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株式会社オブライト
Business DX2026-10-24約14分で読めます

UPS(無停電電源装置)の選び方と費用 — 停電・瞬停から守る

停電や瞬停でNAS・サーバーのデータが壊れる前に。UPS導入費用の目安(小型1.5〜4万円、NAS向け3〜10万円)、正弦波と矩形波の違い、容量の選び方、自動シャットダウンの設定、規模別の費用、落雷対策をIT担当がいない中小企業向けに、やさしく丁寧に解説する。年1回のテスト方法とチェックリストも付ける。


オフィスの停電対策は、まずNAS・サーバー・ネットワーク機器の3つに小型のUPS(無停電電源装置)を付けることから始めるのが現実的である。費用の目安は、小型UPS1台で1.5〜4万円、NAS・サーバー向けの上位機種で3〜10万円、ラック型で10〜30万円以上である。バッテリーは2〜5年ごとの交換が必要で、1回あたり数千円〜数万円かかる(いずれも目安)。UPSの役割は、長時間動かし続けることではなく、停電した瞬間にデータを壊さず、安全にシャットダウンする時間を稼ぐことにある。

「うちは停電なんて滅多にないから」と考える会社は多い。しかし実際に怖いのは、数時間の停電よりも、一瞬だけ電気が途切れる「瞬停」や、落雷による電圧の乱れである。ほんの一瞬でも、書き込み中のNASやサーバーは壊れることがある。この記事では、IT担当者がいない会社でも判断できるように、守る優先順位、UPSの種類と選び方、容量の計算、自動シャットダウンの設定、規模別の費用、落雷対策、日々の運用までを整理する。停電を含む事業継続の考え方は事業継続のIT対策(IT-BCP)にまとめている。

なぜ停電・瞬停がオフィスで問題になるのか

パソコンやNASは、電気が突然切れると、書き込み途中のデータを失う。壊れ方は機器によって違うが、中小企業で起こりやすいのは次のようなものである。

- NASのファイルやRAIDが壊れる: 書き込み中に電源が落ちると、ファイルが破損したり、RAID(複数のディスクで冗長化する仕組み)の整合性が崩れて再構築に何時間もかかったりする。最悪の場合、共有フォルダが開けなくなる
- サーバーやデータベースが起動しなくなる: 業務ソフトや会計ソフトのデータベースが書き込み中に止まると、次の起動時に修復が必要になることがある
- ルーター・ONU・スイッチが再起動する: 数分間ネットワークが使えなくなり、クラウドサービスや電話(IP電話)も止まる。復旧後に設定が飛ぶ機器もある
- パソコンの作業中データが消える: ノートパソコンはバッテリーがあるため影響が小さいが、デスクトップパソコンは保存していない作業が失われる

さらに、停電から復旧する瞬間には、電圧が不安定になったり、大きな電流が流れたりして、機器にダメージを与えることもある。「止まる」ことより「壊れる」ことが本当の被害である。壊れたデータの復旧は、バックアップがなければ難しい。バックアップの考え方は社内データのバックアップ方法と費用で詳しく説明している。UPSは、バックアップの代わりではなく、バックアップが必要になる事故を減らす装置だと考えるとよい。

まず何を守るか:優先順位の付け方

すべての機器にUPSを付けると費用がかさむ。次の順番で、データが壊れやすく、止まると影響が大きいものから守るのがよい。

優先度機器守る理由目安
1NAS・ファイルサーバー・業務サーバー書き込み中の停止でデータやRAIDが壊れる。全社員に影響する必須に近い
2ONU・ルーター・UTM・スイッチ・Wi-Fi親機瞬停で再起動し、ネットワーク全体が数分止まる強く推奨
3複合機・IP電話の主装置再起動で設定や通信が不安定になることがある必要に応じて
4デスクトップパソコン保存前のデータが消える。台数が多いと費用がかさむ重要な業務用のみ
5ノートパソコン内蔵バッテリーがあり、通常は不要不要

実務では、NASとネットワーク機器を1台の小型UPSにまとめてつなぐ構成が最も費用対効果が高い。社員全員のデスクトップパソコンまで守る必要は、多くの場合ない。パソコンのデータはNASやクラウドに保存するルールにしておけば、パソコン側の瞬停の被害は小さく抑えられる。UTMなどのセキュリティ機器の位置づけはUTM・ファイアウォールの費用で説明している。

