでFP8約290GB・BF16約570GB(推定)で、H100 80GB×4がぎりぎりの目安。SGLang/vLLMでの起動手順と、チャット不可のBase版である注意点、ライセンス確認も解説。2026年11月更新。


ERNIE 5.5 Flash Base は、Baidu が 2026年11月5日に公開したオープンウェイトの基盤(Base)モデルで、総パラメータ約280B・アクティブ約14Bのスパース MoE 構成である。必要メモリは精度で決まり、公式の FP8 重みで約280〜290GB、BF16 で約560〜570GB(いずれも重みのみ・推定)と、一般的なゲーミング GPU 1枚では動かない規模になる。H100 80GB×4(合計320GB)で FP8 がぎりぎり収まるかどうか、というのが現実的な下限の目安である(推定)。MoE のため速度は14B級だが、メモリは280B分すべて必要になる点に注意したい。

本記事の数値のうち、パラメータ数・構成・ベンチマーク・起動コマンドは公式発表とモデルカードの記載に基づく。一方、必要メモリ、GPU 構成、Apple Silicon・CPU オフロードの可否は、総パラメータ数からの単純計算による推定であり、公式の必要 GPU 数は公開されていない。また、このモデルは事前学習終了時点のチェックポイントである Base モデルで、チャット用途にそのまま向くものではない。

必要スペック早見表

精度重みサイズ(推定)構成の目安(推定)備考
FP8(公式配布)約280〜290GBH100 80GB×4 でぎりぎり、H200 141GB×4・B200/B300×4 で余裕HF の baidu/ERNIE-5.5-Flash-Base。safetensors 表示は286B
BF16(公式配布)約560〜570GBH100 80GB×8 以上、H200 141GB×8HF の baidu/ERNIE-5.5-Flash-Base-BF16
4bit 量子化(コミュニティ版が出た場合)約150〜170GBH100×2 や 512GB の Mac が候補公式の量子化版は2026-11-06時点で未提供
2〜3bit 量子化(同上)約90〜120GB128GB 級の Mac や大容量 RAM+GPU の混在構成品質低下が大きくなりやすい

手元のGPU・Macで動くかをすぐ確かめたい場合は、モデル・量子化・コンテキスト長を選ぶだけで必要VRAMを試算できるVRAM計算ツール(無料・登録不要)も用意している。ERNIE 5.5 Flash Base もモデル一覧から選択できる。

上表は重みだけの目安で、実際にはこれに KV キャッシュ、CUDA コンテキスト、アクティベーション、通信バッファが加わる。余裕は重みサイズの10〜20%を見込むのが無難である(推定)。

ERNIE 5.5 Flash Base のモデル概要

項目内容
公開日2026年11月5日
総パラメータ数280B(HF の safetensors 表示は埋め込み・出力ヘッド込みの286B)
アクティブパラメータ数14B
構成スパース MoE(Multi-Router Latent MoE)。512 routed experts、top-10 に加え shared expert 1
層数・隠れ次元・ヘッド数43層・hidden 4096・64ヘッド
アテンションハイブリッド MLA+HCA
その他の特徴Manifold-Constrained Hyper-Connections、MultiMax 出力ヘッド、ECHO(multi-token prediction)、約200K語彙の BPE
学習33.5Tトークンでスクラッチ事前学習、Muon オプティマイザ、FP8 混合精度
コンテキスト長学習は128Kまで拡張、ファインチューニングと推論は1Mトークン対応(公開 config は1M有効)。サンプルコマンドは131,072
モデルの種別Base(事前学習終了時点。mid-training・post-training なし)
ライセンスERNIE 5.5 Flash Base Model License Agreement v1.0

公式ページは https://ernie.baidu.com/release/ernie-5-5-flash-base/ 、重みは Hugging Face の baidu/ERNIE-5.5-Flash-Base(FP8、F8_E4M3)と baidu/ERNIE-5.5-Flash-Base-BF16(BF16)で配布されている。FP8 版が公式の標準形で、学習自体も FP8 混合精度で行われている。

