K-EXAONE 2.0 750B-A37Bとは — 自前で動かす条件とVRAM試算
LG AI Researchが2026年7月31日公開のK-EXAONE 2.0 750B-A37Bは総パラ750B・BF16で重み約1.5TB。FP8で750GB、4bit級でも375〜420GBが必要な条件と、Apache 2.0ライセンス・日本語対応・vLLM/SGLangのカスタムfork事情を整理します。
K-EXAONE 2.0 750B-A37Bは総パラメータ750B・アクティブ37BのMoEで、重みだけでBF16なら約1.5TB、FP8で約750GB、4bit級に落としても375〜420GBが必要です。 1枚のコンシューマGPUはもちろん、単一ノードでもBF16はそのままでは載らず、実運用にはKVキャッシュや活性化の余裕を含めた複数ノード構成を前提にする必要があります。ライセンスはApache 2.0で商用利用が可能、対応10言語に日本語が含まれる点が実務上の見どころです。この記事では公開された諸元、精度別の重みサイズ試算、動かし方の現実、そして小型版への逃げ道を整理します。
K-EXAONE 2.0 750B-A37Bとは何か
K-EXAONE 2.0は、LG AI Researchが2026年7月31日にHugging Faceで公開したオープンウェイトLLMです。韓国科学技術情報通信部が主導する「ソブリンAI基盤モデルプロジェクト」の第2世代モデルにあたり、リポジトリ名はLGAI-EXAONE/K-EXAONE-2.0-750B-A37B。総パラメータ750B・アクティブパラメータ37BのMoE構成で、レイヤ数は78(dense層2+sparse層76+MTP層1)、エキスパートは256個中トークンあたり8個をアクティブ化し、常時稼働するshared expertを1個持ちます。知識カットオフは2025年第2四半期です。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 総パラメータ | 750B |
| アクティブパラメータ | 37B |
| レイヤ数 | 78(dense 2+sparse 76+MTP 1) |
| エキスパート | 256個、トークンあたり8アクティブ+shared expert 1 |
| hidden dimension | 6,144 |
| コンテキスト長 | 262,144トークン |
| 語彙数 | 153,600 |
| アテンション | ハイブリッド(global/sliding window/sparse) |
| テンソル型 | F32・BF16 |
| ライセンス | Apache 2.0 |
| 対応言語 | 韓・英・西・独・日・越・仏・伊・ポーランド・ポルトガルの10言語 |
重み精度別のサイズ試算とハードウェア
重みサイズは「パラメータ数×1パラメータあたりのバイト数」で概算できます。750Bパラメータに対して、BF16(2byte/パラメータ)なら750B×2byte≒1.5TB、FP8(1byte/パラメータ)なら750B×1byte≒750GB、NVFP4などの4bit級(0.5byte/パラメータ)なら750B×0.5byte≒375GBが理論値です。4bit級はブロック単位のスケール係数などのメタデータが上乗せされるため、実際のダウンロードサイズは375〜420GB程度になるとみておくのが安全です。この数値はあくまで重みだけの下限であり、実運用にはKVキャッシュ・活性化・通信バッファの余裕が別途必要になります。
| 精度 | 概算重みサイズ | H100/H200 80GB〜141GB級の目安 | Mac統合メモリで足りるか |
|---|---|---|---|
| BF16(フル精度) | 750B×2byte≒1.5TB | H100 80GB×19基〜(実務上3ノード=24基) | 512GBのMac Studioでも全く届かない |
| FP8 | 750B×1byte≒750GB | H100 80GB×10基〜(実務上2ノード=16基) | 512GBのMac Studioでも不足 |
| NVFP4/4bit級 | 750B×0.5byte≒375〜420GB(メタデータ込み) | H100 80GB×6基〜(1ノード=8基で収まる可能性) | 512GB統合メモリなら理論上載る余地はあるが、262kコンテキストのKVキャッシュを積むと余裕はほぼ残らない |
- KVキャッシュ: コンテキスト長262,144トークンを実際に使うと、同時実行数に比例して支配的な要因になる
- 活性化(アクティベーション): 推論実行時の中間テンソルがGPUメモリを占有する
- 通信バッファ: マルチノード構成ではノード間のテンソル並列・エキスパート並列通信用にメモリを確保する必要がある
- メモリフラグメンテーション: 実運用では理論値ぴったりでは動かず、一定の余裕を積む必要がある
表の「H100/H200◯基〜」は重みが載るかどうかの下限に過ぎません。「◯基で動く」という断定ではなく、実運用ではKVキャッシュや活性化のぶん、表の基数より一回り多いノード構成を見込んでおくべきという理解が実態に近いです。特にBF16・FP8はマルチノードでのテンソル並列/エキスパート並列を伴う構成が前提になり、単純に合計GPUメモリが足りていればよいわけではありません。
750Bが重いなら236B-A23B / GGUFという現実解
LGは同時に、より小さいK-EXAONE-236B-A23Bと、その量子化版であるK-EXAONE-236B-A23B-GGUFも公開しています。同じ計算式を236Bパラメータに当てはめると、BF16で236B×2byte≒472GB、FP8で236B×1byte≒236GB、4bit級で236B×0.5byte≒118GB(メタデータ込みで実質130GB前後)となり、750B版より一段現実的な数字になります。手元のワークステーションやMacで試したい場合は、750B-A37Bではなく236B-A23BのGGUF量子化版から検討するのが妥当です。必要VRAMの目安はVRAM計算ツールでも確認できます。
Apache 2.0と日本語対応が実務に効く場面
K-EXAONE 2.0の実務上のポイントは、性能そのものよりもライセンスと対応言語にあります。Apache 2.0は商用利用・改変・再配布を認める寛容型ライセンスであり、オンプレミス環境や自国内(オンショア)でのホスティングに制約が少ない点が、データを外部に出せない業種(官公庁・金融・医療など)にとって選定理由になり得ます。対応10言語に日本語が明記されている点も、韓国発モデルでありながら日本語案件での採用を検討する余地を残します。
