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株式会社オブライト
Business DX2026-10-21約13分で読めます

社内データのバックアップ方法と費用 — 中小企業の3-2-1ルールと選び方

中小企業のバックアップは、データを3つ持ち、2種類の媒体に分け、1つは社外に置く「3-2-1ルール」が基本。同期はバックアップではない点、NAS・クラウド・外付けHDDの費用比較、社員5・20・50名の規模別の費用例、年2回の復元テスト、ランサムウェア対策の要点まで、IT担当者がいない会社向けにやさしく解説します。


会社のデータを守るバックアップの基本は、「3-2-1ルール」(データを3つ持ち、2種類の媒体に分け、1つは社外に置く)である。中小企業なら、NASに毎日バックアップし、さらにクラウドかオフラインの外付けHDDへ複製する構成が現実的だ。費用の目安は、社員5名で初期5〜15万円・月額3千〜1万円、社員50名で初期50〜150万円・月額3〜10万円程度である(いずれも目安)。もう一つ大事なのは、「同期」はバックアップではないという点と、年に1〜2回は実際に復元できるか試すことである。

ランサムウェアの被害でも、機器の故障でも、誤削除でも、最後に会社を救うのはバックアップである。それなのに、「OneDriveに入れているから大丈夫」「NASがあるから安心」と考えて、いざという時に戻せない会社は少なくない。この記事では、バックアップが失敗する典型パターン、3-2-1ルール、何を対象にするか、方法ごとの費用比較、会社の規模別の費用例、復元テストの進め方までを、IT担当者がいない会社でも判断できるように整理する。ランサムウェア全体の対策はランサムウェア対策の基本、NAS自体の選び方と費用はNASファイルサーバーの費用にまとめている。

中小企業のバックアップが失敗する3つのパターン

バックアップがあるのに戻せなかった、という事故には共通の型がある。自社に当てはまっていないか、まず確認してほしい。

- 同期をバックアップと勘違いしている: OneDriveやGoogle Driveの同期フォルダは、パソコンで消したファイルをクラウド側でも消す。ランサムウェアで暗号化されたファイルも、そのまま同期される。ごみ箱から戻せる期間は限られ、サービスの標準の復元も万能ではない
- NASにしか置いていない: NASが故障すれば全データを失う。さらにNASは社内ネットワークにつながっているため、ランサムウェアに感染したパソコンから、NAS上のファイルまで一緒に暗号化されることが多い
- 外付けHDDをつなぎっぱなしにしている: 常時接続の外付けHDDは、パソコンと同じ被害を受ける。火災や盗難、水害でも、同じ事務所内に置いたままでは一緒に失われる

共通する弱点は、「元のデータと同じ場所・同じ権限で触れるコピーは、元と同じ運命をたどる」ことである。バックアップは、元のデータとは別の場所、別の権限、できれば別の仕組みで持つ必要がある。

同期とバックアップの違い

両者は似ているが、目的が逆である。同期は「どの端末でも同じ最新の状態にする」ための仕組みで、バックアップは「過去のある時点の状態に戻す」ための仕組みだ。同期は最新の変更をすぐ全体に反映するため、誤削除や暗号化も瞬時に広がる。バックアップは古い世代を残すから戻せる。

項目同期(OneDrive等の標準機能)バックアップ
目的複数端末で同じ状態を保つ過去の状態に戻す
削除の扱い他の場所でも削除される過去の世代に残る
暗号化被害暗号化後のファイルが同期される暗号化前の世代から戻せる
保存期間短い(ごみ箱の期間のみ等)設定で数か月〜数年
別アカウント管理通常は同じアカウント分離できる

ただし、Microsoft 365やGoogle Workspaceにも、ごみ箱やバージョン履歴といった復旧機能はある。これらは「ある程度の誤操作」には役立つが、長期保存や、アカウントごと侵害された場合には頼れない。この点は、後述のFAQでも触れる。