MoE とメモリの関係 — 速度は14B級、メモリは280B分

MoE は、トークンごとに512個のエキスパートのうち top-10 と shared expert だけを計算に使う。そのため1トークンあたりの計算量とデコード速度は、アクティブ14B相当のモデルに近くなる。ただし、どのエキスパートが選ばれるかは入力ごとに変わるため、推論中にいつ呼ばれても良いよう、280B分の重みすべてを高速なメモリに置いておく必要がある。

つまり「14B だから軽い」とは言えない。計算は軽いがメモリは重い、というのが MoE の性質である。この点は、同じく総パラメータが大きい MoE を扱った Kimi K3.1 Pro の必要スペック でも同じ構造になっている。エキスパートを GPU 間で分散する expert parallel を使うと、重みの置き場所を分けつつスループットを稼げるが、GPU 間通信の速度が性能を左右する。

精度別の必要メモリ

重みサイズは「総パラメータ数 × bit数 ÷ 8」で概算できる。280Bの場合、FP8 は約280GB、BF16 は約560GBになる。HF の表示である286Bで計算すると、FP8 は約286GB、BF16 は約572GBである。以下はいずれも推定である。

- FP8: 約280〜290GB。公式配布の標準形で、4GPU の例コマンドもこの精度を前提にしている
- BF16: 約560〜570GB。ファインチューニングで勾配計算の精度を優先したい場合や、FP8 非対応のハードウェアで使う場合の選択肢
- 4bit(Q4相当): 約150〜170GB。4.5〜4.8bit 相当の量子化形式なら 280B×4.8÷8 で約168GB。公式提供はなく、コミュニティ版の登場待ち
- 2〜3bit: 約90〜120GB。280B×2.6〜3.4bit÷8 の範囲。品質の劣化と、MoE 特有のエキスパート偏りによる不安定さに注意

KV キャッシュは MLA の採用で通常のアテンションより小さく済む。仮に1トークンあたり約50KB(潜在次元を DeepSeek 系と同程度と仮定した粗い推定で、ERNIE の実値ではない)とすると、131,072トークンで約6〜7GB、1Mトークンでは約50GB前後になる。HCA の分も含め実測が必要なので、長いコンテキストを使う場合は余裕を持たせたい。量子化の考え方は LFM3 の必要スペック の解説も参考になる。

GPU 構成別の目安

構成合計メモリFP8(約290GB)BF16(約570GB)
H100 80GB×4320GBぎりぎり(短めのコンテキストなら可、推定)不可
H100 80GB×8640GB余裕ありぎりぎり
H200 141GB×4564GB余裕あり不可(重みだけで上限超え、推定)
B200 / B300 ×4約720GB〜1TB超余裕あり収まる(推定)
A100 80GB×4320GBFP8 ネイティブ非対応のため非推奨不可
RTX 4090 / 5090 単体24GB / 32GB不可不可

公式の例コマンドは4GPU(SGLang は TP4 と attn-dp-size 4、vLLM は DP4 と expert parallel)で、必要な GPU 数や型番は明記されていない。SGLang の cookbook は B300 を参照している。H100×4 は、FP8 の重みだけでメモリの約9割を占めるため、KV キャッシュと実行時オーバーヘッドを考えるとコンテキスト長を大きく取れない(推定)。余裕を持って運用するなら、H200 や B200/B300 の4枚構成が現実的である。

また、FP8 のネイティブ演算は H100 以降の世代が前提になるため、A100 など旧世代では BF16 での運用になり、必要メモリが倍になる。

Apple Silicon での動作

Apple Silicon はユニファイドメモリのため、GPU 専用メモリの制限なく大きなモデルを載せられる。ただし現時点で公式の量子化版や MLX 版はなく、動かすには自前での変換か、コミュニティ版の登場が必要である。以下は4bit版が出た場合の推定である。