UPSの種類と違い

UPSには大きく3つの方式がある。名前は難しいが、違いは「電気をどのくらい丁寧に整えるか」と「価格」である。

方式仕組み(かんたん)価格の目安向いている機器
常時商用給電方式普段は壁の電気をそのまま通し、停電時にバッテリーへ切り替える安い(1〜3万円台)家庭用PC、ルーターなど
ラインインタラクティブ方式電圧の高低を自動で補正しつつ、停電時に切り替える中程度(2〜10万円)NAS、小規模サーバー、ネットワーク機器
常時インバータ給電方式常にバッテリー経由で安定した電気を送る。切り替えの瞬断がない高い(10万円〜)重要サーバー、医療・製造などの精密機器

中小企業のオフィスでは、ラインインタラクティブ方式で十分なことが大半である。常時インバータ方式は安心感が高いが、価格も大きさも大きくなる。止まると大きな損害が出る基幹サーバーがある場合に検討すれば足りる。

矩形波と正弦波:NAS・サーバーなら正弦波を選ぶ

UPSがバッテリーで動いているとき、出力する電気の波形には「矩形波(四角い波)」と「正弦波(なめらかな波)」の2種類がある。安価なUPSは矩形波のものがあり、これは家庭用のパソコンなどでは動くが、機器によっては相性が悪い。

- 正弦波: 壁のコンセントと同じ形の電気。NAS、サーバー、力率補正(PFC)付きの電源を持つ機器でも安定して動く。NASやサーバーにつなぐなら正弦波を選ぶ
- 矩形波: 安価だが、機器が動かなかったり、異音が出たり、電源が落ちたりすることがある。簡単な機器向けと考える

製品の仕様に「正弦波」または「Pure Sine Wave」と書かれているかを必ず確認する。説明書に「サーバー・NAS対応」とあれば、基本的に正弦波である。購入前に、つなぐ機器のメーカーが動作確認済みのUPSを公開していないかも調べるとよい。

容量の選び方:VAとWの計算

UPSの容量は「VA(ボルトアンペア)」と「W(ワット)」の2つで表される。大切なのは、つなぐ機器の消費電力の合計が、UPSのW値の範囲に収まっていることである。VA値だけを見て選ぶと、足りなくなることがある。

- 手順1: つなぐ機器の消費電力(W)を調べる。本体の銘板や説明書、メーカーのサイトに書いてある。NASなら30〜60W程度、ルーターやONUは各10〜20W程度が目安
- 手順2: 合計を出す。例:NAS 50W + ルーター 15W + ONU 10W + スイッチ 15W = 90W
- 手順3: 余裕を持たせる。合計の1.3〜1.5倍を目安にして、この例なら120〜135W以上
- 手順4: UPSの定格出力(W)がそれを上回る機種を選ぶ。VA値は、Wの1.5〜1.7倍程度のことが多い(力率による)

運転時間(バッテリーで何分動くか)は、「長いほど良い」ものではない。目的は、停電時に機器を自動で安全にシャットダウンする5〜10分を確保することである。たとえば、半日停電しても仕事を続けたいなら、UPSではなく発電機や大型の蓄電池が必要になり、費用の桁が変わる。中小企業では、シャットダウンまでの時間が取れれば十分なことが多い。メーカーの資料にある「バックアップ時間」の表で、自社の合計Wのときに何分動くかを確認する。

自動シャットダウンの連携が本当の価値

UPSを付けただけでは、バッテリーが切れた瞬間に結局は電源が落ちる。停電を検知して、機器が自動で電源を落とす仕組み(自動シャットダウン連携)まで設定してはじめて、UPSは役に立つ。夜間や休日の停電では、人が操作できないからである。

停電・瞬停が起きるとUPSがバッテリー給電に切り替え、USBやLANでNASに停電を通知し、3〜5分の待ち時間のあとNASが安全にシャットダウンする。待ち時間中に電気が戻れば、シャットダウンせずに運転を続ける。

- USB接続: UPSとNASやサーバーをUSBケーブルでつなぐ。多くのNASは、USB接続のUPSを認識して、停電時に自動でシャットダウンできる。最も簡単で一般的な方法
- ネットワークカード(SNMP等): UPSにLAN接続用のカードを追加し、ネットワーク経由で複数台の機器に停電を知らせる。サーバーが複数ある場合や、ラック型で使う
- 付属ソフト: Windowsのパソコンやサーバーは、UPSのメーカーが提供する専用ソフトで、停電時に自動でシャットダウンできる

NASの場合は、管理画面で「UPS」の設定項目を探し、「UPSを有効にする」「バッテリー残量が少なくなったらシャットダウンする」「停電後に何分でシャットダウンするか」を設定する。UPSをつないだNASが1台のとき、USB接続の「本体」として設定する。複数台で同じUPSを共有する場合は、1台目を本体、2台目以降をネットワーク経由の参照側にする。設定後は、必ず実際にUPSの電源プラグを抜いて、正しくシャットダウンされるかを試す。