バックアップの基本ルール:3-2-1ルール

バックアップ設計の定番は3-2-1ルールである。数字の意味は次のとおり。

元データ、別の媒体に置くバックアップ、遠隔地に置くバックアップの3つを並べた3-2-1ルールの図。コピーは合計3つ・媒体は2種類・1つは遠隔地に置き、拡張版の3-2-1-1-0ではオフラインまたは変更不可のコピーを加え、復元テストでエラーをゼロにする。

- 3: データを3つ持つ(本番データ+バックアップ2つ)
- 2: 2種類以上の異なる媒体に分ける(例: NASとクラウド)
- 1: 1つは社外・別の場所に置く(火災や盗難、水害に備える)

近年は、ランサムウェア対策を加えた3-2-1-1-0という考え方も使われる。末尾の「1」は、オフライン(ネットワークから切り離した)またはイミュータブル(書き換え・削除ができない)な1つを持つこと。「0」は、復元テストでエラーが0であることを指す。攻撃者は、バックアップも狙って消そうとする。そのため、攻撃者が管理者権限を奪っても消せないコピーが、最後の砦になる。

構成例3-2-1を満たすか弱点
パソコン+外付けHDD1台(つなぎっぱなし)満たさない同じ場所・同じ被害
パソコン+NAS+外付けHDD(同じ事務所)2媒体だが社外なし火災・盗難に弱い
サーバー+NAS+クラウド満たすクラウドを同じ管理者アカウントで操作すると危険
サーバー+NAS+クラウド(不変設定)+オフラインHDD3-2-1-1を満たす運用の手間と費用が増える

何をバックアップすべきか

「全部」と言いたいところだが、費用と手間には限りがある。まず、止まると業務が止まるもの、失うと取り返せないものから洗い出す。

対象例注意点
ファイルサーバー・NAS見積書、契約書、図面、写真最優先。共有フォルダ単位で対象にする
会計・販売管理などのデータベース会計ソフト、販売管理、顧客管理ファイルをコピーするだけでは壊れた状態で保存される場合がある。ソフト標準のバックアップ機能を使う
Microsoft 365・Google Workspaceメール、OneDrive、SharePoint、Googleドライブサービス側にあるデータも自社の責任範囲。専用バックアップを検討
パソコンの個人フォルダデスクトップ、ドキュメント共有フォルダに置く運用に寄せるのが基本
業務システムのサーバー自社開発システム、社内Webアプリ仮想サーバーごとのバックアップ、データベースのダンプなど
設定情報ルーター、VPN、NASの設定、ライセンスキー復旧の際に意外と困る。台帳化して別保管

特に見落としやすいのが、設定情報とクラウド上のデータだ。ルーターの設定やソフトのライセンス情報は、機器が壊れて初めて「控えがない」と気づく。メールとクラウドストレージのデータも、「クラウドだから自動で守られている」と考えがちだが、守られているのはサービスが止まらないことであって、利用者の削除や乗っ取りによる消失ではない。

バックアップ方法の比較と費用の目安

主な方法を比較する。金額はいずれも市場価格に基づく目安で、容量や台数、契約先により大きく変わる。

方法初期費用月額費用強み弱み
外付けHDDのローテーション1〜3万円0円安い。オフラインにできる人が差し替えないと続かない。忘れる
NAS+USB接続HDD8〜25万円0円自動化しやすい。社内で速く戻せる同じ事務所内。火災・盗難に弱い
NAS→クラウド(遠隔バックアップ)10〜30万円3千〜3万円3-2-1を満たしやすい回線速度と容量課金。初回転送に時間
クラウドバックアップサービス(PC・サーバー)0〜10万円1〜10万円(台数・容量次第)運用を任せやすい。世代管理が標準費用が継続。サービス選定が必要
Microsoft 365・Workspace専用バックアップ0円1ユーザーあたり月数百円〜1,000円程度メールや共有ファイルを別に保管ユーザー数で課金が増える

NASそのものの価格や選び方はNASファイルサーバーの費用、クラウドへの複製やBCP全体の考え方はクラウドバックアップとDRが詳しい。クラウドストレージの料金はオンラインストレージの費用で比較できる。