- 512GB 級(M3 Ultra、M4 Ultra が出れば同級): 4bit 約150〜170GB が収まり、有力な候補。ただしメモリ帯域は GPU サーバより低く、プロンプト処理は遅くなりやすい
- 192GB 級: 4bit は載るが、KV キャッシュと OS の余地を考えると短いコンテキストに限られる
- 128GB 以下: 2〜3bit でも厳しく、実用的ではない
- 24GB 級の M シリーズ: 不可

Mac で複数のモデルを比べる前に、同様の大型 MoE を扱った Raon-1 Mini の必要スペック の記事で、メモリ容量の見方を押さえておくとよい。

CPU+大容量 RAM でのオフロード

256GB 以上の RAM を積んだワークステーションなら、量子化版をCPU 側に置き、一部のレイヤーだけ GPU に載せる構成が理論上は可能である。MoE はアクティブ14Bなので、メモリ帯域が足りれば一定の速度が出る可能性はある。ただし、これは推定であり、対応する推論エンジン(llama.cpp 系など)がこのアーキテクチャ(ハイブリッド MLA+HCA、Multi-Router Latent MoE)を実装しているかは未確認である。公式の例は SGLang と vLLM のみで、少なくとも発表時点では、手元の PC で気軽に試せる状況ではない。

SGLang と vLLM での起動手順

公式が示している推論手段は SGLang と vLLM の2つである。いずれも4GPU を前提にした例で、コンテキスト長は131,072に設定されている。以下は公式の例コマンドをそのまま整理したものである。実環境ではドライバ、CUDA、イメージのバージョンを必ず公式ページで確認してほしい。

SGLang は専用イメージ lmsysorg/sglang:dev-ernie-55-flash を使い、コンテナ内で次のように起動する。

sglang serve \
  --model-path baidu/ERNIE-5.5-Flash-Base \
  --tp 4 \
  --attn-dp-size 4 \
  --context-length 131072 \
  --port 30000

vLLM は vllm==0.32.0 に vLLM-ERNIE プラグインを組み合わせて使う。FP8 の KV キャッシュと expert parallel を有効にし、MoE バックエンドに humming を指定する。

vllm serve baidu/ERNIE-5.5-Flash-Base \
  --kv-cache-dtype fp8 \
  --enable-expert-parallel \
  --data-parallel-size 4 \
  --max-model-len 131072 \
  --moe-backend humming

公開 config は1Mトークンのコンテキストを有効にしているが、サンプルは131,072に絞っている。1Mを使う場合は KV キャッシュのメモリが増えるので、上の推定を参考に GPU を増やすか、コンテキスト長を下げて調整する。

Base モデルの使いどころ

ERNIE 5.5 Flash Base は、事前学習終了時点のチェックポイントで、mid-training も post-training も入っていない。公式は、チャット用の post-trained 版を後日公開すると記載している。そのため、指示に従って対話する用途にはそのままでは向かない。プロンプトを与えると文章の続きを生成する挙動が基本になる。

- ファインチューニングのベース: 自社データでの教師あり学習や、指示追従の追加学習の出発点にする
- 継続事前学習: 特定ドメインの文章を追加で学習させる
- 評価・研究: Base 同士の比較ベンチマーク、アーキテクチャ(MLA+HCA、Hyper-Connections など)の検証
- 蒸留元: 小さなモデルへ知識を移す際の教師モデル
- 対話・チャット用途は後日公開の post-trained 版を待つのが無難

ファインチューニングを手元で行う場合、重みに加え勾配とオプティマイザの状態が必要になり、推論よりはるかに多くのメモリを要する。LoRA 系でも BF16 の重み約570GB 級が前提になるため、実質的にマルチノードの GPU が必要になる(推定)。

他モデルとの比較(公式ベンチマーク)