| モデル | 総パラメータ | アクティブパラメータ | ライセンス | コンテキスト長 |
|---|---|---|---|---|
| K-EXAONE 2.0 750B-A37B | 750B | 37B | Apache 2.0 | 262,144トークン |
| K-EXAONE 236B-A23B | 236B | 23B | Apache 2.0 | 262,144トークン(同系) |
| Kimi K3 | 2.8T | 約50B相当 | 修正MIT系(要LICENSE確認) | 1,048,576トークン |
| DeepSeek V4 Pro | 1.6T | 49B | MIT | 1,048,576トークン |
この表は総パラメータ・アクティブパラメータ・ライセンス・コンテキスト長という公開されている諸元の並びであり、性能の優劣を示すものではありません。総パラメータではKimi K3やDeepSeek V4が大きく、K-EXAONE 2.0は750Bとやや小ぶりですが、Apache 2.0という制約の少ないライセンスと日本語を含む10言語対応は、他のオープンウェイトモデルと比較したときの選定材料になります。
動かし方の現実 — vLLM/SGLangはカスタムforkが必要
K-EXAONE 2.0を推論エンジンで動かす場合、対応状況にはばらつきがあります。SGLangとvLLMは、公式配布ページで案内されているadd-k-exaone2ブランチのカスタムforkを使う必要があり、標準リリース版ではまだ動作しない可能性があります。Transformersはサポートされており、llama.cppは量子化版(GGUF)経由での利用が案内されています。
- vLLM: add-k-exaone2ブランチのカスタムforkが必要。標準リリースへのマージ時期は本稿執筆時点で未確認
- SGLang: 同じくadd-k-exaone2ブランチのカスタムforkが必要
- Transformers: サポートあり。まず動作確認したい場合の入口になる
- llama.cpp: 量子化(GGUF)経由での利用が前提。236B-A23B-GGUFなど派生リポジトリが手がかりになる
つまり、weightsが公開された当日から本番のvLLM/SGLangクラスタにそのまま投入できるわけではありません。カスタムforkを追跡する運用コストが発生するため、まずはTransformersや量子化版で挙動を確認し、本番投入はadd-k-exaone2ブランチが安定してから、という段取りが現実的です。
公開されているベンチマーク数値
LG AI Researchが公表している主なベンチマークは、MMLU-Pro 83.5、SWE Bench Verified 68.2、長文理解のOpenAI-MRCR 94.4、安全性のKGC-Safety 99.8です。24ベンチマークの平均スコアは70.1で、前世代(1.0世代)の63.3から向上したと説明されています。これらはいずれも開発元の公表値であり、自社タスクでの性能は別途評価が必要です。
まとめ
K-EXAONE 2.0 750B-A37Bは、重みだけでBF16なら約1.5TB、FP8で約750GB、4bit級でも375〜420GBという大型MoEで、コンシューマGPU1枚では動きません。手元で試したいなら236B-A23BのGGUF量子化版から、本番でフル性能を狙うならBF16/FP8を前提に複数ノードのGPUクラスタと、vLLM/SGLangのカスタムforkを追跡する運用体制が必要になります。
一方で、Apache 2.0という制約の少ないライセンスと、日本語を含む10言語対応は、データを外部に出せない案件やオンプレ・自国内運用を検討する組織にとって実務的な価値があります。数値・対応ランタイム・派生リポジトリは公開直後で更新される可能性があるため、導入判断の際はHugging Faceの配布ページを直接確認してください。
手元のPCやMacで動きますか?
750B-A37Bをそのまま動かすのは現実的ではありません。BF16で約1.5TB、FP8で約750GB、4bit級でも375〜420GBが必要で、コンシューマGPU1枚はもちろん512GB級のMac統合メモリでも余裕はほぼありません。手元で試したい場合は、同時公開された236B-A23Bとその量子化版(K-EXAONE-236B-A23B-GGUF)を検討するほうが現実的です。
APIで使えますか?
本稿執筆時点で、LG AI ResearchやLGグループによる公式APIの一般提供は確認できていません。確認できているのはHugging Faceでのweights公開のみです。API提供の有無や条件については、公式発表や配布ページの更新を直接確認してください。
Apache 2.0で本当に商用利用してよいのですか?
Apache License 2.0は商用利用・改変・再配布を認める寛容型のオープンソースライセンスであり、基本的に商用利用は可能と考えられます。ただし特許条項や表示義務など細部の扱いがあるため、実際に配布されているLICENSEファイルの原文を必ず確認したうえで運用してください。
日本語性能はどの程度期待できますか?
対応言語として日本語を含む10言語が公式に明記されています。一方、公表されているMMLU-Pro・SWE Bench Verified・OpenAI-MRCR・KGC-Safetyや24ベンチ平均70.1といったベンチマークは言語別の内訳が示されておらず、日本語に特化したベンチマークの公開値は本稿執筆時点で確認できていません。実務では自社の日本語タスクでの評価が別途必要です。
750Bと236B、どちらを選ぶべきですか?
複数ノードのGPUクラスタを用意でき、フル性能を狙うなら750B-A37B、手元のワークステーションやMac、少数GPUの範囲で試したいなら236B-A23B(特にGGUF量子化版)が現実的な選択です。236B版でも4bit級で理論値約118GB(メタデータ込みで実質130GB前後)が必要なため、コンシューマGPU1枚で完結するモデルではない点は共通しています。
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