会社の規模別の費用例

実際の構成と費用の目安を、社員数別に示す。ファイルの量を、5名で約500GB、20名で約2TB、50名で約5TBと仮定した例である。

規模構成の例初期費用月額費用
社員5名(約500GB)小型NAS(ミラーリング)+クラウドへ夜間複製+M365のバックアップ5〜15万円3千〜1万円
社員20名(約2TB)NAS(RAID)+クラウドバックアップ+オフラインHDD月次+M365のバックアップ20〜60万円1〜4万円
社員50名(約5TB)サーバー・NASのバックアップ専用機+クラウド(不変設定)+M365専用バックアップ+監視50〜150万円3〜10万円

一般に、クラウド側の費用は「容量×保存期間」で増える。世代を増やしすぎると費用がかさむので、次の項目で保存期間を決めておくとよい。

世代管理と保存期間の決め方(RPOとRTOをやさしく)

専門用語を2つだけ押さえる。RPO(目標復旧時点)は「どこまで古い状態に戻ってもよいか」で、毎日バックアップなら最大1日分のデータを失う。RTO(目標復旧時間)は「どれだけの時間で復旧したいか」だ。この2つを、業務ごとに社内で決める。

業務RPOの目安RTOの目安バックアップの頻度
受発注・会計データ1日以内半日〜1日毎日(業務時間外)
共有ファイル(見積・契約)1日以内1〜2日毎日
過去案件の資料・写真1週間数日週1回でよい場合も
メール1日以内半日毎日(専用バックアップ)

世代管理とは、バックアップを上書きせず、複数の時点を残すことだ。たとえば「毎日分を14日、毎週分を8週、毎月分を12か月」といった残し方をする。ランサムウェアは感染に気づくまで数日〜数週間かかる場合があるため、世代が少ないと、気づいた時には全世代が暗号化済みになってしまう。業務上の保存義務がある書類(会計帳簿は原則7年など)は、バックアップではなく、別途の保管ルールで管理する点も区別したい。

復元テストを年2回行う

バックアップは、戻せて初めて価値がある。実際には、バックアップが何か月も失敗し続けていた、パスワードが分からず開けない、戻すのに想定の3倍の時間がかかった、という話が多い。年2回(半期ごと)を目安に、復元テストを予定に入れる。

- 本番とは別の場所に、特定のフォルダ(10〜20ファイル)を復元して開けるか確認する
- 会計・販売管理は、復元したデータでソフトを起動できるか確認する
- 復元にかかった時間を記録し、RTOと比べる
- 復元に必要なパスワード・暗号鍵・手順書を、紙か別の場所に保管してあるか確認する
- 結果と日付を台帳に残す(失敗した場合は原因と対処も)

ランサムウェア対策としての要点

ランサムウェアは、ネットワーク内のバックアップを探して消すことがある。バックアップを守るための要点は3つに絞れる。

- オフライン: 外付けHDDやテープを、バックアップ時だけ接続する。取り外して保管すれば、感染しない
- 別アカウント・別権限: バックアップの管理アカウントを、日常業務の管理者と分ける。多要素認証を必ず有効にする。同じパスワードの使い回しは避ける
- 不変(イミュータブル)ストレージ: 保存期間中は、管理者でも消せない設定。クラウドストレージやバックアップ製品に「オブジェクトロック」「ランサムウェア保護」といった名前で備わっている

「NASを社内ネットワークのフォルダとして共有している」状態は、感染したパソコンから書き込めてしまうため危険だ。バックアップ用のNASは、バックアップソフト以外からは見えないようにするのが望ましい。