もう一つ大切なのは、シャットダウンまでの待ち時間の設定である。待ち時間が長すぎると、バッテリーが先に切れてしまう。短い瞬停のたびにシャットダウンしてしまうのも不便なので、「停電から3〜5分たったらシャットダウン開始」のように、バッテリーの持ち時間に余裕を残して決める。

費用の目安:規模別・構成別

次の表は、UPS導入にかかる費用の目安である。製品や機種、構成によって大きく変わるため、あくまで目安として参考にしてほしい。

区分価格帯の目安守れる機器の例備考
小型UPS(常時商用・矩形波中心)1.5〜4万円ルーター、ONU、小型の機器家庭向け・簡易用途
NAS・小規模サーバー向け(正弦波)3〜10万円NAS、ネットワーク機器一式中小企業の主力
タワー型・大容量8〜20万円サーバー1〜2台+ネットワーク機器運転時間を長めに
ラック型10〜30万円以上サーバー、UTM、スイッチサーバーラックがある場合
バッテリー交換数千円〜数万円同上2〜5年ごと、機種による

会社の規模別に、現実的な構成と費用の目安を示す。

規模守る機器構成の例導入費用の目安
社員5名NAS1台、ルーター、ONU正弦波の小型UPS 1台3〜6万円
社員20名NAS、ルーター、UTM、スイッチ正弦波UPS 1〜2台(NAS用とネットワーク用に分ける場合もある)6〜20万円
社員50名サーバー複数、NAS、UTM、スイッチ、Wi-Fi親機ラック型または大容量UPS+ネットワークカード20〜60万円

バッテリーは消耗品で、機種や使用環境によるが2〜5年ごとの交換が目安になる。導入費用だけでなく、5年間の総額で考えることが大切である。たとえば導入5万円のUPSで、3年目にバッテリー交換に1万円かかるなら、5年間で6万円程度という計算になる。NASの購入費用と合わせた総額はNASファイルサーバーの費用も参考になる。

費用で迷ったときは、「止まったときに、どれだけ困るか」を金額に置き換えてみるとよい。NASが壊れてデータの復旧に数日かかれば、その間の人件費や機会損失は、UPSの費用をはるかに超えることが多い。UPSは保険であり、安く導入できる対策のひとつである。

落雷・サージ対策:雷は電源線以外からも来る

落雷の被害は、停電とは別の問題である。近くに雷が落ちると、電線や通信線を通じて、非常に高い電圧(サージ)が一瞬だけ流れ込み、機器の基板を壊す。雷サージはコンセントだけでなく、LANケーブル、電話線、光回線の機器、アンテナ線などからも入ってくる。

- 電源側の対策: 雷サージ対応のテーブルタップ(数千円〜)や、UPS自体のサージ保護機能を使う。ただし、安価なテーブルタップのサージ保護は、強い雷には耐えられないことがある
- LAN・電話線側の対策: 建物の外とつながるLANケーブルや電話線には、LAN用のサージ保護装置(SPD)を入れる。屋外にケーブルが出ている拠点間接続や、屋外のカメラなどで特に重要
- 配線の工夫: 電源とLANを別々のタップでつなぐと、サージの逃げ道が分かれて被害が広がることがある。同じ保護機能のある機器にまとめる

雷の多い季節(夏場)の前に、重要な機器の配線を見直す。雷が近いときは、機器の電源プラグとLANケーブルの両方を抜くのが最も確実な方法だが、業務時間中は現実的でないことが多い。落雷が心配な地域や、屋外に配線が出ている建物では、保険(動産総合保険など)の補償範囲も確認しておくとよい。雷による機器故障が補償されるかどうかは、契約内容で変わる。

運用:導入したあとにやること

UPSは付けて終わりではない。バッテリーが劣化していると、いざという時に数十秒しか持たないことがある。次のポイントを運用に組み込む。

- バッテリーの交換時期: 2〜5年(機種により異なる)を目安にし、購入日をUPSに貼る。管理画面やランプで「バッテリー交換」の警告が出たら、早めに交換する。高温の場所に置くと寿命が短くなる
- 年1回のテスト: 就業時間外にUPSの電源プラグを抜き、機器が動き続けるか、自動シャットダウンが働くかを確認する。メーカーのテスト機能(自己診断ボタン)も使う
- 置き場所: 風通しの良い場所に置く。床に直接置くと、水や埃の影響を受けやすい。NASやサーバーの近くに置くとケーブルが短く済む
- つなぐ機器の管理: あとから機器を足すと容量不足になる。ヒーターや掃除機、レーザープリンターなど消費電力の大きな機器はつながない