公式ページは、Base モデル同士の比較として DeepSeek-V4-Flash-Base、Hy3-preview-Base、MiMo-V2.5-Base を挙げている。以下は公式が示した ERNIE 5.5 Flash Base の値で、自社計測である点に注意したい。

ベンチマーク設定ERNIE 5.5 Flash Base
MMLU5-shot93.3
GPQA5-shot60.2
HumanEval+1-shot82.3
LongBench-v20-shot48.7

公式の表では、多くの行で ERNIE 5.5 Flash Base が首位だが、ChineseSimpleQA や InfiniteBench などでは DeepSeek-V4-Flash-Base が上回っている。Base モデルの比較であり、チャット版の性能や実運用での使い勝手とは別の話である。導入判断では、自社の用途に近いデータでの検証が欠かせない。

ライセンスに関する注意

ライセンスは「ERNIE 5.5 Flash Base Model License Agreement v1.0」で、詳細はリポジトリの LICENSE ファイルに記載されている。商用利用の条件や再配布、派生モデルの扱いについて、モデルカードには要約がない。Apache 2.0 や MIT のような一般的なライセンスと同じだと決めつけず、商用で使う前に LICENSE の全文を必ず確認してほしい。

トラブルシューティング

- 起動時の CUDA out of memory: 重みが収まっていない。GPU 数を増やすか、--context-length(SGLang)や --max-model-len(vLLM)を下げる。H100×4 では特に起こりやすい(推定)
- 動き出した後の OOM: KV キャッシュやアクティベーションの分が足りない。コンテキスト長、同時リクエスト数、バッチを下げる
- vLLM でモデルが認識されない: vllm==0.32.0 と vLLM-ERNIE プラグインの組み合わせになっているか確認する。バージョン違いは典型的な原因
- SGLang で動かない: 通常のイメージではなく lmsysorg/sglang:dev-ernie-55-flash を使う
- 応答が会話にならず文章の続きになる: Base モデルの仕様。post-trained 版を待つか、自前で追加学習する
- ダウンロードが遅い・失敗する: FP8 版で約290GB。ディスクの空きと帯域を確認し、hf の再開機能を使う
- GGUF が見つからない: 2026-11-06 時点で公式の量子化版はなく、コミュニティ版の登場を待つ

ERNIE 5.5 Flash Base の必要メモリはどれくらいですか?

重みだけで、公式の FP8 版が約280〜290GB、BF16 版が約560〜570GB(いずれも推定)です。これに KV キャッシュと実行時の余裕を加える必要があります。公式は必要 GPU 数を明記しておらず、例コマンドは4GPU です。

アクティブパラメータが14Bなら、小さな GPU でも動きますか?

動きません。MoE は計算量とデコード速度が14B級になるだけで、どのエキスパートが選ばれても良いよう280B分の重みをすべてメモリに置く必要があります。RTX 4090 や 5090 の単体では不可能です。

チャットボットとして使えますか?

そのままでは向きません。これは事前学習終了時点の Base モデルで、公式はチャット用の post-trained 版を後日公開すると記載しています。対話用途ならその公開を待つか、自前で追加学習をする必要があります。

Mac や PC で動かせますか?

2026年11月6日時点で GGUF など公式の量子化版はなく、推論の公式手段は SGLang と vLLM のみです。4bit 版が出れば 512GB 級の Mac が候補になりますが、これは推定です。一般的な PC では現実的ではありません。

商用利用はできますか?

ライセンスは ERNIE 5.5 Flash Base Model License Agreement v1.0 です。モデルカードに商用条件の要約はないため、リポジトリの LICENSE を確認してください。Apache 2.0 などと同じだと決めつけるのは避けてください。

コンテキスト長はどこまで使えますか?

学習は128Kまで拡張され、ファインチューニングと推論は1Mトークンに対応しており、公開 config は1Mが有効です。ただし公式のサンプルコマンドは131,072で、長くするほど KV キャッシュのメモリが増えます。

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