バックアップ運用で見落としやすい落とし穴

機器と契約をそろえても、運用で崩れることが多い。典型的なのは次の4つである。第一に、失敗の通知が誰にも届かないケース。バックアップソフトのエラーメールが退職者の宛先に送られ続けていた、という例は珍しくない。通知先は個人ではなく共有アドレスにし、担当者が替わった時の見直しを手順に入れる。第二に、容量が満杯になって止まるケース。データは年々増えるため、使用量が7割を超えたら増設か整理を検討する。第三に、パソコンの入れ替え時の抜け。新しいパソコンを対象に加え忘れ、古い端末だけがバックアップされ続けている。第四に、パスワードの管理者が一人だけというケース。その人が不在、退職すると復元できなくなる。バックアップを実際に動かす人と、手順書の置き場所は、必ず複数人が知っている状態にしておきたい。

外部に頼む場合の費用と確認項目

運用を外部に任せる場合、相場は構築費が10〜50万円、月額の運用・監視が1〜5万円程度(目安)である。契約前に次の項目を確認する。

- 何をバックアップ対象にするか、書面で一覧になっているか
- 保存期間と世代数、追加時の費用
- 復元の依頼から完了までの時間(RTOの保証の有無)
- 復元テストを定期的に実施し、結果を報告してくれるか
- バックアップデータの保管場所(国内か、事業者のデータセンターか)
- 解約時にデータを返してもらえるか、削除の証明は出るか
- 管理アカウントを自社も保有しているか(業者任せにならないか)
- 障害時の連絡手段と、休日夜間の対応

導入前のチェックリスト

- 守る対象を、ファイル・DB・メール・設定の4種類に分けて書き出した
- 業務ごとに、どこまで戻れば許されるか(RPO)を決めた
- 3-2-1ルールで、社外の1つが確保できている
- 少なくとも1つは、オフラインまたは不変のコピーがある
- バックアップの管理アカウントを、日常の管理者と分け、多要素認証をかけた
- 世代数と保存期間を決めた
- 自動実行になっており、失敗時に通知が届く
- 復元テストの日程(年2回)を予定に入れた
- 復元手順・パスワード・暗号鍵を紙などで別保管した
- 退職者・機器の入れ替えがあった時に、対象を見直す担当者を決めた

よくある質問

Microsoft 365やGoogle Workspaceにもバックアップは必要ですか?

必要になる場面が多い。サービス側は自社の設備故障には備えているが、利用者による誤削除、退職者のアカウント削除、アカウントの乗っ取り、ランサムウェアの同期といった被害まで、無期限に守ってくれるわけではない。標準の復元期間は限られる。メールや共有ファイルが業務の中心なら、月額数百円〜1,000円程度(目安)のユーザー単位の専用バックアップを検討する価値がある。

外付けHDDだけで十分ですか?

小さな会社の最低限としては有効だが、十分とは言えない。使い方次第で、オフラインにできる点は強みである。ただし、つなぎっぱなしでは感染や故障の影響を受け、同じ事務所に置いたままでは火災や盗難に弱い。2台を週ごとに交代させて1台は別の場所へ持ち出す、あるいはクラウドと併用する形にすると、3-2-1に近づく。

データは何年保存すればよいですか?

バックアップとしては、日次を2週間、週次を2か月、月次を1年程度という残し方が目安である。ただし、帳簿や契約書など法令や契約で保存期間が決まっている書類は、バックアップではなく文書管理の問題である。税務や労務の保存期間は、顧問の税理士や社労士に確認してほしい。

クラウドのバックアップは安全ですか?

適切に設定すれば、社内機器だけより安全性は高い。ただし、安全かどうかは設定次第である。管理アカウントの多要素認証、日常業務とは別のアカウント、不変(削除不可)設定、通信と保管の暗号化を確認する。容量が増えると月額が上がる点と、大量のデータを戻す際は回線速度で時間がかかる点にも注意する。

費用を抑えるには、どうすればよいですか?

まず、対象を絞ることが最も効く。業務に必須のデータと、古い資料を分け、古いものは低頻度・安価な保管先に回す。次に、世代数を必要以上に増やさない。機器は、5年程度使う前提で容量に余裕を持たせるが、買いすぎない。クラウドは、容量課金か台数課金か比較して選ぶ。そして、復元テストを省かない。安く済ませて戻せないのが、一番高くつく。

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