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株式会社オブライト
Business DX2026-07-25約7分で読めます

会社のSaaS・サブスク費用の棚卸し方法 — 重複契約と幽霊アカウントの見つけ方

気づけば毎月引き落とされているSaaS・サブスクの費用を、IT担当がいない会社でも棚卸しできる手順で解説。請求データからの契約の洗い出し方、重複契約と幽霊アカウントの見つけ方、解約・縮小の判断基準、解約前の確認点、再発を防ぐ仕組みとチェックリストまで中立的にまとめます。


SaaS・サブスクの棚卸しとは、会社が契約しているクラウドサービスを一覧化し、料金・利用者・必要性を点検する作業のことである。従業員30人規模の会社でも20〜40件の契約が並ぶことは珍しくなく、多くの場合そのうち1〜3割は「重複」か「誰も使っていない契約」である。まず着手すべきは、請求データからの全件洗い出し。ここだけで年間数十万円の削減余地が見つかることが多い。

なぜサブスク費用は膨らむのか

SaaSは1件あたりの月額が小さく、部署単位・担当者単位でカード決済できてしまう。稟議を通さずに始められることは導入のしやすさという長所である一方、社内の誰も全体像を把握していない状態を生みやすい。費用が膨らむ典型パターンは次の4つである。

- 重複契約: 部署ごとに別々のチャットツール・ストレージ・タスク管理を契約している
- 幽霊アカウント: 退職者・異動者のIDが有効なまま課金され続けている
- オーバープラン: 使わない上位機能のために上位プランを維持している
- 忘れられた契約: 試験導入したまま解約されず、担当者も退職して誰も気づいていない

特に幽霊アカウントは、費用の問題であると同時にセキュリティの問題でもある。退職後もアクセスできる状態が残る危険については退職者のクラウドアカウント管理で整理している。

棚卸しの5ステップ

1. 請求データから全件を洗い出す: 法人カードの明細・銀行引き落とし・請求書メールを直近12ヶ月分さかのぼり、毎月または毎年発生している支払いを抜き出す。年払い契約は月次の明細だけ見ていると漏れるため、必ず12ヶ月分を見る
2. 一覧表にまとめる: サービス名/用途/契約者(部署・担当者)/課金単位(ユーザー数・容量)/月額・年額/契約更新日/支払い方法、の7項目で表にする。ExcelやスプレッドシートでOK
3. 利用実態を確認する: 各サービスの管理画面で「発行済みアカウント数」と「直近30日のログイン数」を確認する。多くのSaaSは管理者画面で最終ログイン日を確認できる
4. 仕分けする: 継続/減らす(ライセンス数・プラン)/統合する(重複を1本化)/解約する、の4分類に振り分ける
5. 実行と記録: 解約・縮小を実行し、次回の更新日をカレンダーに登録する。棚卸し結果は次年度のIT予算の出発点になる

洗い出しの一覧表テンプレート

最低限、次の項目が埋まれば判断できる。完璧を目指さず、まず全件を1枚に並べることを優先したい。

項目記入例見るべきポイント
サービス名オンラインストレージA同種のサービスが他にないか
用途社内ファイル共有用途が重複していないか
契約者営業部・田中担当者が退職していないか
課金単位15ユーザー実際の利用者数と合っているか
月額・年額月額22,500円年額換算でいくらか
更新日2026年11月30日自動更新か、解約予告期限はいつか
支払い方法法人カード(経理部)個人カード立替になっていないか

この表は、パソコン・ライセンス・アカウントを含めたIT資産管理の一部として管理すると、更新のたびに作り直す手間がなくなる。

削減の判断基準 — 何を切り、何を残すか

「使っていないから解約」と単純に決められないケースもある。判断に迷ったときは、次の順で考えると整理しやすい。

- アカウント数を実利用者に合わせる(最優先): サービス自体は残しつつライセンス数だけ減らす。業務への影響がほぼなく、効果が即出る
- 同種ツールの重複を1本化する: 業務影響はあるが効果が大きい。移行のデータ・教育コストを見積もったうえで判断する
- プランを下げる: 上位プランでしか使えない機能を実際に使っているか、管理画面の利用状況で確認してから
- 解約する: 直近90日ログインゼロ、かつ保存データを別の場所に退避できるものが候補。データの取り出し(エクスポート)を済ませてから解約する