ビルの法定停電(電気設備点検)の前にやること

賃貸ビルの入居者は、年に1回程度、建物の電気設備の法定点検による計画停電を経験する。これは停電が事前にわかる貴重な機会であり、UPSのバッテリーでは足りない長時間の停止になる。事前に次の手順を決めておく。

- 管理会社から日時の通知を受けたら、停電の前日までに、NAS・サーバーを手動でシャットダウンする手順を決めて担当者を決める
- 停電当日の朝または前日夜に、NAS・サーバーの電源を落とす。UPSの電源も切る(つけたままだとバッテリーが切れるまで動き続け、最終的に不正な停止になる)
- 通電後は、ネットワーク機器 → NAS・サーバー → パソコンの順に電源を入れる
- 復旧後、共有フォルダが開けるか、業務ソフトが動くか、バックアップが正常に動いているかを確認する

この手順は紙1枚にして、NASやサーバーの近くに貼っておくと、担当者が不在でも他の人が対応できる。手順書がないと、停電のたびに電源を入れる順番で混乱する会社は意外に多い。

よくある失敗と注意点

- 容量不足で導入した: 後から機器を足して、定格出力を超えてしまう。停電時にUPSがすぐ落ちるか、過負荷の警告が出る
- 自動シャットダウンを設定していない: UPSをつないだだけで、バッテリーが切れた瞬間に結局は突然電源が落ちる
- バッテリーを放置している: 5年以上交換せず、いざという時に数十秒しか持たない。購入日が分からなくなっている
- プリンターや暖房機器をつないだ: 起動時に大きな電力を使う機器をつなぐと、過負荷でUPSが止まる
- 延長タップを何段もつないだ: 発熱や接触不良の原因になる。UPSの出力口の数が足りなければ、機器を絞るか台数を分ける

どれも、導入時に少し確認し、年1回の点検をするだけで防げるものである。「買ったけれど、いざという時に動かなかった」という失敗の多くは、容量・設定・バッテリーのいずれかが原因である。担当者が変わっても引き継げるように、UPSの型番、購入日、つないでいる機器、シャットダウンの設定値を一枚のメモにして、NASの近くに置いておくとよい。

導入前後のチェックリスト

- 守る機器の優先順位を決めた(NAS・サーバー → ネットワーク機器 → 重要なパソコン)
- つなぐ機器の消費電力(W)を調べ、合計に1.3〜1.5倍の余裕を持たせた
- NAS・サーバー向けには正弦波のUPSを選んだ
- UPSの定格出力(W)が、必要な合計を上回っている
- USBケーブルなどで、UPSとNAS・サーバーをつなぎ、自動シャットダウンを設定した
- UPSの電源プラグを抜いて、自動シャットダウンが動くことを確認した
- 購入日を記録し、バッテリーの交換時期(2〜5年)を決めた
- 年1回の動作テストの日を、カレンダーに入れた
- 雷サージ対応のタップやLANのサージ保護を検討した
- ビルの法定停電の連絡を受けたときの手順書を作った
- データのバックアップ(社外・別媒体)が取れていることも確認した

よくある質問

UPSがあれば、停電中も仕事を続けられますか。

できません。一般的な小型UPSのバッテリーは、数分から十数分程度しか持ちません。目的は、仕事を続けることではなく、NASやサーバーを安全にシャットダウンして、データを守ることです。停電中も仕事を続けたい場合は、大容量の蓄電池や発電機が必要で、費用も大きく変わります。

家庭用のUPSを、会社のNASに使っても大丈夫ですか。

機種によっては動作しますが、NASやサーバーには正弦波出力で、容量に余裕があるUPSをおすすめします。矩形波のUPSでは、機器が正しく動かなかったり、停電時に電源が落ちたりすることがあります。購入前に、NASメーカーの対応機種一覧や、仕様の出力波形を確認してください。

ノートパソコンにもUPSは必要ですか。

通常は必要ありません。ノートパソコンは内蔵バッテリーがあるため、停電しても動き続けます。ただし、ノートパソコンにつないだ外付けHDDや、ルーター・NASなどのネットワーク機器は止まるため、そちらを守るほうが重要です。

UPSのバッテリーは、どのくらいで交換が必要ですか。

機種や使用環境によりますが、2〜5年が目安です。高温の場所では寿命が短くなります。交換費用は数千円から数万円程度で、本体ごと買い替えるより安く済むことが多いです。管理画面やランプの警告が出たら、早めに交換してください。

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