逆に、安さだけを理由に切ってはいけないのがバックアップ・セキュリティ・監査ログ系のサービスである。止めた瞬間はコストが下がるが、事故が起きたときの復旧費用は桁が変わる。この線引きの考え方はクラウドの放置が招くリスクでも触れている。

解約前に必ず確認する3点

- データの取り出し: 解約後は一定期間でデータが消える。CSV・PDF等でエクスポートし、社内に保管したか
- 他システムとの連携: そのサービスを経由して他ツールに通知やデータが流れていないか。連携が切れると別の業務が止まる
- 解約予告期限: 年間契約は「更新1〜2ヶ月前までの申し出」が条件のことが多い。期限を過ぎると1年分が自動更新される

膨らみを繰り返さないための仕組み

棚卸しは一度やって終わりではなく、放置すればまた同じ状態に戻る。負担の少ない範囲で、次の3つを決めておくと再発しにくい。

- 新規契約の窓口を1つにする: 部署が自由に契約するのをやめ、金額の大小にかかわらず一覧表に追記するルールにする(申請を重くしすぎると隠れた契約が増えるため、記録だけを義務化するのが現実的)
- 入退社の手続きにアカウント整理を含める: 退職時のチェックリストに「契約中サービスのアカウント停止」を入れる
- 年1回・更新月前の見直しを固定する: 予算策定の時期に合わせて棚卸しを行い、翌年度予算に反映する

棚卸しチェックリスト

- 直近12ヶ月分の請求・カード明細から契約を全件洗い出したか
- 年払い契約・個人カード立替の契約も拾えたか
- 各サービスの発行済みアカウント数と実利用者数を突き合わせたか
- 退職者・異動者のアカウントが残っていないか確認したか
- 用途が重複しているサービスを特定したか
- 直近90日ログインゼロのサービスを洗い出したか
- 解約候補のデータをエクスポートしたか
- 各契約の更新日と解約予告期限をカレンダーに登録したか
- 削減額を次年度のIT予算に反映したか

よくある質問

中小企業のSaaS費用はどのくらいが目安ですか?

会社の業種やIT依存度で大きく変わるため、絶対額の目安よりも「IT予算全体に占める割合」と「1人あたり月額」で見るのが実務的です。まずは自社の現状を洗い出し、従業員1人あたり月額いくら払っているかを把握してください。他社比較よりも、前年比で不自然に増えていないか、使われていない契約が含まれていないかのほうが判断材料になります。

棚卸しはどのくらいの頻度でやるべきですか?

年1回、IT予算を立てる時期に合わせて行うのが基本です。契約数が多い会社や、部署ごとの契約が増えている会社では半年に1回が望ましいでしょう。加えて、退職者が出たタイミングでのアカウント確認は都度行ってください。

誰が棚卸しを担当すべきですか?

支払いデータを持つ経理部門と、利用状況がわかる各部署の担当者の共同作業が現実的です。IT担当がいない会社では、経理が請求データから一覧を作り、各部署に「これは今も使っていますか」と確認する形でも十分に成果が出ます。専門知識が必要なのは統合や移行の判断段階だけです。

使っていない契約を見つける簡単な方法はありますか?

各サービスの管理者画面でユーザーごとの最終ログイン日を確認するのが最も確実です。管理者画面がないサービスは、社内に「このサービスを直近1ヶ月で使いましたか」と一斉に確認するだけでも、誰も手を挙げない契約が見つかります。

解約したあとに「やっぱり必要だった」となった場合はどうなりますか?

多くのSaaSは再契約自体は可能ですが、保存していたデータは復元できないことが一般的です(猶予期間内であれば復元できる場合もあります)。そのため、解約前のデータエクスポートは必須です。判断に迷う契約は、いきなり解約せずライセンス数を最小限まで減らして様子を見る方法もあります。

まとめ

SaaS費用の棚卸しは、専門知識よりも「全件を1枚の表に並べる」ことのほうが効く。請求データから12ヶ月分を洗い出し、アカウント数を実利用者に合わせ、重複と幽霊アカウントを消す。この3つだけでも削減効果は出る。そして、年1回の見直しを予算策定とセットで固定してしまえば、同じ膨らみは繰り返さない。

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